上 下
116 / 161
第三章 エルフの里

第十一話 救出成功!

しおりを挟む
 ――ドゴオオオン……

 思わず耳を塞ぎたくなるほどの大きな破壊音と共に、俺は一つの部屋の中に下り立った。
 その部屋には左側に牢屋があり、その中に三人のエルフが捕らわれていた。そそいて、右側には九人のLV.40代の冒険者らしき男と、一人のLV.52の黒いローブ姿の男がいた。
 冒険者らしき男の中には、女性のエルフに手を出している人もいた。

「死ね。〈重力操作グラビティ―〉!」

 俺は突然天井が崩れ落ちたことで、唖然としている十人の男を〈重力操作グラビティ―〉で潰した。

「これで制圧完了だな」

 俺はそう呟くと、男が着ていた黒いローブを手に取った。

「このローブ。神の涙の連中が着ていたやつと同じものだな」

 赤い雫のマークが、描かれているのをみて、俺はそう判断した。

「じゃあ……一先ずこれを着てくれ」

 俺は不埒者どもに襲われていた女性に、黒いローブを手渡した。もちろん目を背けながら渡した。

「は、はい……ありがとうございます」

 エルフの女性は、恥ずかしがるような声でお礼を言うと、黒いローブを取った。

「ふぅ……あとはこっちだな」

 俺はそう言うと牢屋の方に向かった。

「今助けるぞ。はあっ!」

 俺は世界樹聖剣を横なぎに振った。すると、目の前にあった三つの牢屋の檻は、根元からぽきっと折れた。

「よし、大丈夫か?」

 俺は三人の元に行くと、彼らを拘束していた縄をほどいた。

「ああ、ありがとう」

「助かったよ」

「ありがとう」

 三人は、礼儀正しくお礼を言った。

「まあ、無事でよかったよ。みんな心配してるし、早く帰るぞ」

 俺は早く帰る為に、〈空間操作スペーショナル〉を使うことにした。秘密にしといた方がいい魔法だが、他種族との交流が少ないエルフなら、大丈夫だと思い、使うことにした。

「では、〈空間操作スペーショナル〉!」

 俺はみんなを一か所に集めると、まとめてエルフの里の入り口に転移した。

「な!? ここは!?」

「ど、どういうことだ!?」

 みんな、一瞬でエルフの里に戻ってきたことに、戸惑っているようだった。

「今の移動方法は誰にも言わないでくれ。頼むぞ」

 俺は、誰にも言わないよう、忠告をした。

「「「「分かりました。絶対に言いません」」」」

 四人とも、絶対に言わないと約束してくれた。
 俺の友達とかに、「絶対に言うなよ」と言った次の日には、クラス全員に広まってしまうが、彼らなら大丈夫だろう。彼ら真剣な、嘘偽りのない瞳が、それを証明していた。

(これなら、家族とかの、本当に親しい人にも言わなそうだなぁ……)

 ちゃんと約束を守ってくれる友達が欲しかったなぁ……と思いつつも、俺はエルフの里の方を向いた。

「じゃあ、報告に行くか」

 俺は連れて帰ってきたことを報告する為に、里の中にある屋敷に向かうことにした。




「……ん? 何が起きたんだ!?」

 里の南西部で、激しい戦闘が起きた跡が見えた。そして、そこにはクリス含む、クリスの家族が勢揃いしていた。

「おい! 何があったんだ!」

 俺は〈アイテムボックス〉に世界樹聖剣を入れると、みんなの元に駆け寄った。

「あ、ユート……ごめんなさい……」

 クリスは、俺を見るなり謝った。そして、泣き出してしまった。

「だ、大丈夫か?」

 俺はクリスを落ち着かせる為に、クリスを軽く抱きしめた。俺との身長差がほとんどないせいで、カッコつかないが、まあ、仕方がないだろう。
 そう思っていると、トリエストさんが近づいてきた。

「あ、トリエストさん。攫われていたエルフ四名は無事、救助しました。それで、一体何が起きたのですか? かなりの魔法が放たれたようですけど」

 広範囲にわたって地面はえぐれており、中には五メートルほども、えぐれている場所があった。

「ああ。ついさっきのことだ。この里に、LV.81の人族と、LV.72の人族。そして、LV.40代の人族十人が襲撃してきたんだ。私たちは本気で戦ったのだが、逃げられてしまった」

 トリエストさんはそう言うと、俯いてしまった。

「え? でも追い払うことが出来たのなら、いいんじゃ……あ、もしかして誰かが死んでしまったんですか?」

「いや、怪我人はいるが、みんな〈回復ヒール〉で治すことが出来る傷だった」

「それは良かった……でもだとすれば……まさか、また誰かが攫われたんですか?」

 俺がそう聞くと、今度はクリスが涙目になりながら口を開いた。

「あのね……実は、ノアちゃんが連れ去られたの……」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

転生王子の異世界無双

海凪
ファンタジー
 幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。  特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……  魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!  それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!

1枚の金貨から変わる俺の異世界生活。26個の神の奇跡は俺をチート野郎にしてくれるはず‼

ベルピー
ファンタジー
この世界は5歳で全ての住民が神より神の祝福を得られる。そんな中、カインが授かった祝福は『アルファベット』という見た事も聞いた事もない祝福だった。 祝福を授かった時に現れる光は前代未聞の虹色⁉周りから多いに期待されるが、期待とは裏腹に、どんな祝福かもわからないまま、5年間を何事もなく過ごした。 10歳で冒険者になった時には、『無能の祝福』と呼ばれるようになった。 『無能の祝福』、『最低な能力値』、『最低な成長率』・・・ そんな中、カインは腐る事なく日々冒険者としてできる事を毎日こなしていた。 『おつかいクエスト』、『街の清掃』、『薬草採取』、『荷物持ち』、カインのできる内容は日銭を稼ぐだけで精一杯だったが、そんな時に1枚の金貨を手に入れたカインはそこから人生が変わった。 教会で1枚の金貨を寄付した事が始まりだった。前世の記憶を取り戻したカインは、神の奇跡を手に入れる為にお金を稼ぐ。お金を稼ぐ。お金を稼ぐ。 『戦闘民族君』、『未来の猫ロボット君』、『美少女戦士君』、『天空の城ラ君』、『風の谷君』などなど、様々な神の奇跡を手に入れる為、カインの冒険が始まった。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

処理中です...