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第二十二話 美白、変な顔をする

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それから泰蔵に教えられながらたこ焼きを何回か焼くと、簡単だと言っていたが本当に上手くたこ焼きが出来るようになっていた。

まだ泰蔵のようにすばやくは出来ないが形にはなっている。

本当にたこ焼きって面白いと美白は思った。

「あ、もうそろそろ帰ってご飯作らないと」
 
美白は時計を見てびっくりした。もう夕方の五時を回っている。

いつの間にそんなに時間が経っていたのだろうと思った。

「そうか。なら、このたこ焼きを持って帰り。こんな時間までここが開いてたことないから客はこんやろうし、兄ちゃんに食わしたり」

「うん。ありがとう」
 
美白は明日また来る約束をして、たこ焼きを三十個入った袋を下げて帰ることにした。

今日は楽しかったな。

お兄ちゃんも一緒に働いたらもっと楽しいだろうな。

そんなことを思って歩いていると前の方からきょろきょろしながら歩いている男が見えた。

その男は通り過ぎる人の顔を吟味するように見ている。

そこであっと美白は思い出した。

前に渋谷でしつこく自分をスカウトしてきた人だ。

なんでこんな道を歩いているのだろうと美白は戸惑った。

前に会ったときはお兄ちゃんが何とか追い返したが自分では断りきる自信がない。

一本道で隠れる場所もないし、急に引き返したら怪しまれるかも知れない。

仕方ないなと思って、美白はすっと無表情を作りそれから変な顔にしてみた。

ばれないかドキドキしながら男の横を通り過ぎる。

スカウトマンは力強い目つきで美白を見たが、ちょっと見て興味を失ったようでそのまま通り過ぎてしまった。

変な顔が上手くいったみたいなので、ほっとして美白は帰路についた。
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