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第三章 エルフの里
第十話 緊急事態です!
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「陛下! 緊急事態です!」
食後のお茶を飲みながら、のんびりとしていた時、突然エルフの男性が屋敷の中に入ってくると、そう叫んだ。
「何事だ!」
ドーラさんは立ち上がると、エルフの男性の前に立った。
「はい。実は、森で狩りをしていた数人が、黒いローブの人間によって攫われました」
その言葉に、ついさっきまで和やかに会話していたみんなの顔が、一気に硬くなった。
「何だと!? それは本当なのか!?」
「はい。今は捜索隊を組んでいる所です」
「そうか……今は夜だから、奴らもグランの森があるせいで、そう遠くには行けないはずだ。恐らく、この里周辺に作った隠れ家に身を潜めているだろう。だから、夜が明ける前に、何としても探し出すんだ!」
「分かりました」
エルフの男性は頭を下げると、大急ぎで屋敷の外に向かった。
「なあ、ユート。君も一緒に探しに行ってくれないか? また仲間を失いたくはないんだ」
トリエストさんはそう言うと、頭を下げた。まあ、エルフが攫われたと聞いた瞬間から、俺は、これから何をするべきか決めていた。
「もとよりそのつもりだ。俺が直ぐに助け出してやる」
俺は力強く頷くと、屋敷の外に出た。
「さてと、〈気配隠蔽〉を使いながら走り回れば見つかるかな?」
屋敷の前から、里周辺の森を眺めている俺は、そう呟いた。
「ユート!」
背後から、ノアを抱っこしたクリスが歩み寄ってきた。
「クリスか。どうかしたか?」
「あのね。あの……頑張ってね。私は行っちゃダメって言われてるからね」
クリスは俯くと、悔しそうな、悲しそうな顔をした。きっとクリスも、捜索に行きたいのだろう。ただ、立場のせいで行くことが出来ないようだ。
俺はそんなクリスの頭をぽんぽんと軽く叩いた。
「安心しろ。俺が助け出してやる。だから、クリスはここでみんなを守っていてくれ」
「はい。ありがとうございます。この里は私が守ります」
「ああ。ノア、ちょっと悪い奴らを倒してくるから、ノアはクリスの傍にいるんだぞ」
「うん。パパ。頑張って。ママと一緒に待ってるから」
「ああ。分かっ――て、ん? ノア。いつからクリスのことをママと呼ぶようになったんだ?」
確かにクリスが俺の妻になるのなら、ノアにとって、クリスは母親と言うことになるだろう。ただ、それをノアにどうやって伝えたのかが分からない。流石に、「今日から私がママだよ」と言って、即座にママと呼ぶことはないだ――
「え~とね。ママが、今日からママだよって言ってたから」
「そ、そうか……分かった」
そんな簡単に人の言葉を信じてしまったノアを見て、帰ってきたら、人の言うことは鵜吞みにしないとい聞かせておこうと心に決めた。
「では、行ってくる」
俺はそう言うと、〈身体強化〉と〈気配察知〉を使った。そして、〈アイテムボックス〉から世界樹聖剣を取り出すと、走り出した。
「取りあえず、この里の外周をグルグル回りながら、少しづつ捜索範囲を広げていけばいいか」
俺は、この里周辺を隈なく捜索する為、捜索範囲をだんだん広げる方法を取った。捜索範囲を広げるのに時間はかかるが、闇雲に探して、見落とす方が良くない。多少時間がかかっても、確実に捜索できる方法を取ったのだ。
「まあ、里周辺はエルフのみんながやってくれるだろうし、俺は、里から五百メートル離れた場所から捜索してみるとするか」
俺は気合を入れると、全速力で、里の外周を走り始めた。
「思いのほか見つからないな……」
捜索範囲を少しづつ広げており、今は里から三キロ離れた場所を捜索している。だが、不審な気配は感じなかった――かに思われたが……
「そろそろ見つかってほしいな……ん?」
ここから三百メートル離れた場所から、十数人ほどの人の気配を感じ取った。
「あたりだな」
俺はそう呟くと、追加で〈気配隠蔽〉を使って、相手に気づかれないようにしてから、その場所へと向かった。
(どこだ? ここの真下なのは分かるんだが……)
俺は、今立っている場所の丁度真下に、人がいることが分かった。だが、入り口が隠されているせいで、見つけることは出来ない。だが、それでは意味がない。俺の侵入を防ぎたいのであれば、強度を上げるほかない。
「仕方ないな。力づくで入るか……だが、その前に……」
俺は、〈気配察知〉で人の位置を把握して、捕らえられているエルフが巻き込まれない場所を探した。
「う~ん……真下に十人。動きが激しいことから、こっちは敵かな? それで、あっちにいる三人は動きがないな……恐らく捕らわれたエルフだろうな」
俺はどこに敵がいて、どこにエルフがいるのかを、気配から探ることが出来た。
敵の真上から侵入したいところだが、万が一、そこに別のエルフがいたらまずい。
そう思った俺は、その間にある誰もいないところに落ちることにした。
「では、やるか」
