異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

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第二章 ダンジョン都市ティリアン

第三十七話 またバレた?

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「今回は影の支配者シャドールーラーのアジト、及び神の涙のアジトの殲滅。そして衛兵たちの救出。そのことに、改めて感謝する」

 レティウス様はそう言うと、深く頭を下げた。

「それでね。君のような優秀な人材は、是非、私に仕えるべきだと思うんだ。もちろん給料は高くする」

 俺はラルティ様の時と同様に、レティウス様からも仕えてほしいと言われてしまった。レティウス様が出す硬い雰囲気のせいで、ラルティ様と比べると、断りにくいオーラを大量に出しているように見える。だがそれでも、俺の考えは決まっている。

「お気持ちは大変うれしいのですが、俺は自由に行きたいと思う人間です。なので、誰にも仕えないと決めているのです」

 俺は丁寧な口調で、レティウス様からの誘いを断った。

「ほう。私は公爵だ。断ったら、色々と不都合があると考えたりしないのかな?」

 レティウス様は少し目つきを鋭くさせながら、そう言った。
 この時、俺はレティウス様の言葉がマジ本気の脅迫だと思い、思わず強気な行動に出てしまった。
 もし、俺がもう少し冷静になれていれば、レティウス様の言葉は、ただ、俺の決意の強さを知りたかっただけだと気づけたであろうに……

「そうですか……もし、俺に不都合なことがあったら、あなたの身にも、不都合なことが起きると断言しましょう。これでも俺はそれなりに強いですからね。勝てるとは思わないでください」

 俺は、まるで、宣戦布告でもするかのような目つきで、レティウス様を見つめた。
 すると、レティウス様は一瞬驚いたような顔になった後に、表情を緩めた。

「おっと、すまない。試していただけだ。まあ、私の全戦力をもってしても、君に勝てないことは既に分かっている。そこにいるセバスが教えてくれたんだ」

「セバス?」

「ああ、君をここに案内した執事のことだ。彼はLV.73と、私が持つ戦力では二番目に高い。そして、彼は、LV.9の〈鑑定〉のスキルを持っている。そんな彼が、ステータス隠蔽を受けた感覚もないのに、ステータスを一切見ることが出来なかった。つまり、君はLV.88はあるということになる。そんな国家戦力級の君と敵対するなど、考えたくもない」

 レティウス様はそう言うと、紅茶を飲んだ。

(昨日もステータスがバレかけたよな……)

 まあ、LV.130がバレたわけでもないし、アジトを一人で滅ぼした時点で、ステータスを見ずともかなり強いということはみんな分かっている為、この程度なら、バレても問題ないだろう。というか、捕らえられていた衛兵が、俺の〈重力操作グラビティー〉を見られているかどうかの方が重要なことだ。まあ、衛兵たちは縛られ、口も塞がれた状態で顔を下に向けられていた為、見られてはいない筈だ。

 そんなことを考えていると、ティーカップを机の上に置いたレティウス様が、口を開いた。

「仕えないのなら、代わりに君を勇者パーティーに推薦してもいいか?」

「ゆ、勇者パーティー!?」

「ああ。実はまだ国の上層部にしか流れていない情報なのだが、魔王がおよそ十ヶ月後に、復活することが判明した。その為、勇者を召喚するのだが、勇者一人で魔王討伐に行くと、魔王の手下のせいで、勇者が魔王一人に全力を出せない可能性が高い。そこで、君のような強い人を、世界中から数人集めることになっているんだ。そして、君の実力なら必ず入ることが出来るだろう」

 それを聞いた時、俺はちょうどいいと思った。何故なら、勇者パーティーに入れば、神様からのお願いである、勇者の手助けがしやすくなる。

「分かりました。勇者パーティーにはなりたいですね。ところで、勇者はもう召喚されているのですか?」

「お、やってくれるのか。ありがとう。それで、勇者はまだ召喚されていない。だが、あと一ヶ月ほどで、召喚するつもりだ」

「そうですか……分かりました」

 あと一ヶ月なら、エルフの里に行く時間を十分に確保出来るだろう。俺はそのことに、息を吐きながら安堵した。

「これで私からの話は以上だ。勇者パーティー関連で連絡をする時は、冒険者ギルドを通して伝えるつもりだから、冒険者ギルドには出来るだけ顔を出すようにしてくれると助かる」

「分かりました」

 俺は頷くと、出された紅茶を一気飲みした。
 その後、セバスに案内されて、俺は領主館の外に出た。

「じゃ、クリスの所に行くか」

 勲章式が終わった後に、衛兵の詰所で保護されているクリスと合流し、エルフの里に向かうという予定を、クリスと共に立ててある。
 俺は、ノアと手を繋ぎながら、衛兵の詰所へ向かった。



「ん? ライザとニナか」

 俺は衛兵の詰所の中で、ライザとニナに会った。

「ああ、サルトはもう処刑されたらしい。最後に会って、話がしたかったんだけどな……」

 ライザが、暗い雰囲気を出しながらそう言った。

「ええ、サルトは初めて出会った時から敵だった。でも、ともに冒険者として活動した時のサルトの笑顔は、嘘ではなかった。だからこそ、話がしたかったのに……」

 ニナも、暗い雰囲気を出しながら、俯いた。

「ねぇ、パパ。お兄ちゃんとお姉ちゃん。具合悪そうだよ」

 ノアが、ライザとニナを気にかけるようにして言った。

「ノアちゃんか。お、お兄ちゃんは大丈夫だよ」

「ええ、私も元気よ」

 二人はしゃがみ込むと、ノアの頭を優しく撫でた。

「うん、じゃあ、ずっと元気でいてね」

「ああ……まさか子供に元気づけられる日が来るとは思わなかったな」

「本当にね……」

 二人は、ノアのお陰で、少し元気が出たようだ。
 やはり、子供の慰めの言葉は、最強の精神安定剤のようだ。

「それなら良かった。じゃ、元気でな」

「ああ、ユートも元気でな」

「ええ、また会いましょうね」

 こうして、ライザとニナと会い、分かれた俺は、クリスの元に向かった。
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