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8話 シャルロットの妊娠
しおりを挟む「えっ! シャルロット! それは本当のことなの?」
問い詰める私をフフンと鼻で笑い、シャルロットはオーエン様にピッタリとくっつき手をかける。しかし父親だと言われたオーエン様は呆然とした顔で妹を見ていた。
「本当よ。だって今月から月のものがきてないもの。それにさっきだって――」
「ま、待ってくれ! その、私たちはそういったことまでは」
「でも子ができてもおかしくない事はしていましたわ。責任を取ると言ってくれたではないですか? あれは嘘でしたの?」
シャルロットはオーエン様を責めるようにそう言うと、プンと頬をふくらませる。その様子からシモン様を狙うのは止め、またオーエン様狙いになったのだろう。妹の変わり身の早さには、うんざりさせられる。
――それにしても妊娠しているというのは本当かしら? 今をしのぐための嘘? それとも本当に……?
さすがに側妃といえど、王家に姉妹で嫁ぐことはできない。そんなことをしたら我がモーガン侯爵家が王家を乗っ取ろうとしていると反対されるだろう。
「それならばどちらも王家に嫁ぐのか? しかし姉妹揃ってなど聞いたことがないが……」
意外にもこの問題に質問をしたのは、シモン様だった。
「この国では結界に魔力を注ぐ聖女は、王家に嫁ぎ王妃として大切にされると聞いた。聖女は百年に一度誕生する稀有な存在なのだろう? そのスカーレットを差し置いて、妹が王妃になれるとは思えないが」
その通りだ。私だってそれが決まっているから、つらい王妃教育を受けさせられたのだ。するとそれを聞いたシャルロットが子供のように声をあげ、泣き始めた。
「ひ、ひどいですわ! わたくしの子供を、いいえ! もうお腹の中にいる王子を殺せと言うのですか? うわああん」
「そ、そんなことは誰も言っていないぞ。それにまだ子ができたとは……」
「できております! わたくしに何をしたか、お忘れなのですか?」
「い、いいや、それは忘れていないが……しかし……」
もっと喜ぶかと思ってみれば、オーエン殿下は妹を慰めるだけで結婚しようとは言わない。チラチラと私を見ては助けてほしそうにしている。
――あんなに大勢がいる場で恥をかかせといて、今さらなんなの?
すると騒ぎを聞きつけたのだろう。宰相様が私たちのもとに駆けつけてきた。
「オーエン様、スカーレット様。陛下と王妃様がお二人から話を聞きたいとおっしゃっております」
顔を赤くし息を荒げているところを見ると、急を要する事態なはず。私が急いで返事をすると、なぜか妹のシャルロットまでついて来ようとした。
「シャルロット、あなたは呼ばれていないわ。侯爵家に帰りなさい。さっきの話はまた後で、お父様を交えてしましょう」
「いいえ! この際ですからわたくしも宣言しますわ! だってわたくしはオーエン様の子を身籠っているのですから!」
「な、なんですと!」
宰相様が目を丸くして驚き、青ざめている。オーエン様は先ほどから何も話さず、同じくらい顔色が悪い。
結局、宰相様の判断で、シャルロットも一緒に行くことになった。
「スカーレット様、ではまた後日」
「シモン様、今日はいろいろとお騒がせして申し訳ございませんでした」
そう私が謝ると、シモン様はクスッと笑い耳元で「今度詳しく聞かせろよ」と言って去って行った。その様子をオーエン様は苦々しい顔で見ている。
――対抗意識でもあるのかしら? そんなことより、今は陛下になんて言ったらいいのかしら。頭が痛いわ。
しかし案内された部屋に行くと、もっと頭が痛くなる事態になっていた。そこには陛下や王妃様だけでなく、私の父も来ていたからだ。
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