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*17 これからの予定 *
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経過観察期間中の人向けの売店は、品ぞろえがめちゃくちゃだった。スキルの定着確認が一番の理由だから、仕方ないと言えば仕方ないんだろうけど。品質とか心配になってくるけど、そこはちゃんと確認していて、一般の商店で販売されているレベルの物しか並べていないそうだ。
しかし、まだギルドに登録しているわけではないため、正規品扱いにはならないらしい。その結果、販売価格がめちゃくちゃ安い。ほぼ原価だという話。
だから、ちょっと時間ができると覗きに行っちゃうんだよな。でもって、お買い得だからって、使い道とか深く考えずに買ってしまう。ポーションもそうなんだけど、琥珀色のガラスペンとか。ペーパーウエイトとか。わんこの形してて、かわいかったんで、つい……。
で、この売店で買った一番のお買い得品は、サコッシュ型のマジックバッグ! 錬金術師を志望している人が作ったらしいが、
「なんで作れるんだよ? あり得ねえだろ、おかしいんじゃねえの?」
スタッフの人が、信じられねえ、バケモノかよ?! と言っていたのをはっきり聞いた。そう思う理由については、聞いてない。というか、話しかけられる雰囲気じゃなかったし。
その彼曰く、外でこのクオリティーの物を買おうと思ったら、最低でも金貨四十枚くらいするそうだ。日本円にして、四十万円ですよ、四十万円。それが、何と半額! 一生ものだと勧められたし、そりゃ買っちゃうよねー。
俺、お金持ってるし。何より、俺の好みにピッタリだったところが、一番の決め手だ。
大きさは街歩きにちょうどいい感じ。赤土色のレザー製で『Mackey』のロゴデザインがカッコイイ。これで、スーパーの買い物カゴ二つ分くらいの容量があるらしい。すごいな。
「重力軽減までかかってるし……無茶苦茶すぎんだろ、この製作者……!」
よく分からないが、スゴイってことだけは何となく分かった。
このサコッシュ、すぐにでも使いたかったんだが……移住局内では家族の目があるから断念。普通のサコッシュだとごまかしても、やれ「ぜいたく」だの「そんなの要るゥ?」とか言われるのが分かってるからだ。あの二人は、自分たちがお金を使うことには寛大なくせに、俺がお金を使うことは狭量で、すぐに文句を言ってくる。
だから、誰もいない時に買ったし、隠すようにして部屋に持ち帰った。その後は、鞄の中にしまいっぱなしにしていた。
家族と離れた今、ようやく出番が来たというわけだ。今の鞄は外歩き用には大きすぎるしな。
これからは、このサコッシュが街歩きの相棒だ。
さて、お気に入りのサコッシュと共に街歩きをするようになり、あっという間に一カ月が経った。この一か月、チャールズさんのアドバイス通り、遊び歩いた。いや、物価とか店を開きたい場所とか、住みたいところとか、働きたい店探しとか、並行して色々やってたけど。
ご指名者になったのは、栄養学の知識があるからじゃないかとアタリをつけたから、食材を〈鑑定〉しまくったりもしてたしな。で、最初に〈鑑定〉したときからずっと見落としていたっぽい項目があったことに気が付いた。【属性】という項目である。
カヒエは火属性で、その他、水と地、風と空の四つも見かけた。全部で五つある、この属性──正直、だから何? という感じだ。ただまあ、魔法関係っぽいので、経過観察中にもらった魔法の入門書を読み返してみた。そして、発見したのが、
【魔力元素】──魔素と省略される。魔力の元になるものと考えられており、火・水・風・土・空の五つの元素がある。しかし、魔力内における空の働きは不明である。
調理師ギルドに問い合わせてみると──
「魔法使いギルドに問い合わせると、もう少し専門的な話を聞けるかもしれませんが、一般的には魔力の元になるもの。あるいは精霊になりえるもの、とも言われています。ただ、魔力超過症の原因ではないかと考えられているので、気になさる方はとても気になさりますのでご注意を」
