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第二章 街の闇と繋がる者
第十三話 マリアはクズすぎた
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「こちらが領主館でございます。ただ、ここから先に入るにあたって、武器は預からせて頂きます」
「分かった」
俺は頷くと、腰につけてあった剣をさやごと男性騎士に渡した。
「ご協力、ありがとうございます。では、私について来てください」
男性騎士は俺が渡した剣を、扉の前にいた使用人に渡すと、扉を開けて中に入った。俺とノアも、男性騎士の後に続いて中に入った。
(うわぁ……殺気がやっばいなぁ……)
俺はレッドカーペットが敷かれた無駄に広い廊下を歩きながら、そう思った。俺たちを、離れた場所からさりげなく尾行している使用人が八人いる。そして、その全員が殺気を大量に出しながら歩いているのだ。その恨まれている感じの殺気に、俺は思わずビクッと体を震わせた。
「どうかしましたか?」
男性騎士が心配するような視線を俺に向けながら、そう言った。
「あ、いえ、何でもないです。最近色々ありすぎて疲れ気味なだけです」
「そうですか……お疲れ様です。マリア様からの労いの言葉で、少しでもその疲れがなくなることを願っております」
「そうですね。お気遣い、ありがとうございます」
危なかった。もしここで、俺が後ろのやつらの殺気に気が付いていることがバレたら、めんどくさいことになっていただろう。
(うーん……まあ、この状況で殺気を出すのは未熟者である証拠だな)
こいつらが立てた作戦は、俺に警戒されないように行動することが必要だ。それなのにもかかわらず、ここまで殺気を出していることに、俺は内心ため息をついた。
だが、油断はしない。俺の意識を殺気に向けさせて、その隙に気配を隠している奴が狙うなんてこともありそうだ。
そんなことを考えていたら、俺たちは一つの扉の前に来ていた。この先にある部屋は、謁見室だ。奥に玉座のような椅子がある、無駄に広い部屋だ。
すると、扉の両側にいた使用人が、ゆっくりと扉を開いた。
「どうぞ、お進みください」
男性騎士はそう言うと、扉の横に移動した。
俺とノアは、ゆっくりと中に入った。奥を見ると、玉座に一人の女性が座っていた。無駄に豪華なドレスを着て、悪魔のような笑みを浮かべているこの女性の名前はマリアだ。
俺は殺気を抑えながら、レッドカーペットの上を歩いた。そして、玉座から三メートルほど離れた場所で立ち止まると、片膝をつき、右手を胸に当てて跪いた。ノアも、俺の隣で、俺の動きを手本にしながら、跪いた。
「あなたたちが、影の支配者を滅ぼしてくださった冒険者ですね。初めまして。私の名前は、マリア・フォン・ハルドン。ガルゼン伯爵の長女である」
マリアは威厳のある声で、そう言った。性格はクズだが、こう言ったところは伯爵令嬢にふさわしいと評価できる。こいつの素性を知らない人なら、この挨拶だけで、良い令嬢だと思ってしまうだろう。
「では、報酬として、あなたたちには剣を差し上げますわ。さあ、持って来てください」
マリアがそう言った瞬間、俺は警戒度を一気に高めた。
(なるほど、その剣を渡す時に捕らえるということか。顔を上げさせていないのも、成功率を上げる為か……)
普通は、最初に顔を上げさせてから話をする。それなのに、今のように顔を下げさせたままにしているのは、俺たちに攻撃を察知させない為だろう。
そう思っていると、コツコツと二人の人間がこっちに向かってくる音がした。そして――
「動くな」
二人は剣を、それぞれ俺とノアの首に突き付けた。
「ふふふふふふ……やっと捕らえられましたわ。これでハルス様に顔向け出来る」
マリアはさっきの威厳のある声ではなく、普段通りの声になった。
「マリア様。私は何か悪いことをしましたか?」
俺は試しにそう聞いてみた。
「はぁ……あのね。あそこは私たちの資金源なのよ。あんたらみたいな価値もない平民を大金にしてくれる、素晴らしい組織なのよ。それを潰すなんて、正気の沙汰じゃないわね」
マリアは気持ち悪い笑いをしながら、クソみたいなことを言った。正直言って気分が悪い。こいつは存在してはいけない生き物だ。
「そうですか……〈創造〉武具破壊」
俺は、首元に突き付けられている剣を〈創造〉で塵にした。
「よし、死ね。〈創造〉〈操作〉飛剣!」
俺は立ちあがると、唖然としている男の顔面めがけて短剣を飛ばした。
「ぐはっ」
男は、短剣が眉間に当たり、そのまま貫通したことで地面に倒れ、息絶えた。隣を見てみると、ノアがサクッともう一人を倒していた。
「な!? おい! 全員来なさい!」
マリアは大声で叫んだ。すると、部屋の外や、部屋のあちこちに隠れていた人たちが一斉に姿を現すと、突撃してきた。これほどの数を相手にするのなら、接近戦は避けた方が良さそうだ。
「ノア、右側を頼む。左側は俺がやるから」
俺は、ノアに右側から来るマリアの部下の処理を任せた。俺は右側を潰すとしよう。
