白山

〽︎巳鷹田・葛峯

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vol.1 11月

21日

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馬車で行けるところまで来た。
団員はここにいてもらう、頑張って仕事を果たそう。なるべく、費用は抑えるようにして、依頼料が少なくなるように。
私たちは自警団だ。税金なんて使えない。もともと、戦地への郵送は警察の仕事だが、その警察は今やほとんど機能していないのだ。
だから、私達に頼みにきたのだ。この仕事は、必ず果たさないといけない…。
戦場は暗かった。明け方だった。大切なものは全て置いてきた ̄ ̄懐中時計と例の手紙をのぞいて。その方が、仕事はしやすい。
獣の亡き骸は、冷たく、柔らかだった。毛に覆われているので、うじはあまり沸かないと思っていたが、どうやら違うのがわかった。
腹部や肉球の毛が薄い部分からうじが湧いて行き、だんだんと呑まれていくのだろう。
もし、死んだら、自分もああなるのか。そんな疑問が走る。足に力がみなぎった。
遺体には、手を合わせておいた。草が残っていた。軍人風貌のやつらが並んでいる。
「なんの列だ」
と思ったが、聞いている暇はなかった。
クロスタイと上着の間に挟んだ首かけの懐中時計のチェーンが、首の毛に埋もれている。
時間を見た。
大丈夫だ、まだ時間はある。
走る、走る、走る。
土はふわふわしていた。
隊舎の中につき、私は声を上げた。
「アントロニカの者です。失礼します」
「誰だ、お前は」
「申し遅れました。ニッシュです。ニッシュ・リシックです。どうか、この度の無礼はお許しください」
「要件はなんだ?」
おそらく作戦隊長だろう。
「名簿をくださりませんか」
「渡すものか、手短に言え。」
「はい。作戦隊員に、この手紙をお渡しください。名前は、この封筒に書いてありますから」
「いい、帰れ、時間がねぇんだ」
そういって封筒は乱暴に奪われた。
「では、失礼致します。心から幸運を祈っております」
私は帰路についた。木に囲まれ、その木の枝の先は赤く燃えている。開戦時刻より、まだ早かった。危ないな、早く帰ろうと思った。腕を高く振り上げるとともに、陽も上がっていくような気がした。
依頼主に聞いた住所の通りに彼の家に行き、ベルを鳴らした。
「依頼は果たしました。料金は2500ガルです。」
彼はひどく喜んでいた。嬉しそうな彼を見ていると、こちらも嬉しくなった。団員にはスコイで電報を送っておいたし、きっともうくるだろう。

馬車が着き、私は馬車に乗った。
隊員のドロールが、私をよく労ってくれた。
今日の仕事は、もうおしまいだ。
なんとか無事に果たせてよかった。

11/21、07:56 敬具 副団長 ニッシュ・リシック。

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