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第四話 美人は帽子を忘れない

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俺は怒りで顔面が崩壊しそうだったが妹の可愛い顔を思い出し、今日の出勤途中で聞いた赤ん坊の笑い声を脳内で再生させ、お釈迦様が唱える因果説を確認して何とか心を落ち着けた。

社長の朝礼をさらっと聞き流して、トラックにジュースの箱を載せてから、俺は補充作業に出かけた。

何といってもこの仕事は、この補充作業をしているときは精神的に楽でいい。

あの班長さえいなければまだやっていけると思うのだけど、今はストレスがたまりすぎて顔面が痙攣を始めている。

もう駄目かもしれん。



兄の健太郎を見送った後、美白は着替えて外出することにした。

ドアから一歩外に出たときに帽子を被っていないことに気がつき慌てて取りに帰る。

前に健太郎と渋谷に行ったときに、五分と経たずにどこかの芸能プロダクションのスカウトにしつこく声をかけられたので、外出するときは帽子を深く被るようにと命じられているのだ。

「ちょっと変な顔をしていたら、声掛けられないんじゃないかな?」と美白は提案してみたが

「その変な顔が癖になったら困る」と健太郎が却下したのであまり効果はない気もするが、帽子を深く被って顔を見られないようにしている。

今日は天気が良く春の日差しがとても心地いい。

やっぱり兄があんなに苦しそうに働いているのだから私も何とかしてお金を稼ごうと美白は思っている。

でも働くにしても仕事はどこに行ったら見つかるのかわからないので何となくいつも行っているスーパーに足を向けていた。
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