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第二章 ダンジョン都市ティリアン
第三十四話 ハイエルフ!?
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「さてと……まだいたのか」
目の前にあったのは一つの牢屋だ。だが、さっきの牢屋とは違い、中にはそれなりの居住スペースがあった。そして、その中には足枷をつけられたロングヘアーの金髪の女性がいた。
今すぐにでも助け出そうと思ったが、その牢屋の前には四人の黒いローブを着た男がいた。
「ちっ見つかったか。おい! 動くな! この女がどうなってもいいのか!」
黒いローブの男の一人がそう叫ぶと、牢屋の中にいる女性に剣を突き付けた。
まあ、俺は〈再生〉が使える為、最悪蘇生すればいいのだが、蘇生を前提とした動きはあまりとりたくない。
「そうか……〈重力操作〉!」
俺は〈重力操作〉でこいつらにかかる重力を千倍にして、潰した。
「ふぅ……この女性は何でこんなところに一人で監禁されているんだ?」
ここまで厳重に監禁されている理由がよく分からない。だが、今はそれについて考えている暇はない。
「おい! 大丈夫か?」
俺は牢屋を素手で破壊しながら言うと、足枷も力業で破壊した。
「……助けに来てくれたの?」
金髪の十七、八歳ほどに見える女性は、エメラルドグリーンの瞳で俺のことを見つめながら言った。
「ああ、ここにいる神の涙の連中は全員倒した。だから安心していいぞ」
俺はしゃがみ込み、視線を同じ高さにすると、安心させるように、優しい声音で言った。
すると、女性は泣き出した。
「あ、ありがとうございます……うう……本当に……ありがと……」
女性は泣きながらそう言うと、俺の胸に顔をうずめた。
(う……まあ、これは泣き止むまで待つのがよさそうだな……)
俺はいきなり抱き着かれたことに顔を真っ赤にさせつつも、暫くの間、胸を貸してあげることにした。
「ふぅ……ありがとうございます。私の名前はクリスティーナ。長いので、クリスと呼んでください。私はエルフの祖、ハイエルフという種族でして、色々ありまして、ここに監禁されていました」
女性――クリスさんはそう言うと、礼儀正しく頭を下げた。
(ん? てかハイエルフ!?)
俺は即座に耳を見ると、耳の先が少しだけ尖っているのが見えた。
それにしてもファンタジーの代名詞ともいえるエルフって思ったよりも耳がとがっていないんだなぁ……ちょっと意外だった。
「ああ、俺の名前はユートだ。一先ず上に行くぞ」
「分かりました」
こうして、無事、神の涙に捕らえられた人全員を救出した俺は、地上に戻った。
「――――ということがありました」
「……そうか」
衛兵の詰所に戻った俺は、クリスさんを衛兵に任せると、ちょうど戻ってきたゲリオスさんに、何があったのかを説明した。
「ユートが強くて助かったな。ありがとう。礼金はたっぷり渡すよう、隊長に言っておくから安心しろ。あと、明日領主館で勲章式があるのだが、それに出てもらいたいんだ」
「あ~勲章式はちょっと辞退したいですね」
勲章式なんてめんどくさそうな感じがプンプンする。
「いや、それは悪いけど無理だなあ……それをすると俺達が色々と責められるんだ。『ちゃんと礼を言えよ!』て、事情を知らないやつらから言われるのは嫌なんだ」
ゲリオスさんは「はあっ」と、深くため息をついた。
「……分かりました。だけど、あまり大げさなものにはしないでくださいね」
「ああ、元よりそのつもりだ」
俺はその言葉に安堵すると、ノアがいる部屋に向かった。
「ノア、帰ってきたぞ」
「あ、パパ~」
ノアは俺を見つけると、ステテテーと走り、俺に抱き着いた。
「ああ、ただいま。衛兵さんもありがとな」
俺は衛兵に礼を言うと、少し遅めの昼食を食べに行――こうとした時、ドアが勝手に開いた。そして、清潔な服に着替えたクリスさんが入ってきた。
(さっきは色々あって顔をよく見れなかったけど、ちゃんと見ると凄く美しいな……」 )
クリスさんは背中まで届くロングヘアーで、金色の髪にエメラルドグリーンの眼。そして、顔だちも整っており、美しいという言葉が似あう女性だった。あと、胸もDカッ――
「あの、さっきは助けてくださり、ありがとうございます。それで、沢山お礼がしたいので、あなたをエルフの里に招待させてください」
クリスさんはそう言うと、頭を下げた。
(エルフの里か……普通に行ってみたいな……)
ゲームだと、世界樹の周りにある、とても幻想的な場所だ。俺はそれらを真っ先に思い浮かべると、直ぐに「むしろ俺が行ってみたいぐらいです」と答えた。
「ありがとうございます。それでは、私の名を、改めて名乗らせていただきます。私の名は、クリスティーナ・ワーレン。一応、あの里の第二王女ですね」
「お、王女!?」
クリスさんはまさかの王女だった。確かに立ち居振る舞いには目を見張るものがあったが、まさかそんなお偉いさんだなんて思いもしなかった。
「あ、別に王女だからといって態度を変えなくてもよろしいですよ。それに、これは種族のせいであがめられているようなものですしね。では、一先ずユート様には何故、私がさらわれたのか話します」
「分かった。あと、様はつけないでくれ。なんか違和感ある」
俺はそう言うと、部屋にある椅子に移動した。ノアは、俺の膝の上にちょこんと座った。
