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*41 鐘が鳴った──のか? *
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このタイミングで、それを出す!? 騎士がいることに気づいてないのか?! ホワイトタイガーさんがどんな反応をするのか恐ろしくて、肝が冷える。そ~っと横目で彼の様子を伺ったのだが……なんか、様子がおかしい。俺の思ってたのとナンカ違う。
目を真ん丸にして、マッキーさんを見てる。あくまでも雰囲気なんだが、ホワイトタイガーさんの周りに花が舞い散り、リンゴ~ンって鐘が鳴ってる感じ。
まさに今、一目で恋に落ちました、っていう……。
「じゃ、僕、眠いから帰るね」
一方で、マッキーさんはどこまでもマイペース。ふわ~あぁと大きなあくびをして、俺たちに背を向けたが、
「失礼。君の名前を伺ってもいいだろうか? 私は、ティグレカヴァリエ騎士団 第四中隊所属のシグヴァルト・デュランタ・ユゼローク・ヴェメスだ」
騎士様……アナタ、ひざまずいて何してますのん? 俺がポカーンとしている横で、
「ウソ!?」
「まさか?!」
オルレアとおかみさんが、信じられないという顔で視線を合わせていた。
「ひょっとして!?」
「ひょっとするかも?!」
と言ったところで、お互いに抱き合う。え? ちょっと、ちょっと何よ? 何なの? 何が起きてんの。俺だけおいてきぼりなんだけど?! ただ、二人とも目がキラッキラしてて、期待度マックスになってるのは分かる。マジで何事?!
「ん~? 僕? 僕はマキノ・タクミだよ」
「マキノ・タクミ……。不思議な響きの名だ。タクミ、今のあなたは体調が万全と言えない状態のようだ。嫌でなければ、私に家まで送らせてもらえないだろうか?」
「? シグさんが? 何で? 仕事中じゃないの?」
ぶふぉっ! ちょ、マッキーさん?! あんた、相手は騎士様! お貴族様! 爵位は分からないから、せめてヴェメス様って呼ぶべきだろ!? 俺がひえぇっとおののいている前で、
「市民の安全を守ることも私の仕事だ。ふふっ。シグさんとは……初めての呼び名だ」
「嫌なら変えるよ?」
「いや、かまわないとも」
あれえ? 何とも和やかなやり取りが。そのまま、マッキーさんは、ホワイトタイガーさんこと、ヴェメス様にエスコートされて帰って行った。
……どういうことだよ? 何が起きたんだ? え? 一目ぼれ的な?
助けを求めるような気持ちで、オルレアとおかみさんを見たら、
「見たかい、オリー?!」
「見たよ、見た! すごい! まさか、こんな瞬間が見られるなんて!」
「「夢みたい……」」
え、え~? あの……何が起きたんで? 訳が分からないって顔をしている俺に気づいたオルレアは、興奮冷めやらぬ状態で、
「つがいだよ、つがい! あの騎士様のつがいはマッキーさんだったんだよ!」
「つが……あぁ、つがい。……………えぇっ?! ちょ、あれ!? あれが?!」
つがいというのは、端的に言えば運命の相手だ。この運命の相手は、同族の異性とは限らず、同性だったり、別の種族だったりすることも珍しくないらしい。
ただし、注意点がいくつか。
1、人族はつがいセンサーが鈍いので、自分でつがいは分からないと思ったほうがいいこと。
2、つがいセンサーが鋭いのは獣人族と魔人族だが、彼らからつがいだと言われても、簡単に信じてはいけないこと。つがい詐欺ってものがあるらしい。
つがい詐欺が広く一般に知られてはいるものの、人族はカモられやすいとのことである。日本でも特殊詐欺の被害件数はずっと横ばい状態だし、分かる気がする。
「本当につがいだとしても、その人と一緒になって幸せになれるとは限りませんので、そこは冷静に見極めましょう。運命の出会いがハッピーエンドだなんて、誰が決めたんだって話です。悲恋なんて、そこら中に転がっていますよからね」
チャールズさんは、いつも厳しい。優しいからこそ、厳しいんだってことは分かってる。
とりあえず、二人には注意しておかなくては。
「二人とも、ヴェメス様のつがいがマッキーさんだったってこと、言いふらしたりしないように。正確な身分は分からないけど、ヴェメス様は貴族なんだからさ」
「は! そうだね。あんなにいい男なんだ。縁談の五つや六つ、あったっておかしかないよ」
「縁談相手から、マッキーさんが狙われたり!?」
それ、どんな昼ドラ。でも、絶対にないと言い切れないあたりがおっかない。
「喋るなら、つがいと出会ったっぽいカップルを見たってことだけにしとこうか。オリー」
「そうだね。エリーゼさん」
二人は力強く「うん」と頷き合った。突っ込まれたら、虎族と人族のカップルだと答えることにしようと決めて、おかみさんはパン屋に帰って行った。
昨日から色んなことが立て続けに起こりすぎじゃないかナー? なんか疲れた……。
目を真ん丸にして、マッキーさんを見てる。あくまでも雰囲気なんだが、ホワイトタイガーさんの周りに花が舞い散り、リンゴ~ンって鐘が鳴ってる感じ。
まさに今、一目で恋に落ちました、っていう……。
「じゃ、僕、眠いから帰るね」
一方で、マッキーさんはどこまでもマイペース。ふわ~あぁと大きなあくびをして、俺たちに背を向けたが、
「失礼。君の名前を伺ってもいいだろうか? 私は、ティグレカヴァリエ騎士団 第四中隊所属のシグヴァルト・デュランタ・ユゼローク・ヴェメスだ」
騎士様……アナタ、ひざまずいて何してますのん? 俺がポカーンとしている横で、
「ウソ!?」
「まさか?!」
オルレアとおかみさんが、信じられないという顔で視線を合わせていた。
「ひょっとして!?」
「ひょっとするかも?!」
と言ったところで、お互いに抱き合う。え? ちょっと、ちょっと何よ? 何なの? 何が起きてんの。俺だけおいてきぼりなんだけど?! ただ、二人とも目がキラッキラしてて、期待度マックスになってるのは分かる。マジで何事?!
