5 / 19
第一章 はじまり
第四話 マスターの威厳
しおりを挟む
目の前に現れた魔物を見て、僕は唖然としていた。
ルングはコケが生えた変な魔物なんて言っていたけど、
これはそんなくだらないものじゃない。
暗い洞窟内でも淡く光る、目を疑うような美しさ。
何かの擬態かとも思ったけど、その輝きは偽物なんかじゃなかった。
フルミスリルの甲冑に身を包んだそのアーマードゾンビは、特に何を言うでもなく、平然とそこに佇んでいたけど、僕の心中は全然穏やかではなかった。
ミスリルの甲冑に身を包んだ人間っていう可能性もあるけど、
こんな洞窟の奥にあの装備で潜る冒険者なんて見たことも聞いたこともない。
ミスリルなんて高級なものは、普通貴族かS級冒険者レベルの人じゃないと身に着けていない金属だ。
うちのおじいちゃんが昔見せてくれた小さなナイフはその切っ先だけがミスリルでコーティングされていたけど、今目の前にいるこの魔物は全身からそれと同じ輝きを発していた。
こんな魔物が今まで見つかったことは一度もないだろうけど、名づけるとするならそうだなあ…ミスリルアーマーかな。
クックとルングの歯が立たないわけだ。あいつらはもう魔物のランク相当で言えば2匹合わせてAランクだし、そう惨敗するような相手に巡り合うことはないのだけど、今回は完全に例外だ。
ザバルードであればなんとか力と重さ、あとは炎でゴリ押しできるかもしれないけど、洞窟には連れてきてないし。
こんな厄介な相手にこの貴石洞窟でエンカウントするとは想定外だった。
さて、マスターとしてここはどう行動すべきか。
逃げるっていう手もあるけど、洞窟の中からこいつが僕たちについてきて、
街に現れたりなんかしたら大騒ぎになるだろう。
ザバルードを街中に呼ぶこともできないし、それはなんとしても避けたい。
だったら、ここで倒すってことができたらそれが一番いいんだけど…。
相当レアな魔物だから、得られる経験値も他とは比にならないだろうね。
でも、クックとルングの攻撃力では歯が立たない。
…あの手を使うか。
スカウトっていうのは、マスターが野性の魔物を仲間にするために、
どうにかコミュニケーションを取って、自分の仲間として勧誘をすることだ。
僕は生まれつきどんな生き物とでも念話ができるから、
クックやルングたちを戦わせるときにも声に出して命令をする必要がない。
これは野性の魔物のスカウトにも利用できる。
念話が使えないマスターたちは、食べ物で釣ったり、直接触れ合いで仲を深めようとするみたいだけど、やっぱりそれでは賢い魔物以外には意図が伝わり辛くて、失敗に終わることが多い。
きっとこの魔物は他のゾンビとは違って主クラスだろうから、念話も理解してくれるだろう。
僕みたいな若造マスターに心を開いてくれる魔物かどうかは分からないけど、
スカウトしてみるほかにこの状況を乗り切る手段は少ないな。
それに、もしも仲間になってくれたら、僕の魔物たちの盾役として、大いに活躍してくれるに違いない。
そういえば、おじいちゃんがスカウトについての心得を昔教えてくれたっけな…そうそう。
スカウトで念話を使うときは、余裕を見せるような威厳ある言葉遣いをすることが大事だって言ってた。
理由は、マスターであるうえで何より大事なことは、
魔物たちからの信頼と尊敬を得ることだからだって言ってたな。
<クック、ルング、僕の両脇に座ってくれ、なるだけ僕の威厳を引き立たせるように!>
―ふふ、了解ですマスター。
―了解したよ、マスター。
よし。これで少しはおじいちゃんのアドバイスを活かせるだろう。
覚悟を決めて念話で、あの魔物のスカウトに挑もう。
<君はこの洞窟の魔物かい? …僕はセペ・アドヴェント、魔物の友達だよ。さっきは僕の魔物たちが驚かせてごめんなさい。だから僕たちを攻撃しないで欲しい。君の名前を聞かせてほしいな?>
―‥…
えっと…返答が無いってことは、意味が通じてないのかな?