まともなスタッフがいて良かったっ! 気にする人はとても気にするが、そういう人達は少数派なのだそうだ。だから、多くの店舗では、言われたら配慮するくらいの対応しかしていないという。
そんなんでいいのか? と思い、移住局にも聞きに行ってみたら、
「今の我々には、いいとも悪いとも言えませんね。食物関係の研究をしている人に問い合わせをすることも可能ですが、いかがなさいますか?」
もちろん、聞いてくださいと俺は即答した。その他、栄養成分表とかあればほしい、ということも伝えてもらった。地球から来た研究者に問い合わせてもらうので、栄養成分表で意味は通じる。成分表がありますように、と祈ったのは言うまでもない。
とりあえず、ご指名者として、今やれそうなことはやったし、〈鑑定〉結果の記録は継続中。現地の人が作った、食材図鑑的なものがあれば良かったんだが、それはないそうだ。残念。
というところで、栄養学関係のことはいったん保留。
次にやるべきは、就職活動とどんな店を開きたいか、より具体化していくことだ。
店のコンセプトは「地球(日本)の料理が食べられる店」だ。地元飯もうまいけど、地球の飯もうまいからな。ぜひ、食べてもらいたい。サブコンセプトは、どんな店を出したいのかが未定なので、まだふわふわした状態。レストラン、大衆食堂、居酒屋、カフェ。飲食店といっても、色々あるからな。
ただまあ、居酒屋はないかなあ、とも思っている。理由は簡単で、酔っ払いの相手をしたくないからだ。アルコールを提供しないまではいかないけどな。なるべく酔っ払いの相手をしなくてすむ方向で営業するつもりだ。
あとはそうだなあ「探索者も立ち寄りやすい店」にもしたい。これはたんに、俺の野次馬根性というか、興味のある業界の人とちょっとでも関わり合いたいという願望の表れだ。
それから、客層は下層中流階級から上層労働者階級を狙う。上流階級と常日頃から関わり合うのはゴメンだ。神経が持たない。あと、労働者階級も下のほうは経済的余裕がないからか、ガラが悪いんだよ。こっちも、神経が持ちそうにない。ある程度の経済的余裕が出てくると、表面的には取り繕うようになって、多少はマシになるみたいだ。
俺はケンカ慣れなんてしてないし、モヤシだからな。ガラの悪い客層はお断りしたいのだ。
しかし、まだギルドに登録しているわけではないため、正規品扱いにはならないらしい。その結果、販売価格がめちゃくちゃ安い。ほぼ原価だという話。
だから、ちょっと時間ができると覗きに行っちゃうんだよな。でもって、お買い得だからって、使い道とか深く考えずに買ってしまう。ポーションもそうなんだけど、琥珀色のガラスペンとか。ペーパーウエイトとか。わんこの形してて、かわいかったんで、つい……。
で、この売店で買った一番のお買い得品は、サコッシュ型のマジックバッグ! 錬金術師を志望している人が作ったらしいが、
「なんで作れるんだよ? あり得ねえだろ、おかしいんじゃねえの?」
スタッフの人が、信じられねえ、バケモノかよ?! と言っていたのをはっきり聞いた。そう思う理由については、聞いてない。というか、話しかけられる雰囲気じゃなかったし。
その彼曰く、外でこのクオリティーの物を買おうと思ったら、最低でも金貨四十枚くらいするそうだ。日本円にして、四十万円ですよ、四十万円。それが、何と半額! 一生ものだと勧められたし、そりゃ買っちゃうよねー。
俺、お金持ってるし。何より、俺の好みにピッタリだったところが、一番の決め手だ。
大きさは街歩きにちょうどいい感じ。赤土色のレザー製で『Mackey』のロゴデザインがカッコイイ。これで、スーパーの買い物カゴ二つ分くらいの容量があるらしい。すごいな。
「重力軽減までかかってるし……無茶苦茶すぎんだろ、この製作者……!」
よく分からないが、スゴイってことだけは何となく分かった。
このサコッシュ、すぐにでも使いたかったんだが……移住局内では家族の目があるから断念。普通のサコッシュだとごまかしても、やれ「ぜいたく」だの「そんなの要るゥ?」とか言われるのが分かってるからだ。あの二人は、自分たちがお金を使うことには寛大なくせに、俺がお金を使うことは狭量で、すぐに文句を言ってくる。
