異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中

文字の大きさ
上 下
140 / 161
第四章 勇者パーティー

第十話 シャノン戦

しおりを挟む
 闘技場には右手に剣を持ち、少し緊張しながら立っているシャノン。そして、白金の鎧を着て、大剣を両手で握りしめているガタイのいい男性が居た。因みに彼がこの国の騎士団長だ。

 そして今、戦いの火ぶたが切られた。

「はあっ!」

 シャノンは開始早々素早く距離を詰めると、騎士団長の手首めがけて剣を振った。

 キン!

 だが、上手く大剣によって防がれてしまった。

「〈火球ファイアボール〉!」

 剣を防がれることは想定内だったのか、シャノンは間髪入れずに〈火球ファイアボール〉を騎士団長の顔めがけて撃った。

「はあっ!」

 騎士団長は〈火球ファイアボール〉を大剣で防ぐと、そのままシャノンに切りかかった。

 キン!

 シャノンが騎士団長の大剣を受け止めた。だが、騎士団長の方が力は上だった。

「はあっ!」

 騎士団長はさらに力入れて、シャノンをぶっ飛ばした。

「くっ」

 シャノンは態勢を立て直そうとするが、騎士団長の追撃には間に合わず――

「……負けました」

 大剣がシャノンの首筋に突き付けられたことで、勝負がついた。

「惜しかったな……」

 〈火球ファイアボール〉を撃った後に、さらに追撃をしていれば、もしかしたら勝てたのではないか?と俺は思った。




「はぁ~強かったわ」

 シャノンは満足気な表情で俺の隣に座った。

「負けた割には結構嬉しそうだな」

「そうね。負けちゃったけど、今の戦いは私にとってとてもいい経験になったわ。それに、この試験は勝つことが合格条件ではないからね。流石に騎士団長や宮廷魔法師長に勝つのはこの中でも多くて二、三人ね」

「まあ、確かにな」

 騎士団長はこの国最強の騎士。宮廷魔法師長はこの国最強の魔法師だ。そんな二人が、負けることなんてそうそうないだろう。

「俺はどっちと戦うのかな……」

 俺は笑みを浮かべると、そう呟いた。



 そして、ついに俺の番が来た。
 今の所、騎士団長の戦績は五勝ゼロ敗。宮廷魔法師長の戦績は五勝一敗だ。

「さて、俺の相手は……騎士団長か」

 闘技場に入った俺は、闘技場の中心にいる騎士団長を見て、そう呟いた。

「流石に世界樹聖剣は使わない方がいいよなぁ……」

 あの剣を使ったらすぐに勝負がついてしまうと思った俺は、〈アイテムボックス〉から白輝の剣を取り出した。

「お前がユートか。俺の名はゼウル・ノムスタ。この国の騎士団長だ。受験者の中で一番強いお前の実力、見せてもらうぞ」

 騎士団長――ゼウルさんは威圧感を出しながらそう言った。

「俺の名前はユートです。流石に一番強いは言いすぎだと思いますよ……」

「シャオニンを倒したお前が弱い訳ないだろう」

「何故それを? ウォルフさんには言うなと言っておいたのだが……」

 まさか約束を破ったのか?
 そう思っていると、ゼウルさんが口を開いた。

「かまをかけただけだ。あの周辺でシャオニンを倒せそうなのは数人しかいないからな」

「マジか……」

 ウォルフさんが約束を破っていないことにはほっとした。だが、自分のやらかしに、俺は頭を抱えそうになった。

「まあ、誰にも言うつもりはないから安心しろ。宰相は気づいていると思うがな」

 ゼウルさんはそう言うと大剣を構えた。
 俺も、白輝の剣を構えた。
 そして、戦いの火ぶたが切られた。

「はあっ!」

 今まで先制してこなかったゼウルさんが、初めて先制で攻撃してきた。

「はっ!」

 俺は大剣を白輝の剣で受け止めた。

「力はデフォルトのシャオニンより上っぽいな」

「そうか。そいつは光栄だなっ!」

 ゼウルさんは一気に力を込めてきた。だが、その程度で俺が飛ばされる訳がない。

「はあっ!」

 俺は白輝の剣を振った。それに当たったゼウルさんは、数メートル程後ろに飛ばされた。

「とんでもねー力だな。だが、分かった。お前の本当の剣はそれではないな? 使い慣れてはいるようだが、どこかぎこちない。ついさっきまで別の剣を使っていたような感じだな」

「……すげぇな。完全に図星だよ」

 俺は目を見開くと、そう言った。
 俺はこの試験が始まるまでの五日間も、エルフの里に戻って世界樹聖剣を振っていた。

「じゃあ、見破ったご褒美に見せてくれるよな?」

 ゼウルさんは楽しそうに笑った。

「そうだな。見せてやるよ」

 俺はそう言うと白輝の剣を〈アイテムボックス〉にしまった。そして、そこから〈世界樹聖剣〉を取り出すと、構えた。
====================
作者からのお知らせ

ファンタジー小説大賞の順位は現在53位です!

まだ投票してない方は、上にある黄色いバーナーから投票をしてくださると嬉しいです。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

見習い女神のお手伝いっ!-後払いの報酬だと思っていたチート転生が実は前払いでした-

三石アトラ
ファンタジー
ゲーム制作が趣味のサラリーマン水瀬悠久(みなせ ゆうき)は飛行機事故に巻き込まれて死んでしまい、天界で女神から転生を告げられる。 悠久はチートを要求するが、女神からの返答は 「ねえあなた……私の手伝いをしなさい」 見習い女神と判明したヴェルサロアを一人前の女神にするための手伝いを終え、やっとの思いで狐獣人のユリスとして転生したと思っていた悠久はそこでまだまだ手伝いが終わっていない事を知らされる。 しかも手伝わないと世界が滅びる上に見習いへ逆戻り!? 手伝い継続を了承したユリスはチートを駆使して新たな人生を満喫しながらもヴェルサロアを一人前にするために、そして世界を存続させるために様々な問題に立ち向かって行くのであった。 ※『小説家になろう』様、『カクヨム』様でも連載中です。

俺のチートが凄すぎて、異世界の経済が破綻するかもしれません。

埼玉ポテチ
ファンタジー
不運な事故によって、次元の狭間に落ちた主人公は元の世界に戻る事が出来なくなります。次元の管理人と言う人物(?)から、異世界行きを勧められ、幾つかの能力を貰う事になった。 その能力が思った以上のチート能力で、もしかしたら異世界の経済を破綻させてしまうのでは無いかと戦々恐々としながらも毎日を過ごす主人公であった。 

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。 知らない生物、知らない植物、知らない言語。 何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。 臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。 いや、変わらなければならない。 ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。 彼女は後にこう呼ばれることになる。 「ドラゴンの魔女」と。 ※この物語はフィクションです。 実在の人物・団体とは一切関係ありません。

ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉
ファンタジー
底辺冒険者クロードは転生者である。しかしチートはなにひとつ持たない。だが救いがないわけじゃなかった。その世界にはスキルと呼ばれる力を後天的に手に入れる手段があったのだ。迷宮の宝箱から出るスキルオーブ。それがあればスキル無双できると知ったクロードはチートスキルを手に入れるために、今日も薬草を摘むのであった。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~

てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。 そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。 転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。 そんな冴えない主人公のお話。 -お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

処理中です...