「分かりました。では、あなたも、さんはつけないでくださいね」
そう言いながら、クリスが反対側の椅子に座ったところで、話が始まった。
目の前にあったのは一つの牢屋だ。だが、さっきの牢屋とは違い、中にはそれなりの居住スペースがあった。そして、その中には足枷をつけられたロングヘアーの金髪の女性がいた。
今すぐにでも助け出そうと思ったが、その牢屋の前には四人の黒いローブを着た男がいた。
「ちっ見つかったか。おい! 動くな! この女がどうなってもいいのか!」
黒いローブの男の一人がそう叫ぶと、牢屋の中にいる女性に剣を突き付けた。
まあ、俺は〈再生〉が使える為、最悪蘇生すればいいのだが、蘇生を前提とした動きはあまりとりたくない。
「そうか……〈重力操作〉!」
俺は〈重力操作〉でこいつらにかかる重力を千倍にして、潰した。
「ふぅ……この女性は何でこんなところに一人で監禁されているんだ?」
ここまで厳重に監禁されている理由がよく分からない。だが、今はそれについて考えている暇はない。
「おい! 大丈夫か?」
俺は牢屋を素手で破壊しながら言うと、足枷も力業で破壊した。
「……助けに来てくれたの?」
金髪の十七、八歳ほどに見える女性は、エメラルドグリーンの瞳で俺のことを見つめながら言った。
「ああ、ここにいる神の涙の連中は全員倒した。だから安心していいぞ」
俺はしゃがみ込み、視線を同じ高さにすると、安心させるように、優しい声音で言った。
すると、女性は泣き出した。
「あ、ありがとうございます……うう……本当に……ありがと……」
女性は泣きながらそう言うと、俺の胸に顔をうずめた。
(う……まあ、これは泣き止むまで待つのがよさそうだな……)
俺はいきなり抱き着かれたことに顔を真っ赤にさせつつも、暫くの間、胸を貸してあげることにした。
「ふぅ……ありがとうございます。私の名前はクリスティーナ。長いので、クリスと呼んでください。私はエルフの祖、ハイエルフという種族でして、色々ありまして、ここに監禁されていました」
女性――クリスさんはそう言うと、礼儀正しく頭を下げた。
(ん? てかハイエルフ!?)
俺は即座に耳を見ると、耳の先が少しだけ尖っているのが見えた。
それにしてもファンタジーの代名詞ともいえるエルフって思ったよりも耳がとがっていないんだなぁ……ちょっと意外だった。
「ああ、俺の名前はユートだ。一先ず上に行くぞ」
「分かりました」
こうして、無事、神の涙に捕らえられた人全員を救出した俺は、地上に戻った。
「――――ということがありました」
「……そうか」
衛兵の詰所に戻った俺は、クリスさんを衛兵に任せると、ちょうど戻ってきたゲリオスさんに、何があったのかを説明した。
「ユートが強くて助かったな。ありがとう。礼金はたっぷり渡すよう、隊長に言っておくから安心しろ。あと、明日領主館で勲章式があるのだが、それに出てもらいたいんだ」
「あ~勲章式はちょっと辞退したいですね」
勲章式なんてめんどくさそうな感じがプンプンする。
「いや、それは悪いけど無理だなあ……それをすると俺達が色々と責められるんだ。『ちゃんと礼を言えよ!』て、事情を知らないやつらから言われるのは嫌なんだ」
ゲリオスさんは「はあっ」と、深くため息をついた。
「……分かりました。だけど、あまり大げさなものにはしないでくださいね」
「ああ、元よりそのつもりだ」
俺はその言葉に安堵すると、ノアがいる部屋に向かった。
「ノア、帰ってきたぞ」
「あ、パパ~」
ノアは俺を見つけると、ステテテーと走り、俺に抱き着いた。
「ああ、ただいま。衛兵さんもありがとな」
俺は衛兵に礼を言うと、少し遅めの昼食を食べに行――こうとした時、ドアが勝手に開いた。そして、清潔な服に着替えたクリスさんが入ってきた。
(さっきは色々あって顔をよく見れなかったけど、ちゃんと見ると凄く美しいな……」 )
クリスさんは背中まで届くロングヘアーで、金色の髪にエメラルドグリーンの眼。そして、顔だちも整っており、美しいという言葉が似あう女性だった。あと、胸もDカッ――
「あの、さっきは助けてくださり、ありがとうございます。それで、沢山お礼がしたいので、あなたをエルフの里に招待させてください」
クリスさんはそう言うと、頭を下げた。
(エルフの里か……普通に行ってみたいな……)
ゲームだと、世界樹の周りにある、とても幻想的な場所だ。俺はそれらを真っ先に思い浮かべると、直ぐに「むしろ俺が行ってみたいぐらいです」と答えた。
「ありがとうございます。それでは、私の名を、改めて名乗らせていただきます。私の名は、クリスティーナ・ワーレン。一応、あの里の第二王女ですね」
「お、王女!?」
クリスさんはまさかの王女だった。確かに立ち居振る舞いには目を見張るものがあったが、まさかそんなお偉いさんだなんて思いもしなかった。
「あ、別に王女だからといって態度を変えなくてもよろしいですよ。それに、これは種族のせいであがめられているようなものですしね。では、一先ずユート様には何故、私がさらわれたのか話します」
「分かった。あと、様はつけないでくれ。なんか違和感ある」
俺はそう言うと、部屋にある椅子に移動した。ノアは、俺の膝の上にちょこんと座った。
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