弱者男性は幸せになれるのか!? 一発逆転を夢見た末路の物語

幻霧雲開

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第二章

第六十三話 輝かしい未来

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私は氷河期世代の弱者男性である。

私は若い頃を振り返っている。

私と新田は漫画家を目指し上京していた。

担当と打ち合わせの感触は良く、話はとんとん拍子でもうデビューも間近であった。

それはひとえに新田の才能のおかげである。

最高の原作者が付いているため、私は嫌悪感を与えない絵まで上達すれば良かった。

そうすれば私たちはデビューするのだ。

「まさか新田と組んで漫画家になるなんて考えたことがなかったわ」

「そうか? 俺は子供のころから少しは思っていたけどね」

「そうなん? 俺と友達になったのはマンガを描かすため?」

「いや、そこまで考えてないよ。俺は純粋に絵を描ける人を尊敬するから」

「うん、こんな人生もあるやな。本当に漫画家になるなんて想像もしなかった」

「そうだ。デビューするなら正田は名前はどうする? 本名?」

「え? 考えてなかったな。新田は何か考えてるん?」

「ああ、ゲンムウンカイ」と言って紙に幻霧雲開と書いていた。

「へえ、お坊さんみたいな感じやな」

「うん。画数が良かったのもあるし、自分の頭の中にある幻や霧や雲を切り裂いて前を明るくしたいんだ」

新田はずっと頭の中にモヤモヤしたものを抱えて生きていたのだろう。

それをこの作品で切り開こうとしている。

そのモヤは子供の頃の経験から出来ている。

「そうだな。じゃあ俺はてっさいと言うペンネームにしようかな」と言って私は鉄才と紙に書いた。

「鉄のように確実に硬い才能と言う意味」

「へえ、なるほどね。でもこれをばらばらにすると金を失う才能ともなるぞ」

「ほんまや。でも大丈夫や。新田となら」

そう言って私は笑い、新田も笑った。

もうすぐ私たちの輝かしい未来が開けるはずだった。

私にはそれは確信できる事だったのだ。

この三日後に新田が交通事故で亡くならなければ。
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