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第二章 ダンジョン都市ティリアン
第三十三話 逃げられたか…
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「それはな。お前の方が弱いということだ。〈重力操作〉!」
シャオニンは最初、俺の言葉を聞いて吹き出した。だが、次の瞬間、シャオニンは後ろに落ちた。
「な!? がはっ」
シャオニンはそのまま壁に叩きつけられた。
だが、千倍の重力をかけたのにも関わらず、シャオニンはまだ生きていた。それが高いステータス故の生存なのか、魔道具によるものなのかは分からなかった。
まあ、取りあえず俺の作戦は成功したというわけだ。
「では、〈結界〉!」
俺は衛兵を〈結界〉で覆って手出しが出来ないようにした。
「あ、サルト、お前は眠っとけ」
俺は唖然として、言葉が出なくなっていたサルトにそう告げると、〈重力操作〉で重力を五百倍にして、全身の骨にひびを入れることで、気絶させた。
「くっ……流石にこれはヤバいねぇ……」
シャオニンはようやく余裕の表情を崩した。
「う~ん……流石にこの状況で君と戦うメリットがなさそうだから一旦引かせてもらうね」
そう言うと、シャオニンは地面に魔法陣が描かれた紙を敷いた。
あれはトリスの森で見たことがある。あれは転移することが出来る魔法陣だ。
「それじゃ~ね~」
シャオニンは手を振りながらこの場から消え――なかった。
「え!? 何で!? 転移が発動しない!?」
シャオニンは驚き、目を見開いていた。
「ん? 何をする気だったんだ?」
俺は内心で笑いながら、平然と言った。
実は、転移が発動しなかったのは俺のせいだ。俺が〈空間操作〉で、転移を妨害したのである。
「くそっ……だったら道連れにさせてもらうよ」
シャオニンはそう言うと、腰につけてあった爆弾のような形の球体を取り出した。
「じゃ、僕と一緒に死んでくれ!」
シャオニンはそう叫ぶと、球体を地面に叩きつけた。
「!? 〈結界〉!」
俺は即座に〈結界〉を張った。更に、衛兵たちを守っている〈結界〉の強度を上げた。
その直後、
――ドオオオン……
大きな爆発音がこの部屋全体に響き渡った。地面が揺れ、煙は三十メートルある天井にまで届いた。
「ちっ あのステータスのやつがそんな簡単に自殺するもんなのか?」
こいつは神の涙の幹部と言っていた。そんなやつが死に急ぐようなことをしないと思った俺は、〈気配察知〉を使った。すると……
「ちっ 逃げられたか!」
ここから四百メートルほど離れた場所にいることが分かった。
俺は逃げられたことに悪態をつきつつも、衛兵たちを解放した。
「はぁ、はぁ……ありがとう、助かったよ」
衛兵たちはほっとした表情をしながら、全員頭を下げて礼を言った。
「あ、ああ。と、ところでライザはどこにいるんだ?」
俺の質問に、衛兵たちは慌てた。
「あ、あっちの通路の方に連れて行かれました! は、早く行かないと殺されてしまいます!」
「何だと? 分かった。みんなは早く上に上がっててくれ。俺は救助しに行く」
俺はそう言うと、〈気配察知〉で場所を把握してから走り出した。
「えっと……いた!」
俺は牢屋の中に入っているライザとニナ、そして見張りをしている黒いローブの男を見つけた。
「死ね!」
俺はその言葉と共に剣を振った。
僅かな手ごたえと共に、男の首はスパッと切れ、地面に落ちた。
「ライザ! ニナ! 無事か?」
俺は二人の方を向くと、そう言った。
「あ、ああ、ユート、どうなったんだ?」
「え、ええ……大丈夫よ」
二人とも大した怪我を負ってなくて、俺は安堵した。
「よかった。取りあえずあいつらは殲滅しといた。だが、幹部には逃げられた」
「そうか……まあ、ありがとな」
「ああ」
俺は頷くと、牢屋の檻を素手で破壊した。
「よし、これでいいか?」
「あ、ああ……やっぱお前理不尽だよな……」
「ええ……何で素手でミスリル合金の檻を破壊できるのかしら……」
二人は唖然としながらも、俺の後に続いて地上に戻った。
「ふぅ……もう残っている人はいないかな……ん?」
まだ地下に五人残っていることが〈気配察知〉を使うことで分かった。
「ん?ユート、どうかしたのか?」
じっと下を向いて黙っている俺に、ライザが心配そうな視線を向けてきた。
「ああ、まだ中に人が残っているような感じがしてな。だからちょっと行ってくる」
「分かった。気をつけてな。衛兵には言っとくから」
「ああ」
俺は頷くと、再び地下に下りた。そして、気配を頼りにその場所へと向かった。
「……この先だと思うんだけどなあ……」
俺は目の前にある壁を眺めながら、そう呟いた。
「どこかに隠し通路でもあるのか?」
俺は壁を触ったり、こすったりしながらそう言った。
だが、隠し通路を探すことに関しては全くのド素人だ。多分俺が探そうものなら数日かかってもおかしくない。その為、俺は力業を使うことにした。
「やるか、〈影操作〉!」
俺は〈影操作〉で先のとがったハンマー十個を作ると、それを目の前の壁に思いっきり叩きつけた。
――ドゴォゴゴゴゴオォン……