ゾンビ系だから仕方はないかもしれないけど…
でも声の出所を不思議に思ってるみたいだ。
もしかしたらこんな魔物だから、生まれてから今まで、ビビった魔物たちが戦闘を仕掛けたことがなくて、経験値があまり溜まってないから、
念話を聞くことはできても、返すことができないのかもしれないな。
ここはそう仮定して、とりあえず話を進めてみよう。
<そうか、まだレベルが低いから念話は使えないんだね。じゃあ、本題に入るけどさ。単刀直入に言うよ。君に僕の仲間になって、ついてきてほしいんだ。君のその異常に硬い甲冑の防御力を、僕に貸してほしい。僕の仲間たちからもお願いするよ。>
―俺たちのマスターは最高に尊敬できる人物だ。マスターからのせっかくのお誘いなんだ、受けなきゃ失礼に値するぞ!
―兄ちゃんの言う通りだよ。マスターは良い人間だ。僕たちも君と一緒に戦いたいと思ってる。だからお願い!
空気を読んでくれて助かったよ。ありがとう二人とも。
だけどミスリルアーマーからの返事がない…って、あっ、念話を使えないんだった。
早くフォローしないと。
<もしこのスカウトを承知してくれるなら、首を縦に、もし嫌なら、首を横に振ってくれるかな?>
さて、結果はどうなのか…。 仲間になってほしい気持ちはやまやまだし、
スカウトのためにできることは全部した。
あとは気持ちが伝わるかどうかなんだけど…。
クイッ
お、おお!首を縦に振った!ってことは!
スカウトを引き受けてくれるんだね!
新しい仲間ができたことと、窮地を乗り越えられたことで、飛び上がって喜びたいような気分だけど、ここはぐっと我慢して、マスターの威厳を見せるために平然と対応をしなきゃいけないよね。
<よかった。首を縦に振ってくれた。新しい、頼もしい仲間が増えて嬉しいよ!じゃあ、これからは、僕のことはマスターって呼んで欲しい。ほんみゅ…本名はセペ・アドヴェントだからね、それは覚えといてね。>
あ、ああ、なんてこった。動揺が隠し切れずに自己紹介で噛んじゃった…恥ずかしい。
威厳を見せようと思ったのに…でも、ちょっとくらいは親しみやすい雰囲気になっただろうからよしとしよう!
うん、これはすべて作戦通りだよ。
…ところで、ゾンビって耳は聞こえるんだろうか。
クックとルングは獣系の魔物だけど、言葉の加護を受けているから人間の言葉は分かるし、
聴覚も優れているから僕が口頭で呼びかけても反応してくれる。
念話だと直接意味とか目的っていったものを送ってコミュニケーションを取れるから、どんな魔物でも理解してくれるんだけど、このミスリルアーマーが加護を受けていない魔物だったとしたら、
人間の言葉を音として聞くことができたとしても、その意味を理解してくれることはない。
別に念話じゃないと話せなかったとしても、僕が少し頑張れば良いだけの話だし、頼りがいのある魔物だってことは確かなんだけど、ずっと念話なのも疲れるんだよね。
なんというか、少し集中力が必要だから。
ちなみに、加護を受けているっていうのは、僕の念話の才能みたいに、生まれつき他の同じ種の他の個体とは違った能力を持っている状態のことで、全体の10分の1くらいの生き物は
何かしらの加護を受けている。
加護の能力の種類は多岐に渡っていて、ランダムに決まるらしい。
それと、双子だったりっていう風に、同じ時に同じ親から生まれてきた生き物の兄弟たちは、もし加護を受けたとすれば、全員が同一の加護を受けるっていうことが分かっている。
例えば、クックとルングは三つ子のうちの2匹だったようだから、2匹とも語学の加護を受けている。
だから僕の口頭でのやり取りも理解してくれるわけだね。
だけどやっぱり体のつくりは違うから、人間の言葉を喋ることはできないんだけど。
一応、ミスリルアーマーが耳で聞くことができるのか、語学の加護を受けているのかを
確かめるために、人間の言葉で直接呼びかけてみよう。
「耳は聞こえる?」
おっ、首を縦に振った。
ということは、耳も聞こえるし、それに加えてクックやルングと同じように加護を受けた個体なんだろう。なんて偶然なんだろうか。
こんなに硬い甲冑を持っていて、人間の言葉も通じるなんて。
なんにせよ、マスターの僕としては助かることばかりだ。
「よかった、君も加護を受けているんだね。じゃあずっと念話を使ってるのも疲れるから、これからは普通に喋っていくことにするよ。せっかく新しい仲間ができたんだし、今日はこのくらいにして帰ろっか。ついてきてね…えっと、あ、名付けがまだだったね。君はどんな名前が似合うだろうか…。」
名前をつけ忘れるなんてマスターとしてとんでもない!
