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2話
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拓磨は教室に戻るとすでに授業は始まっていた。
「すみません、迷ってしまって。」
「ああ、そうかまあ座れ」
そう言われると拓磨は自分の席についた。
「ねえ、迷ったって嘘だよね?」
ニコニコしながら天王寺秀哉は聞いてくる。
「どうして?」
「理由はないけどなんとなく僕そういうのわかるんだ。」
「はっ、それは超能力かなんかか?」
「そうかもしれないなぁ」
笑いながら秀哉はこたえた。
「津賀が帰ってきたからさっき話していた内容をもう一回説明するぞ。まあさっきも言った通り今年からこの学校はグループ教育に本腰をいれることになった。で、まずそのはじめとしてグループ教育をはじめたと言うことをきちんと世間に知らしめるために各々のグループで課題を設定しそれについて発表してもらう発表会をひらくことになった。仲いいヤツらで固まられてまグループ教育とはならないからグループは出席番号にさせてもらう。」
えーっという声が所々からあがった。
「1グループ4人で行ってもらう。ちなみに発表夏休みの後あたりになるから。じゃあ今からいう奴らで集まって机組め。1班が相見、足羽、安達、伊藤、2班が...」
担任が次々と名前を呼び上げる。
「多田、次、6班、津賀、天堂寺、七倉、西崎、次7班...」
各々が班になるように移動する。
「拓磨これやばいかも」
天堂寺が拓磨にしか聞こえない声で言った。
「どうしてだ?」
「去年から西崎凛は一匹狼で人と関わることを良しとしないんだ。班活動はできるかさだかじゃない。」
その瞬間、聞こえてないはずなのに西崎凛は秀哉を睨みつけた。
「あ、あと七倉恵里香も人と接さないんだ」
「そんなことはないだろ。」
「いや、ほんとに誰とも喋ってるとこ見たことないんだって。」
「だそうだけどどう七倉?」
急に話をふられた。
「え?あ~うん私津賀くん以外と学校で話したことないかも。」
秀哉二人の姿をみて心底驚いた様子だった。
「え?え?え?なに?2人は知り合いなの?」
その慌てふためく姿が面白かったので私達は二人して笑った。
「ひみつ」
と、恵里香は悪戯そうに言った。
「なんで、僕そういうの凄い気になるんだよ。もう仲間なんだし話してくれよ。」
「話したこともないのにもう仲間って天堂寺くんかわってるね。」
「仲間で正解でしょ。だってグループって仲間って意味もあるし。あ、それと天堂寺って堅苦しいでしょ。気軽に名前で呼んでよ。」
「秀哉..くん?」
「あーそうそう、てかこの仲間の中ではみんな名前で呼び合うことにしよう。」
「俺はいいと思うぞ」
笑いながら拓磨はその考えに賛成した。
「七倉さんはどう?」
「うん、私もいいとおもうよ」
「よし。のこりに聞くまでもなく過半数で名前で呼ぶこと決定。いぇー」
わざと盛り上がるような仕草を見せた。
「仲間って言っといてのこりってひどくない?」
西崎凛が秀哉を貫かんばかりの眼光で凝視する。
「じゃあどう思う僕のアイデア?」
おそるおそるという感じにきいた。
「まあ、別に反対ではないんだけど」
凛は顔をふいっとそらしながらいった。
「よしじゃあ改めてよろしく、拓磨、恵里香、凛。」
「ああ、よろしく」
「よろしくおねがいします。」
凛を除くふたりが答えた。
「じゃあ話し合いを始めようか。なにか発表したいことのアイデアある人いる?」
