上 下
139 / 161
第四章 勇者パーティー

第九話 勇者パーティー最終試験開始

しおりを挟む
「ひぃ……」

 二人はここでようやく恐怖心が芽生えたようだ。

「さっさと帰るんだな。暗殺とか企むようなら、本気でやるよ」

 俺は最後にくぎを刺しといた。身分とプライドだけが高い奴は、懲りずに何か仕掛けてくると思ったからだ。

「ひ、ひぃ」

 二人はそのまま逃げるように部屋から出て行った。

「はぁ……厄介なことにならないといいんだけどなぁ……」

 俺は深くため息をついた。



 コンコン

 数十分後、ドアがノックされた。

「入っていいですよ」

「失礼します」

 そう言って入って来たのはさっきの騎士だった。

「これより試験が始まります。ただ、その前に陛下からのお言葉がございますので、このままコロシアムの闘技場の中心に行ってください」

「分かった。直ぐに行く」

 俺は立ち上がると、控室を出た。
 そして、そのまま闘技場の中心へと向かって歩き出した。



「……やべっ みんな集まってるじゃん」

 闘技場の中心には、既に十一人全員が集まっていた。つまり、俺が最後の一人と言う訳だ。
 俺はやらかしたな~と思いながら、小走りでみんなの元へ向かった。

(あ、あのくそ貴族もいるじゃん)

 試験を受ける人の中に、さっきのくそ貴族、バールとディールがいた。二人は俺を見ると、睨みつけてから視線をそらした。あ、こいつ絶対反省してないな。
 そんなことを思っていると、コロシアムの観客席の中で一番豪華な席に座っていた国王が立ち上がり、口を開いた。

「私の名は、ダルトニア・フォン・ハラン。ハラン王国の国王だ」

 国王がそう言った瞬間、周りの人たちが一斉に片膝をついて、跪くと、頭を下げた。俺も、みんなと同じように片膝をついて、頭を下げた。

「この中から六人が勇者パーティーに選ばれる。健闘を祈るぞ」

 国王はそう言うと、席に座った。

「では、受験番号一番から順に試験を行います。なので、それ以外の方は控室か、観客席でお待ちください」

 国王の横で経っているドレストさんがそう言うと、みんな一斉に立った。俺は、ちょっとだけ遅れてから立った。何か悔しい……

「……じゃ、俺は観客席に行くか」

 俺はそう呟くと、観客席に向かった。因みに、俺の受験番号は十二番だ。

 トントン

 観客席に向かおうとした瞬間、右肩を優しく叩かれた。振り返ると、そこには防具姿のシャノンが居た。

「シャノンか。五日ぶりだな」

「ええ。緊張するけど、合格できるように頑張りましょう」

 シャノンは太陽のように明るい笑顔でそう言った。

「そうだな。俺も、合格できることを祈っておくよ」

「ふふっ ありがとう。それで、ユートはこれから観客席に行くのよね? なら、一緒に見ましょ」

 美女からのお誘い。昔なら即座に頷いていただろう。だが、今はクリスが居るので、うかつに頷くことが出来ない。

(まあ、シャノンも異性として、俺のことを見ている訳ではなさそうだから、特に問題はないな)

 そう思った俺は、シャノンの提案に頷いた。
 そして、そのまま二階にある観客席へ向かった。




 今、最初の一人目の試験が始まろうとしていた。

「互いに魔法師か……」

 受験者は黒いローブを着て、右手に杖、左手に短剣を持っている男性だ。
 一方、相手は軍服のような服装で、右手には杖を持っている男性だ。

「ええ。ただ、相手は宮廷魔法師長。火、水、風の三属性を使う最強の魔法師よ」

「そうだな……どんな戦いになるのだろうか……」

 俺がそう呟いた俊寛、戦いの火蓋が切って落とされた。

 両者、即座に〈火球ファイアボール〉を無詠唱で撃った。そして、時間を利用して、両者詠唱を始めた。どうやら、あれが魔術師同士の基本の戦い方のようだ。

「〈岩石流星群ロックメテオ〉!」

 すると、先に受験者が詠唱を終え、〈岩石流星群ロックメテオ〉を放った。
 空から降ってくる岩石が宮廷魔法師長に当たると思ったその時――

「〈火炎暴風フレアテンペスト〉!」

 カイルから放たれた炎を帯ぶた竜巻が、空から降ってくる岩石を全て破壊した。そして、そのまま受験者を巻き込み、勝負が終わった。

「なあ、あいつ何の魔道具をつけているんだ?」

 あの魔法をくらって耐えられるはずがないと思った俺は、シャノンにそう聞いた。

「魔道具って言うか、ここの闘技場そのものが巨大な古代遺物アーティファクトなのよね。効果は、範囲内で死んだ人の蘇生と回復よ」

「すごいな……」

 俺は腕を組みながら目を見開いた。

「あ、次は私だから、行ってくるね」

「そうか。頑張れ」

「ありがとう」

 シャノンはニコッと笑うと、この場から離れた。
====================
作者からのお知らせ

ファンタジー小説大賞の順位は現在49位です!

まだ投票してない方は、上にある黄色いバーナーから投票をしてくださると嬉しいです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~

てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。 そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。 転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。 そんな冴えない主人公のお話。 -お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

処理中です...