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悪役転生
命綱のないバンジージャンプ
しおりを挟むパチパチと音を立てながら、荒れ狂った炎が迫ってくる。火花が顔のあたりにまで飛んできた。
「いや、そんなつもりじゃ……」
どうしよう。
どうしよう。
そう焦っていると、エリュシオンは先ほど僕が渡した金の竜が柄となっている白剣を抜いた。
「仕方ないですね」
エリュシオンが軽く壁に向かって剣を振るうと、壁が壊れて人が通れそうなくらいの道ができた!!何て威力だ!すごい。すごすぎる!さすが、シオンの息子だ。
しかし、隣の部屋にも死鬼が2匹いる。こちらに気がついた死鬼が、やってこようとする。片方しか残っていない目をらんらんと輝かせながら、我先にとこっちに迫ってくる。
「ガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!」
「グルルルルルルルルルルルルルルルル」
「ちっ」
舌打ちしたエリュシオンが、忌々しそうに死鬼の首をスッと流れるように華麗に切り捨てた。
「これじゃあ、きりがないですね。早く下りましょう」
「ここって何階だっけ?」
「7階です」
あああああああああああああああああああああああああああああああ!!高いってことはわかっていたけれど、そんなに高いとは!!どうすればいいんだ。
「どうやら飛び降りた方が早そうですね」
「え!?」
こいつ……冗談のつもりで言ったんだよな。そうだよな。7階から落ちたら死ぬよな。
しかし、彼が剣をしまって、バルコニーの方へスタスタと歩いていくから、ついていくしかない。
エリュシオンは、押し入れにあったロープをバルコニーの手すりに巻きつけるが、どう見てもロープの長さは足りていない。
「これでよし」
「え?ちょっと待って」
命がけのバンジージャンプってこういうこと?え?どう見ても長さ足りていないよね。おかしいよね。え?え?え?頭がパニックで真っ白になりそうだった。
「それじゃあ、舌をかまないでくださいね」
エリュシオンは左手で僕の腰をがっしりと掴むと、右手でロープを握りながら飛び降りた。
「死ぬうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!!!!!!!!!」
ひゅんひゅんと風を切る音が耳元で聞こえる。
恐ろしいスピードで落下していく。
あああああああああああああああああああああああああああああああ。神様、アリア様助けてください。あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば。
走馬灯のように、ナサニェルとの思い出が脳裏によぎる。
ナサニェル……。本当にかわいかったな……。
心が灰のように燃え尽きかけた時、ようやく落下は止まった。
エリュシオンが、片方の腕でロープを握っているため、プラプラと漂う不安定な状態であるが……。
「はあ、はあ、はあ……。よかった。生きている」
ああ……。今日も空が青いな……。
はあ……。命って尊いものだな……。
死ぬかと思った……。
「どうやらロープの長さがだいぶ足りないみたいですね」
そう呟いたエリュシオンは、ロープを持っていた右手をパッと離した。
「ひぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
そして、再び地面目がけて落下していく。
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