いくつもの破壊音が響き渡った後、奥にあった部屋と、こっちの部屋が貫通した。
「よし、では、入るか」
俺はそう呟くと、中に入った。
シャオニンは最初、俺の言葉を聞いて吹き出した。だが、次の瞬間、シャオニンは後ろに落ちた。
「な!? がはっ」
シャオニンはそのまま壁に叩きつけられた。
だが、千倍の重力をかけたのにも関わらず、シャオニンはまだ生きていた。それが高いステータス故の生存なのか、魔道具によるものなのかは分からなかった。
まあ、取りあえず俺の作戦は成功したというわけだ。
「では、〈結界〉!」
俺は衛兵を〈結界〉で覆って手出しが出来ないようにした。
「あ、サルト、お前は眠っとけ」
俺は唖然として、言葉が出なくなっていたサルトにそう告げると、〈重力操作〉で重力を五百倍にして、全身の骨にひびを入れることで、気絶させた。
「くっ……流石にこれはヤバいねぇ……」
シャオニンはようやく余裕の表情を崩した。
「う~ん……流石にこの状況で君と戦うメリットがなさそうだから一旦引かせてもらうね」
そう言うと、シャオニンは地面に魔法陣が描かれた紙を敷いた。
あれはトリスの森で見たことがある。あれは転移することが出来る魔法陣だ。
「それじゃ~ね~」
シャオニンは手を振りながらこの場から消え――なかった。
「え!? 何で!? 転移が発動しない!?」
シャオニンは驚き、目を見開いていた。
「ん? 何をする気だったんだ?」
俺は内心で笑いながら、平然と言った。
実は、転移が発動しなかったのは俺のせいだ。俺が〈空間操作〉で、転移を妨害したのである。
「くそっ……だったら道連れにさせてもらうよ」
シャオニンはそう言うと、腰につけてあった爆弾のような形の球体を取り出した。
「じゃ、僕と一緒に死んでくれ!」
シャオニンはそう叫ぶと、球体を地面に叩きつけた。
「!? 〈結界〉!」
俺は即座に〈結界〉を張った。更に、衛兵たちを守っている〈結界〉の強度を上げた。
その直後、
――ドオオオン……
大きな爆発音がこの部屋全体に響き渡った。地面が揺れ、煙は三十メートルある天井にまで届いた。
「ちっ あのステータスのやつがそんな簡単に自殺するもんなのか?」
こいつは神の涙の幹部と言っていた。そんなやつが死に急ぐようなことをしないと思った俺は、〈気配察知〉を使った。すると……
「ちっ 逃げられたか!」
ここから四百メートルほど離れた場所にいることが分かった。
俺は逃げられたことに悪態をつきつつも、衛兵たちを解放した。
「はぁ、はぁ……ありがとう、助かったよ」
衛兵たちはほっとした表情をしながら、全員頭を下げて礼を言った。
「あ、ああ。と、ところでライザはどこにいるんだ?」
俺の質問に、衛兵たちは慌てた。
「あ、あっちの通路の方に連れて行かれました! は、早く行かないと殺されてしまいます!」
「何だと? 分かった。みんなは早く上に上がっててくれ。俺は救助しに行く」
俺はそう言うと、〈気配察知〉で場所を把握してから走り出した。
「えっと……いた!」
俺は牢屋の中に入っているライザとニナ、そして見張りをしている黒いローブの男を見つけた。
「死ね!」
俺はその言葉と共に剣を振った。
僅かな手ごたえと共に、男の首はスパッと切れ、地面に落ちた。
「ライザ! ニナ! 無事か?」
俺は二人の方を向くと、そう言った。
「あ、ああ、ユート、どうなったんだ?」
「え、ええ……大丈夫よ」
二人とも大した怪我を負ってなくて、俺は安堵した。
「よかった。取りあえずあいつらは殲滅しといた。だが、幹部には逃げられた」
「そうか……まあ、ありがとな」
「ああ」
俺は頷くと、牢屋の檻を素手で破壊した。
「よし、これでいいか?」
「あ、ああ……やっぱお前理不尽だよな……」
「ええ……何で素手でミスリル合金の檻を破壊できるのかしら……」
二人は唖然としながらも、俺の後に続いて地上に戻った。
「ふぅ……もう残っている人はいないかな……ん?」
まだ地下に五人残っていることが〈気配察知〉を使うことで分かった。
「ん?ユート、どうかしたのか?」
じっと下を向いて黙っている俺に、ライザが心配そうな視線を向けてきた。
「ああ、まだ中に人が残っているような感じがしてな。だからちょっと行ってくる」
「分かった。気をつけてな。衛兵には言っとくから」
「ああ」
俺は頷くと、再び地下に下りた。そして、気配を頼りにその場所へと向かった。
「……この先だと思うんだけどなあ……」
俺は目の前にある壁を眺めながら、そう呟いた。
「どこかに隠し通路でもあるのか?」
俺は壁を触ったり、こすったりしながらそう言った。
だが、隠し通路を探すことに関しては全くのド素人だ。多分俺が探そうものなら数日かかってもおかしくない。その為、俺は力業を使うことにした。
「やるか、〈影操作〉!」
俺は〈影操作〉で先のとがったハンマー十個を作ると、それを目の前の壁に思いっきり叩きつけた。
――ドゴォゴゴゴゴオォン……
いくつもの破壊音が響き渡った後、奥にあった部屋と、こっちの部屋が貫通した。
「よし、では、入るか」
俺はそう呟くと、中に入った。
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