...沈黙は誰にも意見がないということを顕著に物語っていた。
「どうしよう、何も無いなら進められないよ」
秀哉がわざとらしくおどおどしていった。
「じゃあ秀哉がまずあんだせよ。」
「ん、んー、そうだね。」
秀哉はしばらく考えこでいた。
「あ!思いついた凛から順に時計回りで案を出していくって案はどう?」
「あ?」
狂気に満ちた目で凛は秀哉を睨みつける。
「おねがい、頼むよ。」
秀哉は手を自分の前であわせ凛をみた。
「はぁ、まあいいんだけど」
しばらく凛は考え込んだ。それから長い長い沈黙が続いた。秀哉は考えている凛話しかけて殺されるのが怖くてなにか言えないようだ。
どうしよう。凛ちゃんこまってるよね。私がなにか案を出して助けてあげなきゃ多分みんな殺されるの怖くて声かけれないから。なにか発案しよう。どうしようどうしよう。発表しやすいもの∩誰にでも好かれそうなものがいいよね。発表は夏休み後か。夏休みのうちにできること、どうせなら夏特有のこと...あっそうか
恵里香の思想がまとまったと同時に凛も口をひらく
「星が見たい。」
二人の言葉は完全に重なった。
「あっ、ごめん」
恵里香は反射的に謝る。
「別にいいよ」
「恵里香、どうしたの?凛の手番だったのに。星を見るかうーんまとめるのが難しそうだね。拓磨どう思う?」
「俺はいいと思うぞ。これで過半数だな、残りの意見は聞かずとも可決だ。」
皮肉をまぜて拓磨は笑いながら言った。
「仲間って言っといてのこりってひどくない?」
秀哉がわざとらしく声をワントーンあげて言った、それと同時に死を悟ったかのような顔をした。凛が睨みつけるでもなく感情の一切ないような笑顔で首を少し傾げ秀哉を見ていたからだ。
「なーんてね、いやー僕も星を見たいなと思ってたんだよね。さぁ、じゃあどういう風に星を見たことまとめるか話し合おう。」
凛のから逃れるように秀哉は急いで話をした。
「望遠鏡どうするかとか日時設定どうするかとか考えないといけない。今日はもうあと少ししか時間がないからとりあえず明日土曜だから誰かの家に集まって話をしよう。はい、集まれる家挙手。」
誰も挙げなかった。
「おーけ。じゃ拓磨の家ってことで。」
「何でだよ。」
間髪入れず拓磨はつっこんだ。
「まあ女子の家に行くのは違う気がするし、うちは無理だから最初から拓磨のいえにするよていだったからね」
はあぁ、とわざとらしく大きなため息をつく。
「まあ別にいいけどな。」
「よしっじゃあ決まりってことで。週末みんな忘れずにね。」
「てか、俺の家知らねーだろ」
「あっほんとだ説明してよ」
「あーあの商店街あるだろ...」
拓磨が説明し終えると間もなく授業が終わる鐘がなった。
みんな席を戻し今日の学校はそれで終わりだったのでカバンを持ってかえった。
恵里香はカバンの整理をしながら窓の外を見る。
今日は色々とあったなあ。高校に入ってから全くに人と話してこなかったのに、今日1日で拓磨くんや秀哉君や凛ちゃんと話せた。今日はとても充実した日だった。でも、でもなんで。むしろ虚しく悲しく感じる。外の景色を見ると感じてしまう。私はあの3人と決して仲良くなれないとこの景色が言っているきがする。無色の世界に住む私、カラフルな世界に住む3人。人と関わらないと自分だけの世界に生きていられるような気がして無色の世界も苦ではあったけどそこまで大ダメージにはならなかったのに...人と接すると色の話にならなくてもなんとなく感じさせられる。根本的に住んでいる世界が違う。私は仲良くなりたい、でも叶わない、悲しい、くるしい。あ...
無色の世界を眺めていた恵里香の脳裏に拓磨の覚悟に満ちた目がよみがえる。
ああ、拓磨くんのあの目綺麗だったなあ。若しかしたら本当に私の色を取り戻してくれるのかも。信じたいだけかもしれないけど、今はそれを信じよう。そうじゃないと私とあの3人、一生交われない平行線を進んでいく。そんなことを思いながら過ごしていかなきゃいけない。それはつらい、それなら拓磨くんを信じてみよう。いつか色が見えて世界を共有できる日まで。
恵里香が教室内に意識を戻すともう教室には誰もいなかった。カバンを背負い教室を後にした。廊下を歩き階段を降り玄関に向かった。そこには凛がいた。恵里香は凛を視界端でとらえつつ、通り過ぎた。
「恵里香」
後ろから呼ばれビクッとなった。
「なに?」
「さっきのグループ活動の時なんだけど私の声に被さって星が見たいって言った時あったよね」
「ご、ごめん。あの時、凛ちゃんの話す番だったのに余計なことしちゃったよね。」
「違う、そうじゃない」
力強い否定だった。
「私はただお礼がしたいだけ」
「お礼?」
「あの時、恵里香は私が困ってるのみて助けようとして発言したんだよね。なんとなく分かったよ。私少し尖ってるから高校入ってから一匹狼だなんて呼ばれて誰にも助けられたこととかなくてなんかそんな小さなことだけどきちんとお礼言った方がいいのかなって思って。で、え、え...まあとにかくありがとう。」
凛はグループ活動では全く見せなかったような笑顔をみせた。
「そんなこたいしたことしてないよ。それに凛ちゃん結局考えれてたし...」
「ううん、そういう事じゃないの助けてくれようとしたってことが嬉しかった。ただそれだけ。じゃあね」
「え?それだけ言うためにこんな時間までのこってくれてたの?」
凛は急に顔を赤らめた。
「い、いいじゃん。感謝は大切だと思ったの。」
「いや、それだけ言うために残ってくれたなんて凛ちゃんとても律儀で優しい人なんだなって思って。」
「ばっかじゃないそれ勘違いだよ」
あわてふためいていった。
凛の顔は熟した果実のように真っ赤になっていた。凛は駆け足で恵里香を抜き去り先に学校をでた。凛はみをひるがえしそしてちょっと頬を膨らましムスッとした顔で言った。
「それと凛ちゃんってのなしね、凛って呼んで。」
「わ、わかった。凛」
凛はとても嬉しそうな顔をした。
「ありがと、私なんとなく思うんだ。高校入ってから誰とも仲良くなれなかったけど恵里香ならなんとなく仲良くなれそうだって。」
凛は花を咲かせたような笑顔で言った。
誰とも仲良くなれなかったけど仲良くなれる気がする...か。私と凛は住む世界が違うでも、私も凛と仲良くなりたい、この思いだけは世界が違えど同じだって言いきれる。
恵里香は心で強くそう思い、凛を再度みた。凛は頬を赤くしながら恵里香をみていた。
にしても凛はかわいいな。教室とは全然違う真っ赤にそまった顔表情豊かで...
えっ?
恵里香は反射的に袖で目をこする。
そこにはいつも通り無色の世界があった。
何だったんだろう、いま、一瞬だけだったけど色が見えた気がする。
「どうしたの?」
凛が少し不思議がって恵里香にきいてきた。
「いや、なんでもないの。」
「そう、じゃあ私帰るから。じゃあ」
「うん、バイバイ、」
恵里香は凛の背中を見ながら1人になった玄関で自分の足を見ながら考えた。
なんでさっき一瞬色がみえたの、見間違え?いや、それはないって断言出来る。頬を赤らめた凛の表情が一瞬だけ確かに見えた気。
結局なぜかは分からなかった。だか、恵里香の顔は満足そうで目線を上にあげ玄関を出て帰りはじめた。
