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ディナヴィア

因縁  スクルータ・モルス視点

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 スクルータは、エリュシオンと一緒に窓から落ちていった。

 エリュシオンは、身体をひねり近くの氷の屋根に難なく着地した。スクルータも、少しバランスを崩しながらそのすぐ近くに着地した。

 そして、エリュシオンが駆け出すと同時に、スクルータも走り出した。剣がぶつかると氷の屋根をツルツルと滑りながら押されていく。

「くっ」

 スクルータは何とか主導権を握ろうと何回か打ち込むが、あっさりと交わされてしまう。

 確かにこいつは、強い。天から祝福されたように、才能があるのだろう。

 だけど、僕には取っておきの剣がある。

 魔剣『夜光』。使用した者の寿命を吸い取る代わりに、実力以上の力を示す呪われた剣だ。
大剣士ヨルムン・ハーバードから剣を奪い取って、毒殺して手に入れた。彼は、かつてセレネーの父と共に戦い将軍の名前を与えられた人間であったが、アスクレピオス家の劣勢を知り反旗を翻した裏切り者だ。

 この魔剣さえあれば、きっとリジルに勝てるっ!!!どんな人間でも殺すことができるだろう。

「殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!原形なんて残らないほどバラバラにぶっ殺してやる!!!」

 魔剣に全てを委ねて、マグネットのように操られるまま剣を振るい続ける。

「殺す、殺す、殺す、殺す、殺す!!!!!ひゃはははははははは。ぶっ殺しやる!!!!!死ね、死ね、死ね、死ね、死ね!!!!!!」

 魔剣の激しいスピードと威力にエリュシオンは、押され始めた。

「リジル家、リジル家、リジル家!!!!!お前らのせいだ。お前らのせいで人生が壊されたんだ。全部、お前らのせいだ!!!お前らが俺の家を壊したんだ!!お前らさえいなければどれほどよかっただろうか!!!どれほどまとまな人生を送ることができただろうか!!!」

「俺は……リジル家なんて関係ない……」

 苦しそうにうめくように彼は、そう答えた。

「何言っている?お前のその容姿や剣術こそがリジル家の証だろう」

「……」

「僕がお前らのせいでどんな生活を送ったか想像できるか。きっと、ほんの少しも想像なんてできないだろう。お前にミミズの味がわかるか?お前に泥水の苦さがわかるか?お前に飢え死にしそうな苦しさがわかるか?どうせお前にはありとあらゆる苦しみなんてわからないだろう」

 こんな感情、所詮八つ当たりかもしれない。だけど、八つ当たりでもしないとやっていられない。何かを恨まないと、自分の人生の意味がわからなくなりそうだ。

「リジル家のクソがああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」

 夜光にありったけの魔力と生命力を注ぎ込む。

 すると更に動きが速くなっていく。きっと、もう人間が追いつける速度じゃない。こんな剣技勝てないだろう。そう思うのにエリュシオンは、互角、いやそれ以上に打ち合い続ける。

「くっ」

 なんで。
 なんで、なんで、なんで。
 こいつ、どんだけ強いんだよ。おかしい。おかしすぎる。人間業には見えない。

「死ぬのはお前だ」

 彼は、激しい打ち合いの隙をみて、剣を滑らかに滑らせた。

「あがっ」

 気がついたら、心臓を刺されていた。

「エリュシオン・リジル!!」

 恨みと憎しみを込めて名前を呼ぶ。

 ああ。かつてシオン・リジルに見つかった父もこんな気持ちだったのかもしれない。

 胸を抑えた途端に、夜光から木の枝みたいに何かが伸びてきて、心臓まで到達した。


「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」


 剣を握っている左腕が燃えるように熱い。まるで火傷するみたいだ。
 力尽きた俺から生命力を吸い取ろうとするように、紫色の光り輝き、吸収していく。

「ぐはああああああああああああああああああああああああ」

 苦しい。
 苦しくてたまらない。自分の全てを奪い取られていくのを感じる。

 ああ。

 僕は、死ぬんだ……。
 父親と同じように、リジル家に殺されて死ぬ。
 くそっ。くそっ。くそ、くそ、くそ。
 ああ、本当にくそみたいな人生だった。
 走馬灯みたいに過去が思い浮かぶ。

 シャボン玉みたいに記憶の中で揺れて、はじけ消えていく。
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