はぁ、僕はまだまだダメだなぁ…。
こいつの背は僕と同じくらいだから、そこから推測して、多分生前は男性だったんだろうね。
僕、名づけは結構悩むタイプなんだよね…。クックとルングっていうのも、考えるのに3日かかったし。
でも早く名前で呼んであげたいし…男っぽい名前で良いアイデアは…。
うーん、すぐにきた!これだ!
「ジュリオ。ジュリオだね。一発で決まっちゃった!」
ジュリオ。勇ましくて、でも爽やかな、ミスリルの甲冑に身を包んだこいつにぴったりな名前だと思う。
ジュリオもあまり不満げな態度じゃないし、きっと気に入ってくれたんだろう。
それじゃあ、もう今日は満足だし、洞窟を出て一旦町に帰ることにしよう。
ジュリオはこの洞窟で生まれたんだろうし、外の世界を初めて見たときの反応が楽しみだね。
きっと目(あるか分からないけど)をきらきらさせて、楽しんでくれるに違いない。
「じゃあジュリオ、一緒に外に出てみよっか。ここは洞窟って言って、外にはもっと光に溢れた、明るい世界があるんだよ。きっとびっくりするぞー。」
あっ、でも、ゾンビって太陽の光とかに弱いんだっけ…?
ジュリオは甲冑を着てるからきっと大丈夫だよね。
すぐ灰になっちゃったりしたらいやだよ。
僕とクック、ルングが出口の方向へ歩き始めると、ジュリオもそれを追うように走って来てくれた。
この、後ろをついてきてくれるって瞬間に、マスターになったっていう実感が湧いて、
何とも言えない幸福感と満足感に包まれるんだよなぁ…。
ジュリオ、これからよろしくね。
ルングはコケが生えた変な魔物なんて言っていたけど、
これはそんなくだらないものじゃない。
暗い洞窟内でも淡く光る、目を疑うような美しさ。
何かの擬態かとも思ったけど、その輝きは偽物なんかじゃなかった。
フルミスリルの甲冑に身を包んだそのアーマードゾンビは、特に何を言うでもなく、平然とそこに佇んでいたけど、僕の心中は全然穏やかではなかった。
ミスリルの甲冑に身を包んだ人間っていう可能性もあるけど、
こんな洞窟の奥にあの装備で潜る冒険者なんて見たことも聞いたこともない。
ミスリルなんて高級なものは、普通貴族かS級冒険者レベルの人じゃないと身に着けていない金属だ。
うちのおじいちゃんが昔見せてくれた小さなナイフはその切っ先だけがミスリルでコーティングされていたけど、今目の前にいるこの魔物は全身からそれと同じ輝きを発していた。
こんな魔物が今まで見つかったことは一度もないだろうけど、名づけるとするならそうだなあ…ミスリルアーマーかな。
クックとルングの歯が立たないわけだ。あいつらはもう魔物のランク相当で言えば2匹合わせてAランクだし、そう惨敗するような相手に巡り合うことはないのだけど、今回は完全に例外だ。
ザバルードであればなんとか力と重さ、あとは炎でゴリ押しできるかもしれないけど、洞窟には連れてきてないし。
こんな厄介な相手にこの貴石洞窟でエンカウントするとは想定外だった。
さて、マスターとしてここはどう行動すべきか。
逃げるっていう手もあるけど、洞窟の中からこいつが僕たちについてきて、
街に現れたりなんかしたら大騒ぎになるだろう。
ザバルードを街中に呼ぶこともできないし、それはなんとしても避けたい。
だったら、ここで倒すってことができたらそれが一番いいんだけど…。
相当レアな魔物だから、得られる経験値も他とは比にならないだろうね。
でも、クックとルングの攻撃力では歯が立たない。
…あの手を使うか。
スカウトっていうのは、マスターが野性の魔物を仲間にするために、
どうにかコミュニケーションを取って、自分の仲間として勧誘をすることだ。
僕は生まれつきどんな生き物とでも念話ができるから、
クックやルングたちを戦わせるときにも声に出して命令をする必要がない。
これは野性の魔物のスカウトにも利用できる。
念話が使えないマスターたちは、食べ物で釣ったり、直接触れ合いで仲を深めようとするみたいだけど、やっぱりそれでは賢い魔物以外には意図が伝わり辛くて、失敗に終わることが多い。
きっとこの魔物は他のゾンビとは違って主クラスだろうから、念話も理解してくれるだろう。
僕みたいな若造マスターに心を開いてくれる魔物かどうかは分からないけど、
スカウトしてみるほかにこの状況を乗り切る手段は少ないな。
それに、もしも仲間になってくれたら、僕の魔物たちの盾役として、大いに活躍してくれるに違いない。
そういえば、おじいちゃんがスカウトについての心得を昔教えてくれたっけな…そうそう。
スカウトで念話を使うときは、余裕を見せるような威厳ある言葉遣いをすることが大事だって言ってた。
理由は、マスターであるうえで何より大事なことは、
魔物たちからの信頼と尊敬を得ることだからだって言ってたな。
<クック、ルング、僕の両脇に座ってくれ、なるだけ僕の威厳を引き立たせるように!>
―ふふ、了解ですマスター。
―了解したよ、マスター。
よし。これで少しはおじいちゃんのアドバイスを活かせるだろう。
覚悟を決めて念話で、あの魔物のスカウトに挑もう。
<君はこの洞窟の魔物かい? …僕はセペ・アドヴェント、魔物の友達だよ。さっきは僕の魔物たちが驚かせてごめんなさい。だから僕たちを攻撃しないで欲しい。君の名前を聞かせてほしいな?>
―‥…
えっと…返答が無いってことは、意味が通じてないのかな?