だから、誰もいない時に買ったし、隠すようにして部屋に持ち帰った。その後は、鞄の中にしまいっぱなしにしていた。
家族と離れた今、ようやく出番が来たというわけだ。今の鞄は外歩き用には大きすぎるしな。
これからは、このサコッシュが街歩きの相棒だ。
さて、お気に入りのサコッシュと共に街歩きをするようになり、あっという間に一カ月が経った。この一か月、チャールズさんのアドバイス通り、遊び歩いた。いや、物価とか店を開きたい場所とか、住みたいところとか、働きたい店探しとか、並行して色々やってたけど。
ご指名者になったのは、栄養学の知識があるからじゃないかとアタリをつけたから、食材を〈鑑定〉しまくったりもしてたしな。で、最初に〈鑑定〉したときからずっと見落としていたっぽい項目があったことに気が付いた。【属性】という項目である。
カヒエは火属性で、その他、水と地、風と空の四つも見かけた。全部で五つある、この属性──正直、だから何? という感じだ。ただまあ、魔法関係っぽいので、経過観察中にもらった魔法の入門書を読み返してみた。そして、発見したのが、
【魔力元素】──魔素と省略される。魔力の元になるものと考えられており、火・水・風・土・空の五つの元素がある。しかし、魔力内における空の働きは不明である。
調理師ギルドに問い合わせてみると──
「魔法使いギルドに問い合わせると、もう少し専門的な話を聞けるかもしれませんが、一般的には魔力の元になるもの。あるいは精霊になりえるもの、とも言われています。ただ、魔力超過症の原因ではないかと考えられているので、気になさる方はとても気になさりますのでご注意を」
まともなスタッフがいて良かったっ! 気にする人はとても気にするが、そういう人達は少数派なのだそうだ。だから、多くの店舗では、言われたら配慮するくらいの対応しかしていないという。
そんなんでいいのか? と思い、移住局にも聞きに行ってみたら、
「今の我々には、いいとも悪いとも言えませんね。食物関係の研究をしている人に問い合わせをすることも可能ですが、いかがなさいますか?」
もちろん、聞いてくださいと俺は即答した。その他、栄養成分表とかあればほしい、ということも伝えてもらった。地球から来た研究者に問い合わせてもらうので、栄養成分表で意味は通じる。成分表がありますように、と祈ったのは言うまでもない。
とりあえず、ご指名者として、今やれそうなことはやったし、〈鑑定〉結果の記録は継続中。現地の人が作った、食材図鑑的なものがあれば良かったんだが、それはないそうだ。残念。
というところで、栄養学関係のことはいったん保留。
次にやるべきは、就職活動とどんな店を開きたいか、より具体化していくことだ。
店のコンセプトは「地球(日本)の料理が食べられる店」だ。地元飯もうまいけど、地球の飯もうまいからな。ぜひ、食べてもらいたい。サブコンセプトは、どんな店を出したいのかが未定なので、まだふわふわした状態。レストラン、大衆食堂、居酒屋、カフェ。飲食店といっても、色々あるからな。
ただまあ、居酒屋はないかなあ、とも思っている。理由は簡単で、酔っ払いの相手をしたくないからだ。アルコールを提供しないまではいかないけどな。なるべく酔っ払いの相手をしなくてすむ方向で営業するつもりだ。
あとはそうだなあ「探索者も立ち寄りやすい店」にもしたい。これはたんに、俺の野次馬根性というか、興味のある業界の人とちょっとでも関わり合いたいという願望の表れだ。
それから、客層は下層中流階級から上層労働者階級を狙う。上流階級と常日頃から関わり合うのはゴメンだ。神経が持たない。あと、労働者階級も下のほうは経済的余裕がないからか、ガラが悪いんだよ。こっちも、神経が持ちそうにない。ある程度の経済的余裕が出てくると、表面的には取り繕うようになって、多少はマシになるみたいだ。
俺はケンカ慣れなんてしてないし、モヤシだからな。ガラの悪い客層はお断りしたいのだ。
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