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第二章 ダンジョン都市ティリアン

第二十四話 魔法の実験

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「……戻ったか?」

 暫くしてから、俺は目をゆっくりと開いた。すると、俺がいたのは百階層のフロアボスがいる部屋の前だった。

「よし、こうなったら魔力量が二十万を超えるまで作業の鬼となってLVを上げて、魔王を倒したら直ぐに行けるようにするか」

 そう言うと、俺は再び扉を開け、中に入った。

「お、復活してる」

 部屋の中央には、さっきと同じようにエンシェントドラゴンがいて、俺のことをにらみつけていた。
 前回はこいつ相手にそこそこ苦戦したが、今ならラクに勝てる為、魔法の実験をする余裕すらあるというわけだ。

「よし、では早速魔法を試してみるか」

 実は、何故か闇属性の魔法に関してはその魔法を覚えた時に、どのような魔法なのかが頭に刷り込まれていた。

「では、〈重力操作グラビティー〉!」

 俺は〈重力操作グラビティー〉をエンシェントドラゴンに使った。
 〈重力操作グラビティー〉は重力に干渉する魔法だ。分かりやすく言うと、あらゆるものにかかる重力の向きと大きさを変えることが出来るということだ。まあ、はっきり言ってチート級だ。
 俺は今、エンシェントドラゴンにかかる重力を千倍にしてみた。

「グガァ!!」

 エンシェントドラゴンは千倍の重力がかかったことで、動きが前に戦った時の十分の一ぐらいに落ちてしまっていた。まあ、この状態で動けるだけでも普通に凄いことだ。
 ちなみにこの魔法は魔力の自動回復があっても、一秒間に魔力を三千消費する。

「じゃ、これは解除して、次は――〈空間操作スペーショナル〉!」

 俺は〈空間操作スペーショナル〉でエンシェントドラゴンの頭上に転移した。
 〈空間操作スペーショナル〉は空間に干渉する魔法だ。転移以外の使い方だと、空間そのものを切って攻撃するというぶっ飛んだことも出来る。まあ、空間そのものを切るやつは、一回で魔力を二万も消費するので、使う機会はあまりなさそうだ。

「グガ?」

 エンシェントドラゴンは突然俺が消えたことに戸惑い、辺りをキョロキョロと見回していた。

「じゃ、〈闇操作ダークシャドー〉!」

 俺は〈闇操作ダークシャドー〉で漆黒の槍を数十本作ると、それらを雨のようにエンシェントドラゴンに降らせた。
 〈闇操作ダークシャドー〉は闇を自分の好きな形に変えて使うことのできる魔法だ。
 今回は槍にしたが、これを剣や盾にすることだって出来る。

「グガアアアァ!!」

 エンシェントドラゴンは全身穴だらけになり、塵となった。

「あ、死んだか……では、〈空間操作スペーショナル〉」

 俺は〈空間操作スペーショナル〉で扉の前に転移した。
 転移をする時は本当に一瞬で、自分でも何が起きたのか分からないほどだ。

「よし……あ、〈魔法合成〉のやつ忘れてた……」

 俺は〈魔法合成〉というスキルによって生み出された付与属性、毒属性、雷属性の魔法を見た。

「え~と……なるほどな」

 付与属性で使えるのは、〈攻撃付与アタックグラント〉、〈防護付与ディフェンスグラント〉、〈速度付与スピードグラント〉、〈魔力付与エネルギーギフト〉の四つだ。
 ただ、これらは名前の通り、誰かに付与するものなので、自分自身に使うことは出来なかった。
 流石にこれらをエンシェントドラゴンに使って負けたら目も当てられないので、これはここでは使わないでおこう。

 次に、毒属性で使えるのは〈毒弾アシッドバレット〉、〈毒剣アシッドソード〉、〈毒壁アシッドウォール〉、〈毒雨アシッドレイン〉の四つだ。

 最後に雷属性で使えるのは、〈麻痺パラライズ〉、〈雷強化ブースト〉、〈天雷ボルトサンダー〉、〈雷速砲サンダーキャノン〉の四つだ。

「よし、では実験開始!」

 俺は軽い気分でそう言うと、扉を開け、中に入った
 中では相変わらず中央にエンシェントドラゴンがいる。

「では、〈雷強化ブースト〉」

 俺は〈雷強化ブースト〉を使うとエンシェントドラゴンの目の前に立った。やはりこれは予想通り身体能力を強化する魔法のようだ。ただ、〈風強化ブースト〉と違い、これは速度のみをめちゃくちゃ上げる魔法だった。

「では、〈毒弾アシッドバレット〉、〈毒剣アシッドソード〉!」

 俺は二つの毒属性の魔法を使った。〈毒弾アシッドバレット〉は暗紫色の球体を撃つ魔法で、エンシェントドラゴンに当たると鱗がほんの少しだけ溶けた。だが、即座に回復されてしまった。
 〈毒剣アシッドソード〉は鱗が一直線上に少し深くまで溶けた。だが、特に痛がることなく再生されてしまった。

「う~ん……やっぱこいつ強いな……」

 そう思っていると、エンシェントドラゴンは怒りのこもった眼をしながら口から小さめの〈獄炎地獄インフェルノ〉を撃ってきた。

「おっと。〈毒壁アシッドウォール〉!」

 すると、目の前に暗紫色の液体によって壁が作られたそして、その壁に〈獄炎地獄インフェルノ〉が当たったのだが、一秒足らずで〈毒壁アシッドウォール〉は消されてしまった。

「危ねっ」

 俺は即座に後ろに飛びずさると、〈獄炎地獄インフェルノ〉を〈空間操作スペーショナル〉で上空に転移させた。

「じゃ、〈毒雨アシッドレイン〉!」

 これはヒュドラが俺に使ってきた魔法で、地味に対処がめんどくさかった。

「グ? グガアア!!」

 エンシェントドラゴンは硬い鱗と高い再生力を持っているせいで毒が効かない。だが、目は例外だ。
 今の光景を見て、上を見上げてしまったエンシェントドラゴンは目の中に毒の雨が入ってしまい、苦しんでいた。

「では、〈天雷ボルトサンダー〉!」

 すると、上空に黒い雲が出来た。そして、そこから雷が落ちてきた。

「グガアアア!!」

 エンシェントドラゴンは今の一撃で鱗に軽く穴が開いていた。

「これで終わりだ!〈雷速砲サンダーキャノン〉!」

 すると、目の前から光の光線が放たれた。そして、エンシェントドラゴンの頭を消し飛ばした。
 エンシェントドラゴンはそのまま塵となって消えてしまった。

「じゃ、実験も済んだし頑張るか」

 俺は今まで以上に覚悟を決めると、〈空間操作スペーショナル〉でこの部屋の入り口に転移した。
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