「ん~? 僕? 僕はマキノ・タクミだよ」
「マキノ・タクミ……。不思議な響きの名だ。タクミ、今のあなたは体調が万全と言えない状態のようだ。嫌でなければ、私に家まで送らせてもらえないだろうか?」
「? シグさんが? 何で? 仕事中じゃないの?」
ぶふぉっ! ちょ、マッキーさん?! あんた、相手は騎士様! お貴族様! 爵位は分からないから、せめてヴェメス様って呼ぶべきだろ!? 俺がひえぇっとおののいている前で、
「市民の安全を守ることも私の仕事だ。ふふっ。シグさんとは……初めての呼び名だ」
「嫌なら変えるよ?」
「いや、かまわないとも」
あれえ? 何とも和やかなやり取りが。そのまま、マッキーさんは、ホワイトタイガーさんこと、ヴェメス様にエスコートされて帰って行った。
……どういうことだよ? 何が起きたんだ? え? 一目ぼれ的な?
助けを求めるような気持ちで、オルレアとおかみさんを見たら、
「見たかい、オリー?!」
「見たよ、見た! すごい! まさか、こんな瞬間が見られるなんて!」
「「夢みたい……」」
え、え~? あの……何が起きたんで? 訳が分からないって顔をしている俺に気づいたオルレアは、興奮冷めやらぬ状態で、
「つがいだよ、つがい! あの騎士様のつがいはマッキーさんだったんだよ!」
「つが……あぁ、つがい。……………えぇっ?! ちょ、あれ!? あれが?!」
つがいというのは、端的に言えば運命の相手だ。この運命の相手は、同族の異性とは限らず、同性だったり、別の種族だったりすることも珍しくないらしい。
ただし、注意点がいくつか。
1、人族はつがいセンサーが鈍いので、自分でつがいは分からないと思ったほうがいいこと。
2、つがいセンサーが鋭いのは獣人族と魔人族だが、彼らからつがいだと言われても、簡単に信じてはいけないこと。つがい詐欺ってものがあるらしい。
つがい詐欺が広く一般に知られてはいるものの、人族はカモられやすいとのことである。日本でも特殊詐欺の被害件数はずっと横ばい状態だし、分かる気がする。
「本当につがいだとしても、その人と一緒になって幸せになれるとは限りませんので、そこは冷静に見極めましょう。運命の出会いがハッピーエンドだなんて、誰が決めたんだって話です。悲恋なんて、そこら中に転がっていますよからね」
チャールズさんは、いつも厳しい。優しいからこそ、厳しいんだってことは分かってる。
とりあえず、二人には注意しておかなくては。
「二人とも、ヴェメス様のつがいがマッキーさんだったってこと、言いふらしたりしないように。正確な身分は分からないけど、ヴェメス様は貴族なんだからさ」
「は! そうだね。あんなにいい男なんだ。縁談の五つや六つ、あったっておかしかないよ」
「縁談相手から、マッキーさんが狙われたり!?」
それ、どんな昼ドラ。でも、絶対にないと言い切れないあたりがおっかない。
「喋るなら、つがいと出会ったっぽいカップルを見たってことだけにしとこうか。オリー」
「そうだね。エリーゼさん」
二人は力強く「うん」と頷き合った。突っ込まれたら、虎族と人族のカップルだと答えることにしようと決めて、おかみさんはパン屋に帰って行った。
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