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第二章 ダンジョン都市ティリアン

第三十話 制圧と絶望

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(そこか……)

 俺は〈気配隠蔽〉を使うと、物陰から、室内で武器を持って隠れ潜んでいる人たちを見た。どうやら俺たちが突入したことには既に気づいているようだ。まあ、あんな大きな音を出したから、むしろ気が付かない方がおかしい。ただ、ここで闇雲に撃退しに行くのではなく、隠れ潜んでいる辺り、雑魚ではないようだ。

(じゃ、やるか)

 俺は白輝の剣を構えると、部屋に入り、入ってすぐ横に隠れていた四人の首を切った。

「な!? いつの間に」

「おい! 直ぐに陣形を組め!俺が食い止める」

 リーダーらしき男が指示を出すと、俺に近づいてきた。

陰の支配者シャド―ルーラーに手を出すとは……生きて帰れるとは思うなよ」

 男は強気の態度をとっているが、明らかに俺のことを警戒していた。そして、男が話している間に、後ろの人たちが詠唱をしている。
(リーダーは生かして捕らえた方がよさそうだな)

 こいつは色々と情報を持っていると思った俺は、こいつに素早く近づくと腹パンで意識を奪った。
 その直後、前方から〈火矢ファイアアロー〉、〈風刀エアカッター〉、〈氷槍アイスランス〉などの数多くの魔法が飛んできた。更にこっそりと俺の背後に回ろうとしているやつの姿も見えた。

「じゃ、〈重力操作グラビティー〉!」

 俺は〈重力操作グラビティー〉で飛んでくる魔法を下に落としつつ、周囲にいる奴らも地面に叩きつけ、全身粉砕の刑に処した。

「よし、これで制圧完了……て、リーダーも潰しちゃった……」


 範囲にうっかり生かしておいたリーダーも入れてしまったせいで、こいつも潰してしまっていた。

「う~ん……実験もかねてやってみるか。〈再生リバース〉」

 俺は〈再生リバース〉を使った。すると、まるでビデオの早戻しのように体が治っていき、数秒後に元の姿に戻った。その後、心臓の部分が白く光り輝いた。
 そして、その光が消えると、男は目を覚ました。

「ううん……あいつはいなくなったの……て、おま、ごふっ」

 俺は復活早々暴れようとしたこいつを再び腹パンして眠りにつかせた。
 その直後、ゲリオスさんと数人の衛兵がこの部屋に勢いよく入ってきた。

「おい! ユート! 無事か……て、ええ!?」

 ゲリオスさんはぺったんこの状態で死んでいる大勢の人たちを見て唖然としていた。

「あ、はい。無事です。どうやらこっちに陰の支配者シャド―ルーラーがいたようですね」

 俺はそう言うと、リーダーらしき男の襟首をつかんで。ゲリオスさんの前まで引きずった。

「で、多分こいつがここのリーダーだと思います。生かして捕らえたんで後はお願いします」

「あ、ああ……任せとけ」

 ゲリオスさんは困惑しながらも頷くと、後ろにいる衛兵に縛らせ、担がせた。

「ああ、そうだ。俺たちの方には三十人が牢屋に入れられていた。見張りは三人だけだったから、直ぐに倒して、今は牢屋から出してあげている所だ」

 どうやらゲリオスさんの方も片付いたようだ。俺はそのことに「ふぅ」と安堵した。
 だが、一つ聞きたいことを思い出したので聞いてみた。

「あれ? そう言えばニナはいたんですか?」

 居たのなら、早くライザたちに会わせてあげたいと思っていた。だが――

「いや、ニナはいなかった。ということは、さっきサルトが言ってたように、南西に連れていかれたのだろう。それにしても一つの街に二つもアジトを入れるとは……俺たちの警備が甘かったのか……あ、因みに北側はただのパーティー会場だったようだ。さっき通信石で連絡が来た」

「わかりました。そう言えば南西の方からは連絡が来ないんですか?」

 俺はパーティー会場だったということに心の中で笑いつつも、そう聞いてみた。

「ああ、まだだ。どうやらあっちの方がアジトにいる人も多いようだな……あのさ、君は強いからできれば助力をしに行ってほしいのだが……」

「分かりました。では、行きます」

 俺がそう言った時、ゲリオスさんの通信石がスマホのように「ブルルルル」と震えた。

「お、ようやく終わったか」

 ゲリオスさんは「ふぅ」と息を吐くと、通信石の真ん中にあるボタンを押した。すると、通信石から声が聞こえた。

「あーあー……うん。つながってるみたいだね。では、初めまして、衛兵副隊長さん。それでは早速!初めましての君に残念なお知らせ! なんと! こっちに来た衛兵さんたちは、み~んな捕まっちゃったみたいだよ。それでさ、この子たちの命が惜しければ僕のお願いを聞いてくれないかな~」

 通信石から子供っぽい口調の男性の声が聞こえたかと思えば、突然こんなお願いをされた。
 その言葉を聞いて、この場にいた全員の表情が凍り付いた。

「は、はぁ!? 何故だ! そっちには隊長率いる大勢の衛兵が向かったのに……」

 ゲリオスさんはかなり動揺しながら、叫んだ。そして、その声を聞いた通信石の向こう側にいる男は楽しそうに笑った。

「あははっ みんな僕たちには勝てなかったよ。それに、君たちは最初から僕たちの手のひらの上で踊らされていたんだよ。あー面白い。相手の作戦を全て見破った上で、ただ撃退するのではなく、絶望を見せる。たまらないね~」

 男は子供のように笑いながら言った。

「あ、それでね。僕からのお願いって言うのはね。今君と一緒にのアジトを制圧した冒険者、ユートをこっちに向かわせてくれよ」
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