上 下
4 / 161
プロローグ

第四話 身体強化の意外な使い道

しおりを挟む
「チチチチチ……」

「ふぁ…朝か……」

 俺は鳥の鳴き声で目を覚ました。

「取り敢えず飯食いながらこれからどうするか考えよう……」

 俺は〈アイテムボックス〉から昨日焼いた〈森狼フォレストウルフ〉の残りを取り出した。〈アイテムボックス〉の中では時間が止まってるので、肉は焼き立てのままだ。

「取り敢えず人がいる所へ向かわないとなあ…流石にいつまでも野宿する訳にはいかないし……」





 十分ほどたち、肉を食べ終わった俺は歩き出そうとしたが、

「あ、そういえば魔法が増えてないかチェックするの忘れてた」

 昨日やろうと思ってから寝たのにもう忘れてしまっていた。

(まあ、寝起きで頭回ってないし、仕方ない仕方ない……)

 と、頭の中で言い訳をしつつ、俺は使える魔法を見た。

「…光属性に〈回復ヒール〉ってのが追加されているな」

 ほかの属性も確認したが、残念ながら追加されていないようだ。

「試してみたいけど別に怪我してるわけじゃないしな~」

 かといってわざと自分を傷つけるのはやりたくない。

(ていうか“自分で自分を傷つける”という言葉だけを聞くとなんか病んでいる人みたいだな……)

 まあ、これは使う機会が来たら使うことにしよう。その機会は来ない方がいいのだが…

(そういえば俺はこの世界にきてから傷一つ負ってないな…)

 魔物は二回襲って聞いたが、魔法を使うことで切り抜けることが出来た。

「まあ、それは置いといてとりあえず人を探して街へ案内してもらおう」

 俺はそう言うと〈身体強化〉を使って人探しの旅に出た。






「……〈身体強化〉ってのはすごい便利だな~これほどのスピードで走っていて全然疲れないんだから…」

 俺は人探しの旅に出て三時間。大体時速ニ十キロメートルで走っているが全然疲れない。いや、スタミナが〈身体強化〉によって増えているというのもありそうだが、今の感覚としては軽いジョギングをしているような感覚だ。これほどの速さで走っていてジョギングの気分なので、なんか不思議な気分だ。

「ていうかスキルって魔力を使わないんだな……」

 ステータスで魔力のところを見てみたが、魔力は全く減っていなかった。
 これだけ聞くと、どんな時でも〈身体強化〉を使っていればいいと思ってしまうが、世の中そううまい話はない。
 〈身体強化〉をつかうと、解除しなくても数十分で強制的に解除されてしまい、また使いなおさないといけなかった。


 ふと、空を見上げてみると、日は真上から地面を照らしていた。

「もう昼なのか。まあ、お腹も減ってきたしここで昼飯にするか」

 俺は〈アイテムボックス〉の中からから昨日焼いた森狼フォレストウルフを取り出した。

「昨日焼いた分もこれでおしまいか…」

 次たべる時はまた解体して焼くという作業をしなければならない。まあ、その前には街に着けるだろう。多分……

「流石に三回連続同じ食べ物っていうのは飽きてくるな~」

 ただ、これしか食べ物は無いので贅沢は言えない。




「は~食った食った」

 三度目の森狼フォレストウルフも十分ほどで食べ終わった。

「このまま闇雲に探しても見つかりそうに無いな……」

 なにかいい方法はないだろうか?
 いや、最終手段。というかほとんど禁術のようなものだが、

「この森を〈火球ファイアボール〉で燃やし尽くせば絶対見つかるよな」 

 そして燃やしたあとは〈水球ウォーターボール〉で火を鎮火すれば街などが燃えるということはない…はず。

 最初は本気でこの方法を使うつもりだったが、

(そんなことしたらこの世界の人に怒られることは不可避だな……)

 それに前の世界でも森林を燃やしたら警察のお世話になる。きっとこの世界でも同じだろう。

「せっかく異世界に来たのに逮捕されるのはゴメンだよ…」

 ただそれ以外でいい方法がなかなか思いつかない。

「なんかいい方法は無いかなあ~」

 そう言いながらステータスを眺めていた。
 ここで俺はキュピーンと閃いた。

(〈身体強化〉ってあらゆる部位を強化するんだよな…だったら俺の頭って強化されないのかな?)

 そう思いながら〈身体強化〉を使ってみた。

「あ~知識が増えるわけじゃなくて頭の回転が早くなる感じか~」

 ただそれにより良い方法が頭に浮かんだ。

「〈身体強化〉によって耳も強化されるからそれを使えば良いのか」

 何故〈身体強化〉を使っている間、耳が良くなったことに今まで気づかなかったのかというと、耳を澄ませるという行動をこの世界に来てから一度もしていないからだ。まあ、普通に生活してて耳を澄まさなければならない状況なんて滅多に起きないから仕方のないことだ。
 試しに耳を澄ませてみると、魔物の鳴き声や草が揺れる音が聞こえてきた。

「お~スゲ~めちゃくちゃ良く聞こえる」

 しかもどれくらい離れた場所から聞こえてきたかもわかった。

(もしかして感覚も強化されているのかな?)

 使っている間はあらゆる部位が強化されるのでそういったところまではあまり自覚できない。
 まあ取り敢えず探す方法を見つけることはできた。これをやればきっと見つけることが出来るだろう。

「そうと決まればさっそくやってみるか」

 こうして俺は早速行動に移した。と言ってもやることは、耳を澄ましながら走るただそれだけだ。




 十キロメートルは走っただろうか。

「まだ見つからないのか…」

 俺はずっと耳を澄ませながら走っていた。
 ちなみに早く人を見つけたいので、魔物の居るところは避けて走っている。

「ざわざわ」

「グルルルルル」

「…街に…ろう…」

(ん?今人の声がしたな)

 一瞬のことだったので分かりづらかったが、左の方から明らかに人の声がした。

「よし!急いで向かおう」

 俺は〈身体強化〉を使ったまま、声のする方へと駆け出していった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~

てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。 そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。 転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。 そんな冴えない主人公のお話。 -お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

処理中です...