ゾンビ系だから仕方はないかもしれないけど…
でも声の出所を不思議に思ってるみたいだ。
もしかしたらこんな魔物だから、生まれてから今まで、ビビった魔物たちが戦闘を仕掛けたことがなくて、経験値があまり溜まってないから、
念話を聞くことはできても、返すことができないのかもしれないな。
ここはそう仮定して、とりあえず話を進めてみよう。
<そうか、まだレベルが低いから念話は使えないんだね。じゃあ、本題に入るけどさ。単刀直入に言うよ。君に僕の仲間になって、ついてきてほしいんだ。君のその異常に硬い甲冑の防御力を、僕に貸してほしい。僕の仲間たちからもお願いするよ。>
―俺たちのマスターは最高に尊敬できる人物だ。マスターからのせっかくのお誘いなんだ、受けなきゃ失礼に値するぞ!
―兄ちゃんの言う通りだよ。マスターは良い人間だ。僕たちも君と一緒に戦いたいと思ってる。だからお願い!
空気を読んでくれて助かったよ。ありがとう二人とも。
だけどミスリルアーマーからの返事がない…って、あっ、念話を使えないんだった。
早くフォローしないと。
<もしこのスカウトを承知してくれるなら、首を縦に、もし嫌なら、首を横に振ってくれるかな?>
さて、結果はどうなのか…。 仲間になってほしい気持ちはやまやまだし、
スカウトのためにできることは全部した。
あとは気持ちが伝わるかどうかなんだけど…。
クイッ
お、おお!首を縦に振った!ってことは!
スカウトを引き受けてくれるんだね!
新しい仲間ができたことと、窮地を乗り越えられたことで、飛び上がって喜びたいような気分だけど、ここはぐっと我慢して、マスターの威厳を見せるために平然と対応をしなきゃいけないよね。
<よかった。首を縦に振ってくれた。新しい、頼もしい仲間が増えて嬉しいよ!じゃあ、これからは、僕のことはマスターって呼んで欲しい。ほんみゅ…本名はセペ・アドヴェントだからね、それは覚えといてね。>
あ、ああ、なんてこった。動揺が隠し切れずに自己紹介で噛んじゃった…恥ずかしい。
威厳を見せようと思ったのに…でも、ちょっとくらいは親しみやすい雰囲気になっただろうからよしとしよう!
