48 / 61
第二章 街の闇と繋がる者
第二十二話 ケインは頑張る
しおりを挟む
次の日の早朝――
「よし。準備はいいか?」
「ああ、ばっちりだ」
「うん。完璧」
「じゃあ行くか」
みんなの準備が終わったことを確認した俺は、古代大洞窟の外に出た。そして、ゲルディンとメグジスを繋ぐ道へと向かって歩き出した。
「なあ、ほ、本当に俺が一人でやるんだよな?」
ケインが怯えながらそう言った。
「ああ。まあ、大丈夫だ。危なくなったら俺たちが助ける。それに、出てきたとしてもBかB+だ。意外とA以上は少ないんだぞ?」
「じゃあ、昨日のロックコングは何だ?」
ケインがジト目で聞いた。
「……まあ、頑張れ」
「おい!」
ケインがこんなにもビクビクしているのには理由がある。それは、次現れた魔物は、ケインが一人で倒すことになっているからだ。因みにそうするよう言ったのは俺だ。まあ、ケインの成長の為にやらせることにした。
別にケインは弱くない。危険度がBかB+ぐらいなら、何とかなる。だが、Aランク以上は対処できないことと、昨日ロックコングと出会ったことが、こいつに恐怖を与えているのだ。
「……お、早速いたぞ」
前方にいたのは一頭のフォレストウルフだ。
「ふぅ……あれくらいなら何とかなりそうだ……」
ケインは安堵の表情を浮かべると、息を吐いた。
「じゃ、行ってくる」
ケインは両手に短剣を持つと、走り出した。
「!? グルルルルゥ!」
フォレストウルフはケインに気づくと、ケインを威嚇した。
「はあっ!」
ケインは左手の短剣で牽制しつつ、右手の短剣で少しずつダメージを与えている。
「ふむ。動きはいいな。だが、短剣を振る力が足りない。動きの練習ばかりしていて、実践を全くやっていなう証拠だな。もしかして、魔物を相手にするのは初めてか?」
俺はケインの動きを冷静に分析していた。
「ず、随分と正確なこと言ってくれるじゃないかっ!」
「無駄口を叩く暇があったら体を動かせ!」
「この鬼畜が!
ケインは騒ぎながらも、短剣を振った。その時、ケインの力が少し強くなったような気がする。
「はああっ!」
「グルルア!」
ケインの渾身の一撃が、フォレストウルフの喉笛を掻き切った。
「あ~魔物ってこんなに硬いのか……」
ケインは短剣をしまうと、深くため息をついた。
「それそうだ。だから、人間相手とは違う立ち回りが必要になってくる」
俺はちょ~とだけ偉そうにそう言った。
「やれやれだぜ……まあ、今のでコツは掴めた」
「そうか。じゃあ次はロックコングにしてみるか?」
俺はニコッと笑みを浮かべながらそう提案した。
「いや、それは無理だ! てか、俺をいじって楽しんでるだろテメー! 表情で丸分かり何だよ!」
ケインの叫び声が、辺りに響き渡った。
「おい。叫んだからまた魔物が来たぞ」
「マジかよ……だが、フォレストウルフなら何とかなる!」
ケインは再びけんを構えると、フォレストウルフ切りかかった。
「……これで良し」
二頭のフォレストウルフを燃やして、埋めた俺は満足気に頷いた。
「やっぱそのスキルは反則だよな~」
ケインは短剣の手入れをしながらそう言った。
「てかさ、お前のスキルって何だ?」
「ん? 俺は〈気配隠蔽〉だよ」
「いや、お前も普通に良いスキルじゃん」
隠密性に優れたこのスキルは、かなり重宝される。暗殺者、斥候、諜報部員などが主な例だろう。
「まあ、俺はどんなスキルにも可能性があると思って、鍛錬してきたんだ。そのスキルでは出来ないと思われていることを出来るように努力することが大切なんだよ」
〈創造〉では火や水を作れない? だが、努力すれば出来た。
〈操作〉では同時に動かせるのは三個が限界? だが、努力すればその十倍は出来た。
「はぁ~……お前はスキルのことをそのように思ってたのか……そんな考えが凡人の俺の頭に出るわけねーよ」
ケインは深くため息をついた。
「そう言うなって。ほら、〈気配隠蔽〉で、出来そうなことってないか考えてみろよ」
「そうは言ってもなぁ……気配を隠すスキルに可能性ってあるのか……精々スキルの精度を磨くぐらいだと思うんだけど……」
「そうだな……例えば、〈気配隠蔽〉で、他者の気配を隠せないのか?」
「あ~なるほどな。そう言うことか……頭柔らけぇなお前……」
ケインは腕を組むと、頷いた。
「まあ、話はこれくらいにして、さっさと先に行くか」
俺達は、再び歩き始めた。
======================================
作者からのお知らせ
ファンタジー小説大賞の現在の順位は71位です!
まだ投票していない方は是非、上にある黄色いバーナーから投票してくださると嬉しいです。
「よし。準備はいいか?」
「ああ、ばっちりだ」
「うん。完璧」
「じゃあ行くか」
みんなの準備が終わったことを確認した俺は、古代大洞窟の外に出た。そして、ゲルディンとメグジスを繋ぐ道へと向かって歩き出した。
「なあ、ほ、本当に俺が一人でやるんだよな?」
ケインが怯えながらそう言った。
「ああ。まあ、大丈夫だ。危なくなったら俺たちが助ける。それに、出てきたとしてもBかB+だ。意外とA以上は少ないんだぞ?」
「じゃあ、昨日のロックコングは何だ?」
ケインがジト目で聞いた。
「……まあ、頑張れ」
「おい!」
ケインがこんなにもビクビクしているのには理由がある。それは、次現れた魔物は、ケインが一人で倒すことになっているからだ。因みにそうするよう言ったのは俺だ。まあ、ケインの成長の為にやらせることにした。
別にケインは弱くない。危険度がBかB+ぐらいなら、何とかなる。だが、Aランク以上は対処できないことと、昨日ロックコングと出会ったことが、こいつに恐怖を与えているのだ。
「……お、早速いたぞ」
前方にいたのは一頭のフォレストウルフだ。
「ふぅ……あれくらいなら何とかなりそうだ……」
