白山

vol.1 11月

26日

今日は見たことがない花を見つけた。
私は父が植物学者だったので、植物にはかなり自信があったのだが、これでも知らぬ花があるのか、と驚いた。しかし、父に電報を送ってみても、そのような植物は知らないと言われる。図鑑や文献を見て、さらには所属している研究所にも聞いてみたそうだが、やはりそのような植物はこの地には生えていないと言われた。
　噂で聞いた程度の話ではあるのだが、今は小難しい技術が進んでるらしい。ここら田舎では考えられないような、革新的な技術があるんだと。郵便配達のやつから聞いた。いわく、大陸の方じゃ遺伝子の中に毒素を埋め込み、空気中や地面を汚し敵国で病気を流行らせたり作物を取れなくできるという。まぁ、その花が本当にそういうものかはわからないがな。父にその花を送って欲しいと言われたので、なるべく密閉して容器に詰め、郵便配達のやつに渡した。
「危ないやつかもしれんから、しっかり運んでくれ、頼んだぞ」
「もちろんですよ、ニッシュさん。」
「君は仕事が早いから助かる。父さんによろしく言っといてくれよ」
なんて話ながら、そんな話を聞いたのだ。
まぁ、父の研究所は私立であるから、研究はかなり早い。国立であれば国からの頼みが多くて個人の依頼は後回しにされがちだ。それは警察も例外ではないのだがな。
11/26 23:57 敬具 副団長 ニッシュ・リシック。