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第三章 エルフの里
第八話 テンション高ぇな
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「と言うわけで、クリスとユートさんは夫婦になりました~ はくしゅはくしゅ~」
やけにテンションが高くなったマリアが、さっきまでの少し重い感じの雰囲気を吹き飛ばした。
「はぁ……空気を読みなさいと言いたいところだけど、あの雰囲気を吹き飛ばしてくれたことには感謝するわ。
エルザさんは頭に手を当てながらため息をついたが、感謝の言葉を口にした。
「まあ、おめでとう」
「あ、ああ」
「え、ええ……」
「ああ、おめでとう」
他の四人は、苦笑いしながらも、祝ってくれた。
「締まらないな~」
俺は腰に両手を当てながら、ため息をついた。何と言うか……何だかんだ元気な家族だなぁと思った。きっと、クリスが戻ってきたことで、みんなの気持ちにも余裕が生まれたのだろう。
「何かごめんね。うちの家族……」
クリスは俺の隣に来ると、ため息をついた。
「てかさ、結婚式っていつやるんだ?」
俺がそう問いかけると、みんな頭の上にハテナマークを浮かべた。みんな、「何それ?」とでも言いたげな表情をしている。その後、十秒ほどしてから、トリエストさんが手をポンと叩いて、「ああ、あれか」と言った。
「そういう文化はこの里にはないんだよね。里のみんなへの報告と、互いの身内や友人と軽い食事会をするぐらいなんだ。別に君が望むのであれば、人族の式に倣って盛大にやるよ」
「いえ、大丈夫です。何と言うか……盛大に祝われるのは、あまり好きではないんですよね。居心地が悪くなるというか……」
トリエストさんが気遣ってくれたが、盛大に祝われることがあまり好きではない俺は、エルフの里の慣習に従うことにした。それに、結婚式ってめっちゃ金がかかるって言うからね。俺の為だけにみんなが苦労するのは避けたかった。
「では、今晩早速食事会、と言いたいところだが、君の家族や友人はここに来れるのか?」
その質問を聞いた時、俺は家族や友人のことを思い出して、思わず涙が一粒こぼれた。
(今までその辺のことはなるべく思い出さないようにしてきたんだけどなぁ……)
また会うことが出来ると分かってはいるが、それでも何か月もの間、会えていないとなると、流石に恋しく思ってしまう。だから、考えないようにしてきた。
いきなり泣き出した俺を見て、みんなこう思った。「ユートの家族や友人はもうこの世にはいないのか……」と。
「す、すまない。嫌なことを思い出させてしまった」
トリエストさんはおろおろしながら、謝罪した。いや、別に謝る必要はないんだけどな。
そんなことを思っていると、クリスは俺を正面から抱きしめた。
その瞬間、俺の涙は止まった。だが、代わりに俺の顔は真っ赤になった
「お、流石はクリスだな」
「妻の力は偉大ってな」
トリエストさんとドーラさんは、一瞬で泣き止ませたクリスを見て、感心していた。いや、いきなり美女に抱き着かれたら泣くことを放棄して恥ずかしがるだろ!いきなり抱き着かれたらこうなるだろ!と、心の中で思った。
「いきなり泣いてしまってすみません。両親や友人はまだ生きてますよ。まあ、どこにいるのかは分からないので、呼ぶ必要はありませんよ」
「そ、そうだったのか。まあ……うん」
みんな勘違いしていたことに頭を搔いて、笑った。
「まあ、クリスがしっかり妻をやっててほっとしたよ」
ドーラさんは腕を組みながら、しみじみと頷いていた。そして、その言葉を聞いたクリスは、顔を真っ赤にさせながら俯いた。
「では、食事会にするか」
使用人が準備を行い、日が沈んだところでようやく食事の準備が整った。
一つの大きな円テーブルに、俺、クリス、ドーラ、エルザ、トリエスト、ディーネ、レイン、ノアの順番で座り、食事会が開催されることとなった。
食事は、里で栽培している野菜と、里の周辺で取れる食用の植物をフル活用して作ったさっぱり系のスープや、クリスがついさっき狩ってきたミノタウロスと、俺がついさっき狩ってきたブラックウルフの肉を使ったサイコロステーキだ。
何でもこの里では、結婚の際の食事会では、互いに食料を一品取ってくることが慣習になっているらしい。俺は、少しでもいい魔物を狙う為に、〈空間操作〉でわざわざ夜のグランの森に行き、そこで食べられそうな魔物の中で一番強そうなやつを狩った。
まあ、調理人に首が綺麗になくなっているブラックウルフを見せたら、全員腰を抜かして驚いていた。何でそんなに驚いているのか聞いてみたら、「Aランクの魔物を一撃で倒せるなんておかしいだろ!」と言われた。そう言えば、こいつは世間一般ではAランクの冒険者が何とか倒せるレベルの強さを持っている。そんな魔物をサクッと討伐したのなら、この反応でも仕方がないか……
料理人が言うには、ブラックウルフの肉はかなり美味しいとのことだ。美味しさの基準で言えば、オーク・キングと同等というのだから、相当なものだ。