うん、これはすべて作戦通りだよ。
…ところで、ゾンビって耳は聞こえるんだろうか。
クックとルングは獣系の魔物だけど、言葉の加護を受けているから人間の言葉は分かるし、
聴覚も優れているから僕が口頭で呼びかけても反応してくれる。
念話だと直接意味とか目的っていったものを送ってコミュニケーションを取れるから、どんな魔物でも理解してくれるんだけど、このミスリルアーマーが加護を受けていない魔物だったとしたら、
人間の言葉を音として聞くことができたとしても、その意味を理解してくれることはない。
別に念話じゃないと話せなかったとしても、僕が少し頑張れば良いだけの話だし、頼りがいのある魔物だってことは確かなんだけど、ずっと念話なのも疲れるんだよね。
なんというか、少し集中力が必要だから。
ちなみに、加護を受けているっていうのは、僕の念話の才能みたいに、生まれつき他の同じ種の他の個体とは違った能力を持っている状態のことで、全体の10分の1くらいの生き物は
何かしらの加護を受けている。
加護の能力の種類は多岐に渡っていて、ランダムに決まるらしい。
それと、双子だったりっていう風に、同じ時に同じ親から生まれてきた生き物の兄弟たちは、もし加護を受けたとすれば、全員が同一の加護を受けるっていうことが分かっている。
例えば、クックとルングは三つ子のうちの2匹だったようだから、2匹とも語学の加護を受けている。
だから僕の口頭でのやり取りも理解してくれるわけだね。
だけどやっぱり体のつくりは違うから、人間の言葉を喋ることはできないんだけど。
一応、ミスリルアーマーが耳で聞くことができるのか、語学の加護を受けているのかを
確かめるために、人間の言葉で直接呼びかけてみよう。
「耳は聞こえる?」
おっ、首を縦に振った。
ということは、耳も聞こえるし、それに加えてクックやルングと同じように加護を受けた個体なんだろう。なんて偶然なんだろうか。
こんなに硬い甲冑を持っていて、人間の言葉も通じるなんて。
なんにせよ、マスターの僕としては助かることばかりだ。
「よかった、君も加護を受けているんだね。じゃあずっと念話を使ってるのも疲れるから、これからは普通に喋っていくことにするよ。せっかく新しい仲間ができたんだし、今日はこのくらいにして帰ろっか。ついてきてね…えっと、あ、名付けがまだだったね。君はどんな名前が似合うだろうか…。」
名前をつけ忘れるなんてマスターとしてとんでもない!
はぁ、僕はまだまだダメだなぁ…。
こいつの背は僕と同じくらいだから、そこから推測して、多分生前は男性だったんだろうね。
僕、名づけは結構悩むタイプなんだよね…。クックとルングっていうのも、考えるのに3日かかったし。
でも早く名前で呼んであげたいし…男っぽい名前で良いアイデアは…。
うーん、すぐにきた!これだ!
「ジュリオ。ジュリオだね。一発で決まっちゃった!」
ジュリオ。勇ましくて、でも爽やかな、ミスリルの甲冑に身を包んだこいつにぴったりな名前だと思う。
ジュリオもあまり不満げな態度じゃないし、きっと気に入ってくれたんだろう。
それじゃあ、もう今日は満足だし、洞窟を出て一旦町に帰ることにしよう。
ジュリオはこの洞窟で生まれたんだろうし、外の世界を初めて見たときの反応が楽しみだね。
きっと目(あるか分からないけど)をきらきらさせて、楽しんでくれるに違いない。
「じゃあジュリオ、一緒に外に出てみよっか。ここは洞窟って言って、外にはもっと光に溢れた、明るい世界があるんだよ。きっとびっくりするぞー。」
あっ、でも、ゾンビって太陽の光とかに弱いんだっけ…?
ジュリオは甲冑を着てるからきっと大丈夫だよね。
すぐ灰になっちゃったりしたらいやだよ。
僕とクック、ルングが出口の方向へ歩き始めると、ジュリオもそれを追うように走って来てくれた。
この、後ろをついてきてくれるって瞬間に、マスターになったっていう実感が湧いて、
何とも言えない幸福感と満足感に包まれるんだよなぁ…。
ジュリオ、これからよろしくね。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ある島国の軍人は異世界へ
太郎
ファンタジー
とある島国の帝国軍人である鈴村次郎海軍中佐は、敵艦隊の奇襲を受け敗走中に敵潜水艦に補足される。
魚雷攻撃を受け絶体絶命の最中に彼は異世界へと飛ばされる事となった。
飛ばされた異世界は剣と魔法、そして魔獣が人々を食らう世界。
そこで次郎は軍人として培った能力で異世界を生き抜いて行く。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
(完結)私は家政婦だったのですか?(全5話)
青空一夏
恋愛
夫の母親を5年介護していた私に子供はいない。お義母様が亡くなってすぐに夫に告げられた言葉は「わたしには6歳になる子供がいるんだよ。だから離婚してくれ」だった。
ありがちなテーマをさくっと書きたくて、短いお話しにしてみました。
さくっと因果応報物語です。ショートショートの全5話。1話ごとの字数には偏りがあります。3話目が多分1番長いかも。
青空異世界のゆるふわ設定ご都合主義です。現代的表現や現代的感覚、現代的機器など出てくる場合あります。貴族がいるヨーロッパ風の社会ですが、作者独自の世界です。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる