死亡フラグ乱立の極悪非道な国王になりました!

さつき

文字の大きさ
上 下
23 / 84

溺死

しおりを挟む
 シオンの治療を医者にさせてしまった僕は、頭を抱えていた。



 どうしよう。ヤバいング。

 シオンを助けてしまった。

 カルタヤ人嫌いで評判のあるギルが、カルタヤ人に手を差し伸べてしまったら不審に思われるに決まっている。

 すぐにレイヴンと蹴りをつけなければいけない。

 そのためにまずしなければいけないことは……。チラリとエンデュミオンを見る。最近のエンデュミオンは、護衛らしく鎧を身につけている。

「エンデュミオン、今すぐその鎧を脱げ」

「はいィ?」

 こいつが目をキョトンとさせるなんてレアだなと思いながらも、続ける。

「いいから、早くしろ。今すぐ鎧を脱いでおけ」

「どうしてですか」

「まあ、気にするな。とにかく僕のいった通りにしておけ」

 まさかギル様が××するつもりじゃ……などとぶつくさ呟く声が聞こえた気がしたが、聞こえなかったことにした。






 レイヴンとは、僕がシオンを助けたということを知られる前に決着をつける必要がある。

「Xに関して話がある」という名目で呼びつけ、人気のない場所につれてきた。

 2メートルほどの小さな崖の下には、大きな湖が見える。深さは、3メートルほどだ。

 太陽の光が差し込んでいる湖は、宝石を散りばめたようにキラキラと光り輝いていた。今から、ここで死人が二人でるかもしれないと怖くなる。

「ギル様、話とは何ですか」

 童貞眼鏡は、恐る恐る問いかけてきた。

「お前のことをもう首にすることにした」

 そう告げた途端、彼の顔から血の気がなくなった。

「どうして約束の時間を3日短縮させたのですか」

「どうせ、3日じゃ何もできない。役立たずの探偵にしびれを切らした」

「待ってください。あと、3日あるじゃないですか」

「黙れ!!エンデュミオン、こいつの手首と足首を縛り上げろ」

「……了解です」

 逃げようとしたレイヴンをあっという間に、エンデュミオンが捕まえた。そして、素早い動きでレイヴンを縛り上げた。

 縛り上げられても、レイヴンは僕の足にすがりついた。

「……っ。僕は、このまま謎を解かないまま死にたくありません。どうか、あと、一か月時間をください。そしたら、何かを掴めそうな気がするんです」

 かすれた声が僕の心を揺さぶる。その灰色の目には、全てをかけている証の情熱が宿っている。

 ああ、そうだ。このままだとお前は、何かを掴んでしまう。そうなると、僕は困るんだよ。

「お願いします。何でもします。ただこの謎を解くことに命をかけたいんです。もう一度、僕にチャンスをください」

 涙と鼻水でぐしゃぐしゃになりながら、必死に頼み込んでくる。

「残念だけど、時間切れだ」



 その言葉を聞いた彼の表情は、絶望に染まった。



「そんな……」

 灰色の瞳から希望と生気が抜けていく。

「僕には、役立たずの駒は必要ない。消えろ」

 サッカーでもするように縛られたレイヴンを蹴って、2メートルほどの高さのある崖から突き落とす。すぐに派手な水しぶきをあげて、崖の下の湖に落ちた。



 エンデュミオンは、湖を光のない瞳で見つめていた。そんな彼を怒鳴りつける。

「おい、エンデュミオン。何、突っ立っているんだ?早くレイヴンを助けろよ」

「ギル様が突き落としたのに助けるんですか」

 驚く彼をギロリと睨みつける。

「早くしろ」

「了解です」

 ザバーンと勢いよくエンデュミオンが飛び込んだ。

 それと同時に、僕は、しっかりとしてそうな木にロープをくくりつける。そのロープを湖に垂らす。

 頼むから二人とも無事でいてくれ。

 そんな祈りが通じたのか、「ぷはっ」という顔をあげる音と共に、レイヴンを手で支えているエンデュミオンの姿が見えた。

 問題は、ここからだ。

 両手両足が縛られたレイヴンを引き上げなければいけない。

「おい、エンデュミオン。そいつをロープに結び付けろ。引き上げるから」

 しかし、次の瞬間、ドスンと荷物のようにレイヴンが岸に投げられた。

 いや、確かにこの方が早いけれど……お前そんな力あったんだ。

 ……ていうか、僕がロープを結んだ意味とかなくない?お前なら、ロープなんてなくても自力であの辺の岸にあがれたよね。


 などと思いながらも、下の方へ降りていきレイヴンに近づき呼吸を確認する。

「ウう……。ゲホ、ゲホ……」

 せき込みながら、彼は水を吐きだした。これなら大丈夫だろう。

 急いで結んだロープをナイフで切り、楽な体勢にさせる。そして、脈拍も確認する。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません

月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない? ☆表紙絵 AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。

左遷先は、後宮でした。

猫宮乾
BL
 外面は真面目な文官だが、週末は――打つ・飲む・買うが好きだった俺は、ある日、ついうっかり裏金騒動に関わってしまい、表向きは移動……いいや、左遷……される事になった。死刑は回避されたから、まぁ良いか! お妃候補生活を頑張ります。※異世界後宮ものコメディです。(表紙イラストは朝陽天満様に描いて頂きました。本当に有難うございます!)

騎士が花嫁

Kyrie
BL
めでたい結婚式。 花婿は俺。 花嫁は敵国の騎士様。 どうなる、俺? * 他サイトにも掲載。

シャルルは死んだ

ふじの
BL
地方都市で理髪店を営むジルには、秘密がある。実はかつてはシャルルという名前で、傲慢な貴族だったのだ。しかし婚約者であった第二王子のファビアン殿下に嫌われていると知り、身を引いて王都を四年前に去っていた。そんなある日、店の買い出しで出かけた先でファビアン殿下と再会し──。

[完結]堕とされた亡国の皇子は剣を抱く

小葉石
BL
 今は亡きガザインバーグの名を継ぐ最後の亡国の皇子スロウルは実の父に幼き頃より冷遇されて育つ。  10歳を過ぎた辺りからは荒くれた男達が集まる討伐部隊に強引に入れられてしまう。  妖精姫との名高い母親の美貌を受け継ぎ、幼い頃は美少女と言われても遜色ないスロウルに容赦ない手が伸びて行く…  アクサードと出会い、思いが通じるまでを書いていきます。  ※亡国の皇子は華と剣を愛でる、 のサイドストーリーになりますが、この話だけでも楽しめるようにしますので良かったらお読みください。  際どいシーンは*をつけてます。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

[BL]王の独占、騎士の憂鬱

ざびえる
BL
ちょっとHな身分差ラブストーリー💕 騎士団長のオレオはイケメン君主が好きすぎて、日々悶々と身体をもてあましていた。そんなオレオは、自分の欲望が叶えられる場所があると聞いて… 王様サイド収録の完全版をKindleで販売してます。プロフィールのWebサイトから見れますので、興味がある方は是非ご覧になって下さい

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

処理中です...