上 下
125 / 161
第三章 エルフの里

第二十話 死んでいない(たぶん)

しおりを挟む
「ふぅ、久々だな」

 冒険者ギルドに入った俺は、中を見回しながら、そう呟いた。
 ……だがそれにしても注目されるな……まあ、子供を連れて冒険者ギルドに入る人は普通居ないので、仕方のないことだ。なので、特に気にしていない。
 ただ、それでもこういう連中は厄介だと思ってしまう。

「おい! ここはガキの遊び場じゃねーんだよ。目障りだから失せろ」

「お、横にいる女めっちゃ美人じゃん。お前なんかにはもったいないからよこせ」

 もう誰かに絡まれるのにも慣れてきた。まあ、俺自身が舐められやすいのにも関わらず、注目を浴びるような行動をしていることが原因でもあるんだけどな。
 まあ、こいつらは手を出していない。だから、俺はこの二人に最終警告をすることにした。

「俺たちに手を出すのなら、容赦しないよ」

 俺は表情一つ変えずに、警告をした。まあ、こいつらが言葉程度でどうにかなる相手ではないことはよく分かっているが、念の為だ。

「へっ 舐めた口をきくな!}

「本当だぜ。よし、俺はこいつを教育しとくから、お前はその女と、ついでにガキもお持ち帰りしてやれ」

 二人は俺達に敵対した。
 そして、一人が俺に殴りかかってきた。周囲の人が止めようとしたが、間に合いそうにない。
 まあ、安心しろ。俺がこんな奴らに負けるわけがない。さっさと処理するとしよう。

「一生働けない身体にしてやるよ」

 俺はそう言うと、跳んできた拳を掴み、握りつぶした。
 その後、すかさず天下の宝刀腹パン(再生バージョン)を超高速で三十回ほどやって、精神を粉々に砕いた。そして、とどめに〈重力操作グラビティ―〉で全身の骨を死なない程度に砕いた。

「が……あ……」

「が……」

 二人は意識はあるが、目は完全に死んでいた。まあ、俺の大切な人に手を出そうとしたのだ。命を取らなかっただけ、運が良かったと思うがいい。
 そして、その様子を見ていた周りの人たちは、意識はあるが、死んでいる二人を見て、体を震わせていた。まあ、新人冒険者に見える(と言うか、実際そう)俺が、二人のチンピラ系冒険者の心と体をバッキバキに折ったのだから、無理もないだろう。

 そう思っていると、階段を駆け下りてきたウォルフさんが近づいてきた。

「うわぁ……生きてはいるが、目が死んでるな……て、ユートじゃないか! 元気だったか?」

 ウォルフさんはそう言うと、俺の肩をバシバシと叩いた。

「はい。久しぶりです」

 俺はニコッと笑うと、挨拶をした」

「ああ。随分強くなったようだな。俺と互角ってレティウス様から通信石で聞いてたけど、どうやらもう俺より強いようだな」

 ウォルフさんがそう言った瞬間、冒険者ギルド内に衝撃が走った。
 みんな驚愕の視線を俺に向けてくる。下で生きる屍となっている二人でさえも、「相手を間違えた……」と虚ろな表情で呟いていた。

「まあ、それなら恐らくこいつらがお前に絡んできたんだろ? お前全然強そうに見えないからな」

「まあ、俺の姿は舐められやすいですからね」

「ま、取りあえず、俺の部屋に行くぞ。お前の今後のことについて、話があるからな」

 今後とは、恐らく勇者パーティーの件であろう。それにしても、ティリアンからグランに帰ってくる時間が短すぎることに疑問を持ってないよな? あの説明は面倒くさいんだよな……
 俺はそのことに気づかないように祈った。
 その後、衛兵によって運び出された二人を尻目に、俺達は支部長室に向かった。

 支部長室に入った俺たちは、いつものソファに座った。因みにノアは、クリスの膝の上でおとなしくしていた。
 俺の膝の上じゃないのは珍しいなと思っていたら、クリスが「さっきユートが潰した奴らの状態が悲惨すぎて、ノアちゃんが怯えているよ」と小声で言った。まあ、確かにあれはノアの前でやるべきではなかったな。せめて、ノアの目と耳をクリスに塞がせてからやるべきだったと後悔した。
 だが、後悔していても仕方がない。取りあえずウォルフさん話を聞くとしよう。
 そう思った俺は、ウォルフさんと目を合わせた。

「じゃ、話をするぞ。ユートの勇者パーティー推薦は、公爵家が出したこともあり、無事承認された。それで、最終試験は十五日後に王都にある王城で行われる。ほれ、これが試験許可証だ。絶対になくすんじゃねぇぞ」

 ウォルフさんは懐から一枚の封筒を取り出すと、俺に手渡した。
 俺はそれを受け取ると、直ぐに〈アイテムボックス〉にしまった。

「これで話さなければならないことは終わった。それで、聞いたぞ。向こうでは随分と活躍したみたいじゃないか。それで、横にいるのはその時に助けた人だな。こうして見ると、まるで若夫婦みたいだな」

 ウォルフさんはからかうように言った。

「いや、まじの夫婦だぞ」

 からかうように言われたので、俺はウォルフさんを驚かせる為、バシッと言ってやった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

F級テイマーは数の暴力で世界を裏から支配する

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ある日、信号待ちをしていた俺は車にひかれて死んでしまった。 そして、気が付けば異世界で、貴族家の長男に転生していたのだ! 夢にまで見た異世界に胸が躍る――が、5歳の時に受けた”テイム”の祝福が、最低位のF級!? 一縷の望みで測った魔力容量と魔力回路強度も平凡だって!? 勘当されたら、その先どうやって生きてけばいいんだー! と、思っていたのだが…… 「あれ? 俺の”テイム”何かおかしくね?」 ちょくちょくチートな部分があったことで、俺は”強く”なっていくのであった

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜

あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。 その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!? チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双! ※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる

けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ  俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる  だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った

処理中です...