まあ、そんな事件がありながらも、料理人さんは手馴れた手つきで料理を作ってくれた。
そして、今に至ると言う訳だ。
やけにテンションが高くなったマリアが、さっきまでの少し重い感じの雰囲気を吹き飛ばした。
「はぁ……空気を読みなさいと言いたいところだけど、あの雰囲気を吹き飛ばしてくれたことには感謝するわ。
エルザさんは頭に手を当てながらため息をついたが、感謝の言葉を口にした。
「まあ、おめでとう」
「あ、ああ」
「え、ええ……」
「ああ、おめでとう」
他の四人は、苦笑いしながらも、祝ってくれた。
「締まらないな~」
俺は腰に両手を当てながら、ため息をついた。何と言うか……何だかんだ元気な家族だなぁと思った。きっと、クリスが戻ってきたことで、みんなの気持ちにも余裕が生まれたのだろう。
「何かごめんね。うちの家族……」
クリスは俺の隣に来ると、ため息をついた。
「てかさ、結婚式っていつやるんだ?」
俺がそう問いかけると、みんな頭の上にハテナマークを浮かべた。みんな、「何それ?」とでも言いたげな表情をしている。その後、十秒ほどしてから、トリエストさんが手をポンと叩いて、「ああ、あれか」と言った。
「そういう文化はこの里にはないんだよね。里のみんなへの報告と、互いの身内や友人と軽い食事会をするぐらいなんだ。別に君が望むのであれば、人族の式に倣って盛大にやるよ」
「いえ、大丈夫です。何と言うか……盛大に祝われるのは、あまり好きではないんですよね。居心地が悪くなるというか……」
トリエストさんが気遣ってくれたが、盛大に祝われることがあまり好きではない俺は、エルフの里の慣習に従うことにした。それに、結婚式ってめっちゃ金がかかるって言うからね。俺の為だけにみんなが苦労するのは避けたかった。
「では、今晩早速食事会、と言いたいところだが、君の家族や友人はここに来れるのか?」
その質問を聞いた時、俺は家族や友人のことを思い出して、思わず涙が一粒こぼれた。
(今までその辺のことはなるべく思い出さないようにしてきたんだけどなぁ……)
また会うことが出来ると分かってはいるが、それでも何か月もの間、会えていないとなると、流石に恋しく思ってしまう。だから、考えないようにしてきた。
いきなり泣き出した俺を見て、みんなこう思った。「ユートの家族や友人はもうこの世にはいないのか……」と。
「す、すまない。嫌なことを思い出させてしまった」
トリエストさんはおろおろしながら、謝罪した。いや、別に謝る必要はないんだけどな。
そんなことを思っていると、クリスは俺を正面から抱きしめた。
その瞬間、俺の涙は止まった。だが、代わりに俺の顔は真っ赤になった
「お、流石はクリスだな」
「妻の力は偉大ってな」
トリエストさんとドーラさんは、一瞬で泣き止ませたクリスを見て、感心していた。いや、いきなり美女に抱き着かれたら泣くことを放棄して恥ずかしがるだろ!いきなり抱き着かれたらこうなるだろ!と、心の中で思った。
「いきなり泣いてしまってすみません。両親や友人はまだ生きてますよ。まあ、どこにいるのかは分からないので、呼ぶ必要はありませんよ」
「そ、そうだったのか。まあ……うん」
みんな勘違いしていたことに頭を搔いて、笑った。
「まあ、クリスがしっかり妻をやっててほっとしたよ」
ドーラさんは腕を組みながら、しみじみと頷いていた。そして、その言葉を聞いたクリスは、顔を真っ赤にさせながら俯いた。
「では、食事会にするか」
使用人が準備を行い、日が沈んだところでようやく食事の準備が整った。
一つの大きな円テーブルに、俺、クリス、ドーラ、エルザ、トリエスト、ディーネ、レイン、ノアの順番で座り、食事会が開催されることとなった。
食事は、里で栽培している野菜と、里の周辺で取れる食用の植物をフル活用して作ったさっぱり系のスープや、クリスがついさっき狩ってきたミノタウロスと、俺がついさっき狩ってきたブラックウルフの肉を使ったサイコロステーキだ。
何でもこの里では、結婚の際の食事会では、互いに食料を一品取ってくることが慣習になっているらしい。俺は、少しでもいい魔物を狙う為に、〈空間操作〉でわざわざ夜のグランの森に行き、そこで食べられそうな魔物の中で一番強そうなやつを狩った。
まあ、調理人に首が綺麗になくなっているブラックウルフを見せたら、全員腰を抜かして驚いていた。何でそんなに驚いているのか聞いてみたら、「Aランクの魔物を一撃で倒せるなんておかしいだろ!」と言われた。そう言えば、こいつは世間一般ではAランクの冒険者が何とか倒せるレベルの強さを持っている。そんな魔物をサクッと討伐したのなら、この反応でも仕方がないか……
料理人が言うには、ブラックウルフの肉はかなり美味しいとのことだ。美味しさの基準で言えば、オーク・キングと同等というのだから、相当なものだ。
まあ、そんな事件がありながらも、料理人さんは手馴れた手つきで料理を作ってくれた。
そして、今に至ると言う訳だ。
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