「やるか。〈創造〉〈操作〉飛剣!」
その瞬間、俺の元に短剣が次々と現れた。そして、それらの短剣は次々とこいつらに襲い掛かった。
「分かった」
俺は頷くと、腰につけてあった剣をさやごと男性騎士に渡した。
「ご協力、ありがとうございます。では、私について来てください」
男性騎士は俺が渡した剣を、扉の前にいた使用人に渡すと、扉を開けて中に入った。俺とノアも、男性騎士の後に続いて中に入った。
(うわぁ……殺気がやっばいなぁ……)
俺はレッドカーペットが敷かれた無駄に広い廊下を歩きながら、そう思った。俺たちを、離れた場所からさりげなく尾行している使用人が八人いる。そして、その全員が殺気を大量に出しながら歩いているのだ。その恨まれている感じの殺気に、俺は思わずビクッと体を震わせた。
「どうかしましたか?」
男性騎士が心配するような視線を俺に向けながら、そう言った。
「あ、いえ、何でもないです。最近色々ありすぎて疲れ気味なだけです」
「そうですか……お疲れ様です。マリア様からの労いの言葉で、少しでもその疲れがなくなることを願っております」
「そうですね。お気遣い、ありがとうございます」
危なかった。もしここで、俺が後ろのやつらの殺気に気が付いていることがバレたら、めんどくさいことになっていただろう。
(うーん……まあ、この状況で殺気を出すのは未熟者である証拠だな)
こいつらが立てた作戦は、俺に警戒されないように行動することが必要だ。それなのにもかかわらず、ここまで殺気を出していることに、俺は内心ため息をついた。
だが、油断はしない。俺の意識を殺気に向けさせて、その隙に気配を隠している奴が狙うなんてこともありそうだ。
そんなことを考えていたら、俺たちは一つの扉の前に来ていた。この先にある部屋は、謁見室だ。奥に玉座のような椅子がある、無駄に広い部屋だ。
すると、扉の両側にいた使用人が、ゆっくりと扉を開いた。
「どうぞ、お進みください」
男性騎士はそう言うと、扉の横に移動した。
俺とノアは、ゆっくりと中に入った。奥を見ると、玉座に一人の女性が座っていた。無駄に豪華なドレスを着て、悪魔のような笑みを浮かべているこの女性の名前はマリアだ。
俺は殺気を抑えながら、レッドカーペットの上を歩いた。そして、玉座から三メートルほど離れた場所で立ち止まると、片膝をつき、右手を胸に当てて跪いた。ノアも、俺の隣で、俺の動きを手本にしながら、跪いた。
「あなたたちが、影の支配者を滅ぼしてくださった冒険者ですね。初めまして。私の名前は、マリア・フォン・ハルドン。ガルゼン伯爵の長女である」
マリアは威厳のある声で、そう言った。性格はクズだが、こう言ったところは伯爵令嬢にふさわしいと評価できる。こいつの素性を知らない人なら、この挨拶だけで、良い令嬢だと思ってしまうだろう。
「では、報酬として、あなたたちには剣を差し上げますわ。さあ、持って来てください」
マリアがそう言った瞬間、俺は警戒度を一気に高めた。
(なるほど、その剣を渡す時に捕らえるということか。顔を上げさせていないのも、成功率を上げる為か……)
普通は、最初に顔を上げさせてから話をする。それなのに、今のように顔を下げさせたままにしているのは、俺たちに攻撃を察知させない為だろう。
そう思っていると、コツコツと二人の人間がこっちに向かってくる音がした。そして――
「動くな」
二人は剣を、それぞれ俺とノアの首に突き付けた。
「ふふふふふふ……やっと捕らえられましたわ。これでハルス様に顔向け出来る」
マリアはさっきの威厳のある声ではなく、普段通りの声になった。
「マリア様。私は何か悪いことをしましたか?」
俺は試しにそう聞いてみた。
「はぁ……あのね。あそこは私たちの資金源なのよ。あんたらみたいな価値もない平民を大金にしてくれる、素晴らしい組織なのよ。それを潰すなんて、正気の沙汰じゃないわね」
マリアは気持ち悪い笑いをしながら、クソみたいなことを言った。正直言って気分が悪い。こいつは存在してはいけない生き物だ。
「そうですか……〈創造〉武具破壊」
俺は、首元に突き付けられている剣を〈創造〉で塵にした。
「よし、死ね。〈創造〉〈操作〉飛剣!」
俺は立ちあがると、唖然としている男の顔面めがけて短剣を飛ばした。
「ぐはっ」
男は、短剣が眉間に当たり、そのまま貫通したことで地面に倒れ、息絶えた。隣を見てみると、ノアがサクッともう一人を倒していた。
「な!? おい! 全員来なさい!」
マリアは大声で叫んだ。すると、部屋の外や、部屋のあちこちに隠れていた人たちが一斉に姿を現すと、突撃してきた。これほどの数を相手にするのなら、接近戦は避けた方が良さそうだ。
「ノア、右側を頼む。左側は俺がやるから」
俺は、ノアに右側から来るマリアの部下の処理を任せた。俺は右側を潰すとしよう。
「やるか。〈創造〉〈操作〉飛剣!」
その瞬間、俺の元に短剣が次々と現れた。そして、それらの短剣は次々とこいつらに襲い掛かった。
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