なぜかはわからない、わからないけど色が見えた。多分凛によって引き起こされたんだけど拓磨くんの効果もあったのかなかな?ははっ、一生かかってでも色を取り戻すのを手伝うっていわれて、一日目で少しだけ色が見えた。奇跡ってあるものなんだなあ。
恵里香は辺りを紅にそめる夕日にむかって歩いていく。
綺麗な夕日だなあ。いつも通り色は見えないけど、いつもよりもすごく凄く綺麗に感じる。さっきみたいに色が見えたらきっとさらに綺麗に見えるんだろうな。いつもなら色が見えた世界を考えると悲しくなる、でも、今は色を見せてくれるって言った人や一瞬色を見させてくれた人のおかげでむしろ楽しみでしょうがない。早く色が見えるようになりたいな。
希望に包まれながら恵里香はルンルンと帰り道を歩いていった。
「すみません、迷ってしまって。」
「ああ、そうかまあ座れ」
そう言われると拓磨は自分の席についた。
「ねえ、迷ったって嘘だよね?」
ニコニコしながら天王寺秀哉は聞いてくる。
「どうして?」
「理由はないけどなんとなく僕そういうのわかるんだ。」
「はっ、それは超能力かなんかか?」
「そうかもしれないなぁ」
笑いながら秀哉はこたえた。
「津賀が帰ってきたからさっき話していた内容をもう一回説明するぞ。まあさっきも言った通り今年からこの学校はグループ教育に本腰をいれることになった。で、まずそのはじめとしてグループ教育をはじめたと言うことをきちんと世間に知らしめるために各々のグループで課題を設定しそれについて発表してもらう発表会をひらくことになった。仲いいヤツらで固まられてまグループ教育とはならないからグループは出席番号にさせてもらう。」
えーっという声が所々からあがった。
「1グループ4人で行ってもらう。ちなみに発表夏休みの後あたりになるから。じゃあ今からいう奴らで集まって机組め。1班が相見、足羽、安達、伊藤、2班が...」
担任が次々と名前を呼び上げる。
「多田、次、6班、津賀、天堂寺、七倉、西崎、次7班...」
各々が班になるように移動する。
「拓磨これやばいかも」
天堂寺が拓磨にしか聞こえない声で言った。
「どうしてだ?」
「去年から西崎凛は一匹狼で人と関わることを良しとしないんだ。班活動はできるかさだかじゃない。」
その瞬間、聞こえてないはずなのに西崎凛は秀哉を睨みつけた。
「あ、あと七倉恵里香も人と接さないんだ」
「そんなことはないだろ。」
「いや、ほんとに誰とも喋ってるとこ見たことないんだって。」
「だそうだけどどう七倉?」
急に話をふられた。
「え?あ~うん私津賀くん以外と学校で話したことないかも。」
秀哉二人の姿をみて心底驚いた様子だった。
「え?え?え?なに?2人は知り合いなの?」
その慌てふためく姿が面白かったので私達は二人して笑った。
「ひみつ」
と、恵里香は悪戯そうに言った。
「なんで、僕そういうの凄い気になるんだよ。もう仲間なんだし話してくれよ。」
「話したこともないのにもう仲間って天堂寺くんかわってるね。」
「仲間で正解でしょ。だってグループって仲間って意味もあるし。あ、それと天堂寺って堅苦しいでしょ。気軽に名前で呼んでよ。」
「秀哉..くん?」
「あーそうそう、てかこの仲間の中ではみんな名前で呼び合うことにしよう。」
「俺はいいと思うぞ」
笑いながら拓磨はその考えに賛成した。
「七倉さんはどう?」
「うん、私もいいとおもうよ」
「よし。のこりに聞くまでもなく過半数で名前で呼ぶこと決定。いぇー」
わざと盛り上がるような仕草を見せた。
「仲間って言っといてのこりってひどくない?」
西崎凛が秀哉を貫かんばかりの眼光で凝視する。
「じゃあどう思う僕のアイデア?」
おそるおそるという感じにきいた。
「まあ、別に反対ではないんだけど」
凛は顔をふいっとそらしながらいった。
「よしじゃあ改めてよろしく、拓磨、恵里香、凛。」
「ああ、よろしく」
