上 下
22 / 161
第一章 冒険者活動始めました

第十四話 LV上げは一苦労

しおりを挟む
 武器・防具店にある時計を見てみると、今は三時丁度を指していた。おやつの時間と言いたいところだが、あいにく俺はこの世界のお菓子を知らないし、昼食を遅めに食べたので、夕食の為にも今何か食べるのはやめといたほうがいいだろう。

「さてと…暇だし森でLV上げ兼金稼ぎをしてくるとするか」

 俺はゲームを何周かするのだが、そのうちの一回は必ずLVをあほみたいに上げて無双するという行動をとっていた。それを今、この世界でもやってやろうと思った。いや、LVを上げる理由の八割は転移の魔法を手に入れるためだ。最近は忘れてしまっているけど……






 俺はLVを上げる為に森の中を駆け回った。
 常に〈身体強化〉を使い、ミスリルの剣を持ち、魔物を見つけたら有無を言わさず切り、死骸は即座に〈アイテムボックス〉にしまうという作業を夕方になるまで繰り返した。

「こうしてみるとこの森にはスライムが一番多くて次点でレッドゴブリン、森狼フォレストウルフといった感じだな…」

 と言うかそれ以外の魔物を全く見ない。どうやらポイズン・スネークやキングスライムはかなりレアな魔物のようだ。この森には他の魔物はいないのだろうか……

(そういえば夜になるとやばいってミリが言ってたな…)

 初めてミリに会った時にミリが言ってたことを思い出した。

「夜ってこの森に入れるのかな?」

 夜になるとやばくなるこの森の門にいる衛兵が入ることを許可してくれるのか疑問に思った。ランクの高い冒険者なら入れるとかがあるかもなので、後で受付嬢に聞いておこう。と言うか今更だが受付にいる人はウォルフさんを除くと全員女性だ。

(何かそういう決まりでもあるのかな?)

 そんな疑問を抱きつつ、俺は街へ向かった。

(てか結構魔物倒したんだしLVはかなり上がっていると思うんだけどな……)

 正確に数えていたわけではないが、百体くらいは倒した気がする。なので俺はそれなりのLVアップを期待していたのだが……

「えーと…LV31か……全然上がってねえな」

 百体倒してこれはかなりしょっぱい結果だが、この世界に来た日にLVはだんだん上がりにくくなるということを理解ししていたので、何も文句は言わず、代わりにため息をついた。

「LV上げしやすい方法とかないのかな?」

 受付嬢に聞くことがまた一つ増えた俺は暫く歩いてから日が暮れるギリギリに街に入った。おかげで門にいる衛兵から「遅いぞ~!」と言われてしまった。
 軽く怒られながらも街に入った俺は真っ先に冒険者ギルドへ向かった。


「はい。レッドゴブリン五十匹、森狼フォレストウルフ四十八匹なので、報酬金は十四万六千セルになります」

(九十八体…凄いショックだ……)

 ギリギリ百体いかなかったことにその場で膝をついてしまいそうになったが、なんとか持ちこたえて報酬金をもらった。

「あの…一つ聞きたいのですがもしかして近頃話題になっている冒険者のユートさんですか?」

 と、受付嬢から突然こんなことを聞かれた。

「ち、近頃話題って何ですか?」

 何か話題になるようなことをしたかと言われると……あ、Bランク冒険者三人を大勢の前で殴り飛ばすという中々のことをしでかしたんだった……

「冒険者の間ではそこまで広まってはないのですが、冒険者ギルドの職員の間では凄い話題になっているんですよ。試験では試験官を魔法で倒し、受付で絡んできた冒険者を殴り飛ばし、依頼では大量の魔物を討伐してくるって感じですね。それでまだ十代なので受付嬢の間でも誰が最初に突撃愛の告白するのかって感じになっているんですよ」

 受付嬢は俺が話題になっている要因を熱弁してくれた。突撃にしっかりルビが付いているのが分かったがあえてスルーしておくことにした。

「そ、そうなのか…てかなんか俺のことを疑うやつとかいなかったのか?この前俺に絡んできたBランク冒険者みたいに…」

「魔物の討伐に関しては試験のことを考慮してもみんな半信半疑だったんですよ。ただ、Bランク冒険者フルボッコ事件と支部長の言葉で今では誰も疑ってないので安心してください」

「そうか…まあ、疑われてないならよかった…」

 自分の知らないところでそんなことがあったなんてちょっと驚きだ。
 あとは俺からも聞きたいことを聞いておこう。

「質問なんだがグランの森って夜はどんな感じなんだ?冒険者から危険って言われたんだが」

「はい。確かにあの森は夜になると夜行性の高ランクの魔物が活動を始めるので凄い危険です。冒険者の場合、パーティーならAランク以上、ソロならSランクでないとそもそも入ることすら許されていません」

 危険とは聞いていたがまさかそこまでとは思っていなかった。いったいどんな魔物が出るのだろうか…ちょっと気になるがこっそり出るわけにも行かないし、命の危険を冒してまで知りたいことではないのでその件は頭の片隅にでも置いておくことにした。

「そうなのか…わかった。あと、俺は今LV上げに苦戦しているのだがLVを効率よく上げる方法とかないのか?」

 そうですね…それに関してはランクの高い魔物を討伐するのが普通の方法ですね。レッドゴブリンや森狼フォレストウルフを五十体討伐するのとオークを一体討伐する時に上がるLVはほぼ同じと言われていますからね。苦労する気持ちはよく分かります」

(まじかよ……)

 確かに俺が今倒している魔物があまり強くないことは分かっていたが、まさかこれほどとは思わなかった。

「というかそもそもこの森には低ランクと高ランクの魔物はそれぞれ昼と夜に出現するのですが中ランクの魔物が全くと言っていいほど出現しませんからLV上げには適していないんですよね」

「そうなのか…そういえばさっきとか言ってたけどそれって普通じゃない方法もあるってことなのか?」

 普通じゃない方法って聞くと不正のニ文字が頭に浮かんでくるがはたしてどうなのだろうか。

「よ、よく覚えてますね。まあ、それはお金で高ランク冒険者を雇って高ランクの魔物を死ぬ寸前まで攻撃して、最後の一撃だけもらうっていう方法ですね。よく貴族がやっている手段でお金がとんでもなくかかるのでおすすめ出来ないんですよね」

 何と言うか…言われてみればなるほどと思える方法だ。まあ、そういう方法はあまり好きにはなれないのでもしお金を大量に持っていたとしてもやらないだろう。

 取りあえず分かったことはランク上げと、他の街に行って中ランクの魔物を討伐するといったことだろう。

「分かった。色々ありがとう」

 俺は一言礼を言うと、冒険者ギルドを後にした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~

てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。 そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。 転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。 そんな冴えない主人公のお話。 -お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

処理中です...