異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中

文字の大きさ
上 下
113 / 161
第三章 エルフの里

第八話 テンション高ぇな

しおりを挟む
「と言うわけで、クリスとユートさんは夫婦になりました~ はくしゅはくしゅ~」

 やけにテンションが高くなったマリアが、さっきまでの少し重い感じの雰囲気を吹き飛ばした。

「はぁ……空気を読みなさいと言いたいところだけど、あの雰囲気を吹き飛ばしてくれたことには感謝するわ。

 エルザさんは頭に手を当てながらため息をついたが、感謝の言葉を口にした。

「まあ、おめでとう」

「あ、ああ」

「え、ええ……」

「ああ、おめでとう」

 他の四人は、苦笑いしながらも、祝ってくれた。

「締まらないな~」

 俺は腰に両手を当てながら、ため息をついた。何と言うか……何だかんだ元気な家族だなぁと思った。きっと、クリスが戻ってきたことで、みんなの気持ちにも余裕が生まれたのだろう。

「何かごめんね。うちの家族……」

 クリスは俺の隣に来ると、ため息をついた。

「てかさ、結婚式っていつやるんだ?」

 俺がそう問いかけると、みんな頭の上にハテナマークを浮かべた。みんな、「何それ?」とでも言いたげな表情をしている。その後、十秒ほどしてから、トリエストさんが手をポンと叩いて、「ああ、あれか」と言った。

「そういう文化はこの里にはないんだよね。里のみんなへの報告と、互いの身内や友人と軽い食事会をするぐらいなんだ。別に君が望むのであれば、人族の式に倣って盛大にやるよ」

「いえ、大丈夫です。何と言うか……盛大に祝われるのは、あまり好きではないんですよね。居心地が悪くなるというか……」

 トリエストさんが気遣ってくれたが、盛大に祝われることがあまり好きではない俺は、エルフの里の慣習に従うことにした。それに、結婚式ってめっちゃ金がかかるって言うからね。俺の為だけにみんなが苦労するのは避けたかった。

「では、今晩早速食事会、と言いたいところだが、君の家族や友人はここに来れるのか?」

 その質問を聞いた時、俺は家族や友人のことを思い出して、思わず涙が一粒こぼれた。

(今までその辺のことはなるべく思い出さないようにしてきたんだけどなぁ……)

 また会うことが出来ると分かってはいるが、それでも何か月もの間、会えていないとなると、流石に恋しく思ってしまう。だから、考えないようにしてきた。

 いきなり泣き出した俺を見て、みんなこう思った。「ユートの家族や友人はもうこの世にはいないのか……」と。

「す、すまない。嫌なことを思い出させてしまった」

 トリエストさんはおろおろしながら、謝罪した。いや、別に謝る必要はないんだけどな。
 そんなことを思っていると、クリスは俺を正面から抱きしめた。
 その瞬間、俺の涙は止まった。だが、代わりに俺の顔は真っ赤になった

「お、流石はクリスだな」

「妻の力は偉大ってな」

 トリエストさんとドーラさんは、一瞬で泣き止ませたクリスを見て、感心していた。いや、いきなり美女に抱き着かれたら泣くことを放棄して恥ずかしがるだろ!いきなり抱き着かれたらこうなるだろ!と、心の中で思った。

「いきなり泣いてしまってすみません。両親や友人はまだ生きてますよ。まあ、どこにいるのかは分からないので、呼ぶ必要はありませんよ」

「そ、そうだったのか。まあ……うん」

 みんな勘違いしていたことに頭を搔いて、笑った。

「まあ、クリスがしっかり妻をやっててほっとしたよ」

 ドーラさんは腕を組みながら、しみじみと頷いていた。そして、その言葉を聞いたクリスは、顔を真っ赤にさせながら俯いた。




「では、食事会にするか」

 使用人が準備を行い、日が沈んだところでようやく食事の準備が整った。
 一つの大きな円テーブルに、俺、クリス、ドーラ、エルザ、トリエスト、ディーネ、レイン、ノアの順番で座り、食事会が開催されることとなった。

 食事は、里で栽培している野菜と、里の周辺で取れる食用の植物をフル活用して作ったさっぱり系のスープや、クリスがついさっき狩ってきたミノタウロスと、俺がついさっき狩ってきたブラックウルフの肉を使ったサイコロステーキだ。