「よろしくおねがいします。」
凛を除くふたりが答えた。
「じゃあ話し合いを始めようか。なにか発表したいことのアイデアある人いる?」
...沈黙は誰にも意見がないということを顕著に物語っていた。
「どうしよう、何も無いなら進められないよ」
秀哉がわざとらしくおどおどしていった。
「じゃあ秀哉がまずあんだせよ。」
「ん、んー、そうだね。」
秀哉はしばらく考えこでいた。
「あ!思いついた凛から順に時計回りで案を出していくって案はどう?」
「あ?」
狂気に満ちた目で凛は秀哉を睨みつける。
「おねがい、頼むよ。」
秀哉は手を自分の前であわせ凛をみた。
「はぁ、まあいいんだけど」
しばらく凛は考え込んだ。それから長い長い沈黙が続いた。秀哉は考えている凛話しかけて殺されるのが怖くてなにか言えないようだ。
どうしよう。凛ちゃんこまってるよね。私がなにか案を出して助けてあげなきゃ多分みんな殺されるの怖くて声かけれないから。なにか発案しよう。どうしようどうしよう。発表しやすいもの∩誰にでも好かれそうなものがいいよね。発表は夏休み後か。夏休みのうちにできること、どうせなら夏特有のこと...あっそうか
恵里香の思想がまとまったと同時に凛も口をひらく
「星が見たい。」
二人の言葉は完全に重なった。
「あっ、ごめん」
恵里香は反射的に謝る。
「別にいいよ」
「恵里香、どうしたの?凛の手番だったのに。星を見るかうーんまとめるのが難しそうだね。拓磨どう思う?」
「俺はいいと思うぞ。これで過半数だな、残りの意見は聞かずとも可決だ。」
皮肉をまぜて拓磨は笑いながら言った。
「仲間って言っといてのこりってひどくない?」
秀哉がわざとらしく声をワントーンあげて言った、それと同時に死を悟ったかのような顔をした。凛が睨みつけるでもなく感情の一切ないような笑顔で首を少し傾げ秀哉を見ていたからだ。
「なーんてね、いやー僕も星を見たいなと思ってたんだよね。さぁ、じゃあどういう風に星を見たことまとめるか話し合おう。」
凛のから逃れるように秀哉は急いで話をした。
「望遠鏡どうするかとか日時設定どうするかとか考えないといけない。今日はもうあと少ししか時間がないからとりあえず明日土曜だから誰かの家に集まって話をしよう。はい、集まれる家挙手。」
誰も挙げなかった。
「おーけ。じゃ拓磨の家ってことで。」
「何でだよ。」
間髪入れず拓磨はつっこんだ。
「まあ女子の家に行くのは違う気がするし、うちは無理だから最初から拓磨のいえにするよていだったからね」
はあぁ、とわざとらしく大きなため息をつく。
「まあ別にいいけどな。」
「よしっじゃあ決まりってことで。週末みんな忘れずにね。」
「てか、俺の家知らねーだろ」
「あっほんとだ説明してよ」
「あーあの商店街あるだろ...」
拓磨が説明し終えると間もなく授業が終わる鐘がなった。
みんな席を戻し今日の学校はそれで終わりだったのでカバンを持ってかえった。
恵里香はカバンの整理をしながら窓の外を見る。
今日は色々とあったなあ。高校に入ってから全くに人と話してこなかったのに、今日1日で拓磨くんや秀哉君や凛ちゃんと話せた。今日はとても充実した日だった。でも、でもなんで。むしろ虚しく悲しく感じる。外の景色を見ると感じてしまう。私はあの3人と決して仲良くなれないとこの景色が言っているきがする。無色の世界に住む私、カラフルな世界に住む3人。人と関わらないと自分だけの世界に生きていられるような気がして無色の世界も苦ではあったけどそこまで大ダメージにはならなかったのに...人と接すると色の話にならなくてもなんとなく感じさせられる。根本的に住んでいる世界が違う。私は仲良くなりたい、でも叶わない、悲しい、くるしい。あ...
