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*59 新チーム発足 *
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「スバルの、店?」
呆然としているマートルへ、オルレアと考えていた新しい店のことについて説明をする。
コンセプトは、地球飯と地元飯が一度に味わえる店。料理や人など、新しく知るきっかけになるところ。異文化コミュニケーションの一助となればいい、と思っている。
「客層は、Cランク探索者とちょっと裕福な庶民。だから、クレセールとセンテステの境目あたりに出店したくて──」
今、商業ギルドに掛け合って出店場所を探してもらっているところだ。
「それは、大丈夫なのか? 探索者と裕福な庶民ってのはかけ離れてないか?」
カヒエを淹れてくれたマッキーさんにお礼を言って、マートルはカップに手を伸ばした。
「稼ぎだけで言えば、階層的には同じくらいですが、見た目に問題がありますね。基本、探索者は小汚いですから。こぎれいでいるのは、休養期間中くらいのものです」
「休養期間中でも、探索者は探索者です。それに、ダンジョン帰りでも〈清潔〉をかけるくらいの魔力は残ってるでしょう? ダンジョン帰りが、この店に入るときは〈清潔〉をかけてきれいにしてから、ってことにすれば、多少はマシだと思うんですが?」
「なるほどな……って、これっ! カヒエかっ?!」
あ、マートルも驚いた。オルレアが、さっき話していたカヒエについてのプロジェクトを説明すると、彼は
「これ、絶対に売れる。新しいカヒエ発祥の店っていう肩書は、店を始める上で有利になると思う。まずは、そのさっき言ってたオリジナルブレンド? っていうのを作って、調理師ギルドに秘匿でレシピ登録をするべきだ。その上で、屋台販売でオリジナルブレンドのカヒエを売って、宣伝すれば、今までの常連だけじゃなく、新しい客も来る」
一気にまくしたてるように喋ったと思うと、急にかたまって
「あ、すまん。部外者の俺が言うことじゃねえよな……」
しょんぼりと肩を落とした。ふむ。マートルって、確か何が売れるかが分かるっていうスキルを持ってるんだっけ? それに元探索者だから、荒事には慣れてるだろうし……。
「マートル、店を閉めたあとはどうするか決めてる?」
「いや、まだ何も。どっかのクランに拾ってもらえねえか、掛け合うつもりではいる。ダンジョンには入れねえが、後方支援とかやれることはあるからな」
「じゃあ、俺から提案。オリーと一緒に俺の店で働く気はない? 副店長として、ホールを見てもらえると助かる」
「は? 副、店長?」
俺の申し出に、マートルは何言ってんだ、コイツっていう顔になった。チャールズさんは軽く眉を持ち上げて、
「ずいぶん思い切った提案をしますねえ。理由を聞いても?」
「もちろん。まず、俺が店長でオリーが副店長だと、キッチンに責任者が偏ることになる。俺は料理を作るほうに回りたいから、初めからホールに立つことを前提で開業計画は立てたくない」
「マーたんに副店長としてホールを任せれば、責任者の偏りもなくなるし、スバルんもキッチンに立てるって訳だ。それに、元探索者ってことは、揉め事が起きてもそれなりに対応できるだろうし、探索者を客層に入れてることを思えば、宣伝にもなりそうだしねえ」
マッキーさんがカヒエを飲んで、俺の目論見をさらっと暴露した。
「タリーの台所の後継店を名乗りやすくなる、という利点もあります。取引先をそのまま引き継げますし、人選としては悪くないかと」
「……いい、のか?」
「君がいいなら、ぜひともお願いしたい」
「マートル!」ぱあっと顔を輝かせるオルレア。かわいいな、ほんと。
幼馴染に期待のこもった目で見られたことも後押しされてか、マートルは席を立つと、
「ぜひ、働かせてもらいたい」
俺に向かって頭を下げてくれた。俺も席を立ち、彼に向って手を差し出し、
「これから、よろしくお願いします。オリーと同じくらい、頼りにしてる」
「あぁ。精一杯勤めさせてもらう」
お互い、がっちり握手。これから、この三人で協力して店をやっていくのだ!
「では、今現在分かっているスケジュールをお伺いしても?」
何故にチャールズさんからその質問が来るのかよく分からないが、
「このまま閉店しても問題はねえんだろうが、それだと今まで贔屓にしてくれてた人たちに申し訳ねぇ。だから、賃貸契約が切れる十一月までは赤字でも店をやりたいと思う」
人差し指で頬をかきながら、マートルが言う。一応、三人いれば店は回るだろうけど、
「通常営業だったら、このまま店の営業が続くと思われるかも知れないよ?」
そうなんだよなあ。十一月まで店が使えるんなら、屋台営業はせずに仮営業だと分かる方法で営業をしたほうがいいだろう。メニューを絞るのは当然として、他になにか……
「営業時間を変えるってのは、どうだ? 朝から昼の二時くらいで営業を終わるんだ」
マートルの提案に、俺たちは目を丸くした。昼で営業を終わるだって?