 何でもこの里では、結婚の際の食事会では、互いに食料を一品取ってくることが慣習になっているらしい。俺は、少しでもいい魔物を狙う為に、〈空間操作スペーショナル〉でわざわざ夜のグランの森に行き、そこで食べられそうな魔物の中で一番強そうなやつを狩った。
 まあ、調理人に首が綺麗になくなっているブラックウルフを見せたら、全員腰を抜かして驚いていた。何でそんなに驚いているのか聞いてみたら、「Aランクの魔物を一撃で倒せるなんておかしいだろ!」と言われた。そう言えば、こいつは世間一般ではAランクの冒険者が何とか倒せるレベルの強さを持っている。そんな魔物をサクッと討伐したのなら、この反応でも仕方がないか……

 料理人が言うには、ブラックウルフの肉はかなり美味しいとのことだ。美味しさの基準で言えば、オーク・キングと同等というのだから、相当なものだ。

 まあ、そんな事件がありながらも、料理人さんは手馴れた手つきで料理を作ってくれた。

 そして、今に至ると言う訳だ。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

見習い女神のお手伝いっ!-後払いの報酬だと思っていたチート転生が実は前払いでした-

三石アトラ
ファンタジー
ゲーム制作が趣味のサラリーマン水瀬悠久(みなせ ゆうき)は飛行機事故に巻き込まれて死んでしまい、天界で女神から転生を告げられる。 悠久はチートを要求するが、女神からの返答は 「ねえあなた……私の手伝いをしなさい」 見習い女神と判明したヴェルサロアを一人前の女神にするための手伝いを終え、やっとの思いで狐獣人のユリスとして転生したと思っていた悠久はそこでまだまだ手伝いが終わっていない事を知らされる。 しかも手伝わないと世界が滅びる上に見習いへ逆戻り!? 手伝い継続を了承したユリスはチートを駆使して新たな人生を満喫しながらもヴェルサロアを一人前にするために、そして世界を存続させるために様々な問題に立ち向かって行くのであった。 ※『小説家になろう』様、『カクヨム』様でも連載中です。

俺のチートが凄すぎて、異世界の経済が破綻するかもしれません。

埼玉ポテチ
ファンタジー
不運な事故によって、次元の狭間に落ちた主人公は元の世界に戻る事が出来なくなります。次元の管理人と言う人物(?)から、異世界行きを勧められ、幾つかの能力を貰う事になった。 その能力が思った以上のチート能力で、もしかしたら異世界の経済を破綻させてしまうのでは無いかと戦々恐々としながらも毎日を過ごす主人公であった。 

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。 知らない生物、知らない植物、知らない言語。 何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。 臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。 いや、変わらなければならない。 ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。 彼女は後にこう呼ばれることになる。 「ドラゴンの魔女」と。 ※この物語はフィクションです。 実在の人物・団体とは一切関係ありません。

ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉
ファンタジー
底辺冒険者クロードは転生者である。しかしチートはなにひとつ持たない。だが救いがないわけじゃなかった。その世界にはスキルと呼ばれる力を後天的に手に入れる手段があったのだ。迷宮の宝箱から出るスキルオーブ。それがあればスキル無双できると知ったクロードはチートスキルを手に入れるために、今日も薬草を摘むのであった。

スキル『日常動作』は最強です ゴミスキルとバカにされましたが、実は超万能でした

メイ(旧名:Mei)
ファンタジー
この度、書籍化が決定しました! 1巻 2020年9月20日〜 2巻 2021年10月20日〜 3巻 2022年6月22日〜 これもご愛読くださっている皆様のお蔭です! ありがとうございます! 発売日に関しましては9月下旬頃になります。 題名も多少変わりましたのでここに旧題を書いておきます。 旧題:スキル『日常動作』は最強です~ゴミスキルだと思ったら、実は超万能スキルでした~ なお、書籍の方ではweb版の設定を変更したところもありますので詳しくは設定資料の章をご覧ください(※こちらについては、まだあげていませんので、のちほどあげます)。 ────────────────────────────  主人公レクスは、12歳の誕生日を迎えた。12歳の誕生日を迎えた子供は適正検査を受けることになっていた。ステータスとは、自分の一生を左右するほど大切であり、それによって将来がほとんど決められてしまうのだ。  とうとうレクスの順番が来て、適正検査を受けたが、ステータスは子供の中で一番最弱、職業は無職、スキルは『日常動作』たった一つのみ。挙げ句、レクスははした金を持たされ、村から追放されてしまう。  これは、貧弱と蔑まれた少年が最強へと成り上がる物語。 ※カクヨム、なろうでも投稿しています。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~

てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。 そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。 転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。 そんな冴えない主人公のお話。 -お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-

処理中です...