無色の世界を眺めていた恵里香の脳裏に拓磨の覚悟に満ちた目がよみがえる。
ああ、拓磨くんのあの目綺麗だったなあ。若しかしたら本当に私の色を取り戻してくれるのかも。信じたいだけかもしれないけど、今はそれを信じよう。そうじゃないと私とあの3人、一生交われない平行線を進んでいく。そんなことを思いながら過ごしていかなきゃいけない。それはつらい、それなら拓磨くんを信じてみよう。いつか色が見えて世界を共有できる日まで。
恵里香が教室内に意識を戻すともう教室には誰もいなかった。カバンを背負い教室を後にした。廊下を歩き階段を降り玄関に向かった。そこには凛がいた。恵里香は凛を視界端でとらえつつ、通り過ぎた。
「恵里香」
後ろから呼ばれビクッとなった。
「なに?」
「さっきのグループ活動の時なんだけど私の声に被さって星が見たいって言った時あったよね」
「ご、ごめん。あの時、凛ちゃんの話す番だったのに余計なことしちゃったよね。」
「違う、そうじゃない」
力強い否定だった。
「私はただお礼がしたいだけ」
「お礼?」
「あの時、恵里香は私が困ってるのみて助けようとして発言したんだよね。なんとなく分かったよ。私少し尖ってるから高校入ってから一匹狼だなんて呼ばれて誰にも助けられたこととかなくてなんかそんな小さなことだけどきちんとお礼言った方がいいのかなって思って。で、え、え...まあとにかくありがとう。」
凛はグループ活動では全く見せなかったような笑顔をみせた。
「そんなこたいしたことしてないよ。それに凛ちゃん結局考えれてたし...」
「ううん、そういう事じゃないの助けてくれようとしたってことが嬉しかった。ただそれだけ。じゃあね」
「え?それだけ言うためにこんな時間までのこってくれてたの?」
凛は急に顔を赤らめた。
「い、いいじゃん。感謝は大切だと思ったの。」
「いや、それだけ言うために残ってくれたなんて凛ちゃんとても律儀で優しい人なんだなって思って。」
「ばっかじゃないそれ勘違いだよ」
あわてふためいていった。
凛の顔は熟した果実のように真っ赤になっていた。凛は駆け足で恵里香を抜き去り先に学校をでた。凛はみをひるがえしそしてちょっと頬を膨らましムスッとした顔で言った。
「それと凛ちゃんってのなしね、凛って呼んで。」
「わ、わかった。凛」
凛はとても嬉しそうな顔をした。
「ありがと、私なんとなく思うんだ。高校入ってから誰とも仲良くなれなかったけど恵里香ならなんとなく仲良くなれそうだって。」
凛は花を咲かせたような笑顔で言った。
誰とも仲良くなれなかったけど仲良くなれる気がする...か。私と凛は住む世界が違うでも、私も凛と仲良くなりたい、この思いだけは世界が違えど同じだって言いきれる。
恵里香は心で強くそう思い、凛を再度みた。凛は頬を赤くしながら恵里香をみていた。
にしても凛はかわいいな。教室とは全然違う真っ赤にそまった顔表情豊かで...
えっ?
恵里香は反射的に袖で目をこする。
そこにはいつも通り無色の世界があった。
何だったんだろう、いま、一瞬だけだったけど色が見えた気がする。
「どうしたの?」
凛が少し不思議がって恵里香にきいてきた。
「いや、なんでもないの。」
「そう、じゃあ私帰るから。じゃあ」
「うん、バイバイ、」
恵里香は凛の背中を見ながら1人になった玄関で自分の足を見ながら考えた。
なんでさっき一瞬色がみえたの、見間違え?いや、それはないって断言出来る。頬を赤らめた凛の表情が一瞬だけ確かに見えた気。
結局なぜかは分からなかった。だか、恵里香の顔は満足そうで目線を上にあげ玄関を出て帰りはじめた。
なぜかはわからない、わからないけど色が見えた。多分凛によって引き起こされたんだけど拓磨くんの効果もあったのかなかな?ははっ、一生かかってでも色を取り戻すのを手伝うっていわれて、一日目で少しだけ色が見えた。奇跡ってあるものなんだなあ。
恵里香は辺りを紅にそめる夕日にむかって歩いていく。
綺麗な夕日だなあ。いつも通り色は見えないけど、いつもよりもすごく凄く綺麗に感じる。さっきみたいに色が見えたらきっとさらに綺麗に見えるんだろうな。いつもなら色が見えた世界を考えると悲しくなる、でも、今は色を見せてくれるって言った人や一瞬色を見させてくれた人のおかげでむしろ楽しみでしょうがない。早く色が見えるようになりたいな。
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