呆然としているマートルへ、オルレアと考えていた新しい店のことについて説明をする。
コンセプトは、地球飯と地元飯が一度に味わえる店。料理や人など、新しく知るきっかけになるところ。異文化コミュニケーションの一助となればいい、と思っている。
「客層は、Cランク探索者とちょっと裕福な庶民。だから、クレセールとセンテステの境目あたりに出店したくて──」
今、商業ギルドに掛け合って出店場所を探してもらっているところだ。
「それは、大丈夫なのか? 探索者と裕福な庶民ってのはかけ離れてないか?」
カヒエを淹れてくれたマッキーさんにお礼を言って、マートルはカップに手を伸ばした。
「稼ぎだけで言えば、階層的には同じくらいですが、見た目に問題がありますね。基本、探索者は小汚いですから。こぎれいでいるのは、休養期間中くらいのものです」
「休養期間中でも、探索者は探索者です。それに、ダンジョン帰りでも〈清潔〉をかけるくらいの魔力は残ってるでしょう? ダンジョン帰りが、この店に入るときは〈清潔〉をかけてきれいにしてから、ってことにすれば、多少はマシだと思うんですが?」
「なるほどな……って、これっ! カヒエかっ?!」
あ、マートルも驚いた。オルレアが、さっき話していたカヒエについてのプロジェクトを説明すると、彼は
「これ、絶対に売れる。新しいカヒエ発祥の店っていう肩書は、店を始める上で有利になると思う。まずは、そのさっき言ってたオリジナルブレンド? っていうのを作って、調理師ギルドに秘匿でレシピ登録をするべきだ。その上で、屋台販売でオリジナルブレンドのカヒエを売って、宣伝すれば、今までの常連だけじゃなく、新しい客も来る」
一気にまくしたてるように喋ったと思うと、急にかたまって
「あ、すまん。部外者の俺が言うことじゃねえよな……」
しょんぼりと肩を落とした。ふむ。マートルって、確か何が売れるかが分かるっていうスキルを持ってるんだっけ? それに元探索者だから、荒事には慣れてるだろうし……。
「マートル、店を閉めたあとはどうするか決めてる?」
「いや、まだ何も。どっかのクランに拾ってもらえねえか、掛け合うつもりではいる。ダンジョンには入れねえが、後方支援とかやれることはあるからな」
「じゃあ、俺から提案。オリーと一緒に俺の店で働く気はない? 副店長として、ホールを見てもらえると助かる」
「は? 副、店長?」
俺の申し出に、マートルは何言ってんだ、コイツっていう顔になった。チャールズさんは軽く眉を持ち上げて、
「ずいぶん思い切った提案をしますねえ。理由を聞いても?」
「もちろん。まず、俺が店長でオリーが副店長だと、キッチンに責任者が偏ることになる。俺は料理を作るほうに回りたいから、初めからホールに立つことを前提で開業計画は立てたくない」
「マーたんに副店長としてホールを任せれば、責任者の偏りもなくなるし、スバルんもキッチンに立てるって訳だ。それに、元探索者ってことは、揉め事が起きてもそれなりに対応できるだろうし、探索者を客層に入れてることを思えば、宣伝にもなりそうだしねえ」
マッキーさんがカヒエを飲んで、俺の目論見をさらっと暴露した。
「タリーの台所の後継店を名乗りやすくなる、という利点もあります。取引先をそのまま引き継げますし、人選としては悪くないかと」
「……いい、のか?」
「君がいいなら、ぜひともお願いしたい」
「マートル!」ぱあっと顔を輝かせるオルレア。かわいいな、ほんと。
幼馴染に期待のこもった目で見られたことも後押しされてか、マートルは席を立つと、
「ぜひ、働かせてもらいたい」
俺に向かって頭を下げてくれた。俺も席を立ち、彼に向って手を差し出し、
「これから、よろしくお願いします。オリーと同じくらい、頼りにしてる」
「あぁ。精一杯勤めさせてもらう」
お互い、がっちり握手。これから、この三人で協力して店をやっていくのだ!
「では、今現在分かっているスケジュールをお伺いしても?」
何故にチャールズさんからその質問が来るのかよく分からないが、
「このまま閉店しても問題はねえんだろうが、それだと今まで贔屓にしてくれてた人たちに申し訳ねぇ。だから、賃貸契約が切れる十一月までは赤字でも店をやりたいと思う」
人差し指で頬をかきながら、マートルが言う。一応、三人いれば店は回るだろうけど、
「通常営業だったら、このまま店の営業が続くと思われるかも知れないよ?」
そうなんだよなあ。十一月まで店が使えるんなら、屋台営業はせずに仮営業だと分かる方法で営業をしたほうがいいだろう。メニューを絞るのは当然として、他になにか……
「営業時間を変えるってのは、どうだ? 朝から昼の二時くらいで営業を終わるんだ」
マートルの提案に、俺たちは目を丸くした。昼で営業を終わるだって?
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