ケインは安堵の表情を浮かべると、息を吐いた。
「じゃ、行ってくる」
ケインは両手に短剣を持つと、走り出した。
「!? グルルルルゥ!」
フォレストウルフはケインに気づくと、ケインを威嚇した。
「はあっ!」
ケインは左手の短剣で牽制しつつ、右手の短剣で少しずつダメージを与えている。
「ふむ。動きはいいな。だが、短剣を振る力が足りない。動きの練習ばかりしていて、実践を全くやっていなう証拠だな。もしかして、魔物を相手にするのは初めてか?」
俺はケインの動きを冷静に分析していた。
「ず、随分と正確なこと言ってくれるじゃないかっ!」
「無駄口を叩く暇があったら体を動かせ!」
「この鬼畜が!
ケインは騒ぎながらも、短剣を振った。その時、ケインの力が少し強くなったような気がする。
「はああっ!」
「グルルア!」
ケインの渾身の一撃が、フォレストウルフの喉笛を掻き切った。
「あ~魔物ってこんなに硬いのか……」
ケインは短剣をしまうと、深くため息をついた。
「それそうだ。だから、人間相手とは違う立ち回りが必要になってくる」
俺はちょ~とだけ偉そうにそう言った。
「やれやれだぜ……まあ、今のでコツは掴めた」
「そうか。じゃあ次はロックコングにしてみるか?」
俺はニコッと笑みを浮かべながらそう提案した。
「いや、それは無理だ! てか、俺をいじって楽しんでるだろテメー! 表情で丸分かり何だよ!」
ケインの叫び声が、辺りに響き渡った。
「おい。叫んだからまた魔物が来たぞ」
「マジかよ……だが、フォレストウルフなら何とかなる!」
ケインは再びけんを構えると、フォレストウルフ切りかかった。
「……これで良し」
二頭のフォレストウルフを燃やして、埋めた俺は満足気に頷いた。
「やっぱそのスキルは反則だよな~」
ケインは短剣の手入れをしながらそう言った。
「てかさ、お前のスキルって何だ?」
「ん? 俺は〈気配隠蔽〉だよ」
「いや、お前も普通に良いスキルじゃん」
隠密性に優れたこのスキルは、かなり重宝される。暗殺者、斥候、諜報部員などが主な例だろう。
「まあ、俺はどんなスキルにも可能性があると思って、鍛錬してきたんだ。そのスキルでは出来ないと思われていることを出来るように努力することが大切なんだよ」
〈創造〉では火や水を作れない? だが、努力すれば出来た。
〈操作〉では同時に動かせるのは三個が限界? だが、努力すればその十倍は出来た。
「はぁ~……お前はスキルのことをそのように思ってたのか……そんな考えが凡人の俺の頭に出るわけねーよ」
ケインは深くため息をついた。
「そう言うなって。ほら、〈気配隠蔽〉で、出来そうなことってないか考えてみろよ」
「そうは言ってもなぁ……気配を隠すスキルに可能性ってあるのか……精々スキルの精度を磨くぐらいだと思うんだけど……」
「そうだな……例えば、〈気配隠蔽〉で、他者の気配を隠せないのか?」
「あ~なるほどな。そう言うことか……頭柔らけぇなお前……」
ケインは腕を組むと、頷いた。
「まあ、話はこれくらいにして、さっさと先に行くか」
俺達は、再び歩き始めた。
======================================
作者からのお知らせ
ファンタジー小説大賞の現在の順位は71位です!
まだ投票していない方は是非、上にある黄色いバーナーから投票してくださると嬉しいです。
30
この作品も見ていただければ幸いです。作業厨から始まる異世界転生~レベル上げ?それなら三百年程やりました~
お気に入りに追加
883
あなたにおすすめの小説

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる
シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。
そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。
なんでも見通せるという万物を見通す目だった。
目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。
これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!?
その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。
魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。
※他サイトでも連載しています。
大体21:30分ごろに更新してます。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。


隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました
ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが……
なろう、カクヨムでも投稿しています。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

異世界は流されるままに
椎井瑛弥
ファンタジー
貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。
日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。
しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。
これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる