死亡フラグ乱立の極悪非道な国王になりました！

死亡フラグ

　やってきた探偵レイヴンは、想像の斜め上に行くような奴だった。

「初めまして、レイヴン・ドロットです」

　ペコリと丁寧にお辞儀して来る。　

　こいつ、童貞だな。

　第一印象がそれで悪いが、それしか思いつかない。

　僕の直感が告げている。こいつは、絶対に童貞だと。そうだ。童貞の中の童貞に違いないと、数々の名推理をしてきた僕の第六感が念仏のように「こいつは童貞だこいつは童貞だこいつは童貞だ」と囁きまくっている。

　こいつがイケメンかもしれないとか言った奴、誰だよ。見るからに、がり勉がりおなんだがｗｗｗ。

　黒髪のマッシュルームカットに、瓶底眼鏡。瞳の色は、灰色という地味属性である。そして、眼鏡をクイッと上にあげるような仕草。そして、偶然なのか高校の学ランのような服を着ている。あまりにもテンプレすぎて、こいつを見ているだけで草が生えてきそうだ。あれだ、全国模試でトップになりそうな感じだ。絵が下手くそな僕でも、こいつの似顔絵なら書けるし、誰かに理解してもらえそうだ。

　ああ、くそ。敵の前でもっと緊張感とか警戒心を抱かないといけないのに……。

　ダメだ、親近感しかわかない。うっかり、相棒とか言って話しかけてしまったらどうしよう。

「ギル・ノイルラーだ。こんな若造が来るなんて舐められたものだな」

　これでも、実は天才少年だったりするのかよ。

「私は、３０歳です」

　ちょっとムッとしたように答えた。

　え……まじで。

　学ランを来た高校生にしか見えないんだが、そんなおじさんだったのか。

　童顔すぎるだろうがっ。でも、高年齢童貞とかかわいそうに。この世界には、風俗とかなかったのかな。

　実は、僕も童貞だったりする。女の子にモテたくて高学歴になったのに、童貞のまま死んだ。

　信じられるか？まあ、これには深いわけがある。

　中、高校生時代は、当然彼女なんてできなかった。容姿とコミュニケーション能力が全ての残酷社会であるからだ。

　そして、夢の大学デビュー！

　女の子にキャーキャー言われたくて、僕は海外へ行き、首席で天下一のＨ大学に合格した。しかし、主席になってしまった僕は、今まで挫折を知らなかった海外のおぼっちゃま方に苛められ、再び冴えない男のレッテルを張られた。

　そして、弁護士時代。周りの女の子は、全てレアンドロといういけ好かないイケメンエリート弁護士に奪われた。レアンドロは、僕が嫌いだからという大人げない理由だけで邪魔してきたのだ。ひどいだろう。

　そして、今のイケメンパラダイスにポツンと平凡な容姿で放り込まれたのである。そんな時に、レイヴンという同類を見つけた。うれしくてたまらない。

　って、そんなこと考えている場合じゃないか。

「そうか。もし、Ｘを見つけられなかったらどうなるかわかっているな」

　悪役らしく凄みのある顔を作る。

「はい」

　……こいつ、ためらいもせずに返事をしたぜ。超能力者を見つけるなんて、砂浜の中からとある砂粒を見つけるような途方もないことなのに。

「一つ、聞いていいですか」

　そう言った後に、レイヴンは眼鏡をクイッと上に持ち上げた。

「何だ？」

　お前もオタクでも、僕の大事な抱き枕だったら、お前にはやらんぞ。




「ギル・ノイルラー様。あなたは、Ｘなんじゃないですか」



　灰色の瞳が射抜くように僕を見ていた。