俺はそう言うと、世界樹聖剣を振り上げた。
「はあっ!」
そして、思いっきり振り下ろした。
食後のお茶を飲みながら、のんびりとしていた時、突然エルフの男性が屋敷の中に入ってくると、そう叫んだ。
「何事だ!」
ドーラさんは立ち上がると、エルフの男性の前に立った。
「はい。実は、森で狩りをしていた数人が、黒いローブの人間によって攫われました」
その言葉に、ついさっきまで和やかに会話していたみんなの顔が、一気に硬くなった。
「何だと!? それは本当なのか!?」
「はい。今は捜索隊を組んでいる所です」
「そうか……今は夜だから、奴らもグランの森があるせいで、そう遠くには行けないはずだ。恐らく、この里周辺に作った隠れ家に身を潜めているだろう。だから、夜が明ける前に、何としても探し出すんだ!」
「分かりました」
エルフの男性は頭を下げると、大急ぎで屋敷の外に向かった。
「なあ、ユート。君も一緒に探しに行ってくれないか? また仲間を失いたくはないんだ」
トリエストさんはそう言うと、頭を下げた。まあ、エルフが攫われたと聞いた瞬間から、俺は、これから何をするべきか決めていた。
「もとよりそのつもりだ。俺が直ぐに助け出してやる」
俺は力強く頷くと、屋敷の外に出た。
「さてと、〈気配隠蔽〉を使いながら走り回れば見つかるかな?」
屋敷の前から、里周辺の森を眺めている俺は、そう呟いた。
「ユート!」
背後から、ノアを抱っこしたクリスが歩み寄ってきた。
「クリスか。どうかしたか?」
「あのね。あの……頑張ってね。私は行っちゃダメって言われてるからね」
クリスは俯くと、悔しそうな、悲しそうな顔をした。きっとクリスも、捜索に行きたいのだろう。ただ、立場のせいで行くことが出来ないようだ。
俺はそんなクリスの頭をぽんぽんと軽く叩いた。
「安心しろ。俺が助け出してやる。だから、クリスはここでみんなを守っていてくれ」
「はい。ありがとうございます。この里は私が守ります」
「ああ。ノア、ちょっと悪い奴らを倒してくるから、ノアはクリスの傍にいるんだぞ」
「うん。パパ。頑張って。ママと一緒に待ってるから」
「ああ。分かっ――て、ん? ノア。いつからクリスのことをママと呼ぶようになったんだ?」
確かにクリスが俺の妻になるのなら、ノアにとって、クリスは母親と言うことになるだろう。ただ、それをノアにどうやって伝えたのかが分からない。流石に、「今日から私がママだよ」と言って、即座にママと呼ぶことはないだ――
「え~とね。ママが、今日からママだよって言ってたから」
「そ、そうか……分かった」
そんな簡単に人の言葉を信じてしまったノアを見て、帰ってきたら、人の言うことは鵜吞みにしないとい聞かせておこうと心に決めた。
「では、行ってくる」
俺はそう言うと、〈身体強化〉と〈気配察知〉を使った。そして、〈アイテムボックス〉から世界樹聖剣を取り出すと、走り出した。
「取りあえず、この里の外周をグルグル回りながら、少しづつ捜索範囲を広げていけばいいか」
俺は、この里周辺を隈なく捜索する為、捜索範囲をだんだん広げる方法を取った。捜索範囲を広げるのに時間はかかるが、闇雲に探して、見落とす方が良くない。多少時間がかかっても、確実に捜索できる方法を取ったのだ。
「まあ、里周辺はエルフのみんながやってくれるだろうし、俺は、里から五百メートル離れた場所から捜索してみるとするか」
俺は気合を入れると、全速力で、里の外周を走り始めた。
「思いのほか見つからないな……」
捜索範囲を少しづつ広げており、今は里から三キロ離れた場所を捜索している。だが、不審な気配は感じなかった――かに思われたが……
「そろそろ見つかってほしいな……ん?」
ここから三百メートル離れた場所から、十数人ほどの人の気配を感じ取った。
「あたりだな」
俺はそう呟くと、追加で〈気配隠蔽〉を使って、相手に気づかれないようにしてから、その場所へと向かった。
(どこだ? ここの真下なのは分かるんだが……)
俺は、今立っている場所の丁度真下に、人がいることが分かった。だが、入り口が隠されているせいで、見つけることは出来ない。だが、それでは意味がない。俺の侵入を防ぎたいのであれば、強度を上げるほかない。
「仕方ないな。力づくで入るか……だが、その前に……」
俺は、〈気配察知〉で人の位置を把握して、捕らえられているエルフが巻き込まれない場所を探した。
「う~ん……真下に十人。動きが激しいことから、こっちは敵かな? それで、あっちにいる三人は動きがないな……恐らく捕らわれたエルフだろうな」
俺はどこに敵がいて、どこにエルフがいるのかを、気配から探ることが出来た。
敵の真上から侵入したいところだが、万が一、そこに別のエルフがいたらまずい。
そう思った俺は、その間にある誰もいないところに落ちることにした。
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そして、思いっきり振り下ろした。
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