異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

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第二章 ダンジョン都市ティリアン

第八話 エリート系チンピラ

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「今日から取りあえずLV.100になるまでダンジョンに籠るとしましょうか……」

 俺はダンジョンの入口がある広場に入った時にそう呟いた。
 今もフードを取る代わりに魔道具で女性の顔と声になっている為、周囲に人がいる時は一応女性っぽい口調にしている。まあ、誰も聞いていないので意味はなかったが……



「ん?そろそろかな?」

 ダンジョンに入る人の列に並んでから五分ほどで、あと二人で俺の番になるところまできた。
 俺はこれから数十日は続くであろうダンジョン攻略に向けて気を引き締めていた。
 ただ、そんな大事な時に後ろから声をかけられた。
 振り返ると、そこにいたのはチンピラ系の冒険者三人組だ。
 チンピラと言えば前に変装している時に路地裏で襲ってきたやつらを思い浮かべるが、目の前にいるのは全員LV.50前半のエリート系のチンピラだ。

「可愛いお嬢さん。一人でここを攻略するのはかなり危ないから俺たちが一緒に行って守ってあげるよ。夜の見張りも俺たちが全て引き受けるよ」

 三人組の中の一人が見た目に似合わず爽やかな声で提案してくるが、三人とも俺に向けて来る視線が前に路地裏で襲ってきたチンピラと同じだった。

「あ、いえ、結構です」

 俺はそう言って断ったが、諦めが悪いことがこいつらの特徴だ。

「そう強がるなって…あ、じゃあこの場で俺に殴りかかってきなよ。タイミングは任せる。それで俺に勝てたら一人で入っても問題はなさそうだ。あ、でも俺はBランク冒険者の中でも最上位だしな……だから勝利条件は俺の腹に軽くでもいいから殴ることだ。反対に俺の勝利条件はお嬢さんに尻もちをつかせることだ。さ、今すぐやるからさっさとかかってこいや」

 ずっと爽やかな声だったが、最後にチンピラっぽい声になった。

(そこまで演じたなら最後までやりきれよ……)

 爪の甘いチンピラにため息をつきながらも俺はこいつの前に立った。
 気が付くと、周りの人たちも心配そうに見て来る。小声で「あっちにいるBランク冒険者パーティー連れて来る」とか言っている人もいた。
 そうだよな。こいつの末路を考えると心配で心配でしょうがないもんな(笑)
 まあ、ちゃんと死なないように、体の欠損ないように手加減するつもりなので問題はない。ただ、こいつの防具のことを考えて〈身体強化〉は使っておこう。

「では、行きますよ」

 俺はニコッと笑うと一瞬で間合いを詰めた。

「はあっ」

「ぐはっ」

 こいつは俺の右ストレートをもろに腹にくらった為、防具は砕け、そのままろっ骨を折り、内臓を大きく揺らす。
 男は俺をなめていたせいか、反応することすらも出来ずに後ろに十メートルほど飛ばされた後、仰向けに倒れて意識を失った。

「これでお……私の勝ちですね」

 うっかり俺と言いそうになったが、ギリギリのところで堪えた。やっぱり口調を急に変えるのはかなり難しい。何かの拍子にポロリと言ってしまう自信しかない。まあ、その時はその時で考えるとしよう。

「それでは」

 俺は唖然としているチンピラ二人を尻目にダンジョンの入口へ向かった。どうやら丁度俺の番のようだ。
 ダンジョンの入り口で冒険者カードを確認していた衛兵がポカーンとしていたが、俺の顔を見るなり「はい!」といきなり返事をし、冒険者カードを見せて中に入るときは「ありがとうございます!」と、よく分からないが深くお辞儀をしてきた。

「よし、じゃあ取りあえずLV上げの足しになりそうな魔物が出るまでは基本素通りでいいか」

 そう言うと、俺は〈アイテムボックス〉から白輝の剣を取り出し、〈身体強化〉、〈剣術〉、〈風強化ブースト〉、そして長時間走り続けるつもりなので、風の抵抗から眼を守る為に〈結界シールド〉を目元に使った。
 こうして準備が整った俺はダンジョンのの奥に向けて走り出した。









「よし、これで五階層攻略か……」

 俺は全速力でダンジョン内を走り続けた為、前回はここに来るまでに九時間かかったのに対し、今回は僅か一時間で来ることが出来た。

「ここからは行ったことのない階層だから一応手ごたえはなくとも何が出るのかぐらいは確認しておこうかな?」

 フロアボスを倒した人がこの先を行くのだから魔物の強さも少しは上がるものだと思っている。
 俺はどんな魔物が出現するのか知りたいという好奇心を胸に六階層へ下りた。







「十階層か……フロアボスがいそうだな」

 あれから二時間ほどかけて十階層まで来た。

「おっと、早速いたか」

 目の前に現れたのは濃い灰色で、体長五メートルはある巨大なミミズ五体だ。

 こいつは六階層に下りてからよく見かけるようになった魔物の一つだ。〈鑑定〉してみると、
 ー--------------
 名前 グレートアーススワーム LV.18
 体力 1300/1300
 魔力 0/0
 攻撃 900
 防護 1800
 俊敏性 1400
 弱点
 ・水属性
 土の地面に穴を掘り、その中に隠れ潜む。
 獲物が来たら穴から跳び出て捕食する
 ー--------------
 と表示された。
 地面に潜られたら厄介なのだが、ここの地面は土ではなく岩石で出来ているので、その強みを全く生かせていない。まあ、こちらとしてはその方がラクなのでありがたい。



「お、今度はあいつか」

 グレートアーススワームを倒した俺が次に見つけたのは体長二メートルはある巨大な深紅の眼を持つ白兎だ。〈鑑定〉をしてみると、
 ー--------------
 名前 ホワイト・ラビット LV.20
 体力 1400/1400
 魔力 0/0
 攻撃 1600
 防護 900
 俊敏性 2000
 跳躍力の高さを生かして上からドロップキックを仕掛けてくる。
 肉はかなり美味しい。
 ー--------------
 と表示された。
 こいつのドロップキックは十メートルほど上に跳んでから足を下に向けて、一気に降下してくるものだ。
 速度も威力もそれなりにあるが、落ちてくる途中で方向転換は出来ないので、降下してきた瞬間にその場から動けば絶対に当たらないので意外と戦いやすかった。



「お、やっぱりフロアボスはいるか」

 十階層を走っていると、前方に前回と同じ大きな扉が見えてきた。
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