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第二章

第六十六話 書きかけの原作

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私は氷河期世代の弱者男性である。

私は若い頃を振り返っている。

友人の新田の死に動揺して私は抜け殻になっていた。

私はいま2LDKの家に住んでいる。

新田がいないと何とも寂し気な空間に思えた。

東京なので家賃は安くない。

「人気になってアシスタントが増えたら引っ越しをしないといけないな」

そう言っていた新田の言葉を思い出す。

不意にチャイムが鳴り、出てみると新田のお母さんだった。

遺品整理をしに来たのだ。

私は新田の部屋を案内した。

「正田君となら絶対成功できるとあの子は言ってたのよ」

新田のお母さんはそう言うと泣いていた。

私は涙腺が枯れたように涙が出なかった。

私は自分の部屋に帰り、書きかけの原稿を見つめた。

不思議とその原稿は他人が描いていたもののように思える。

新田のお母さんは整理が終わったらしく、またもう一度業者と一緒に来るとのことだった。

そして、私に新田の書きかけの原作を渡してくれた。

それは連載用の二話の原作とその原作の世界観と設定である。

世界観と設定だけでノートが二冊も埋まっていた。

「これは正田君が受け取ってね」と新田のお母さんは言った。

私にはその原作がとても重く感じた。
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