17 / 61
第一章 街の闇
第八話 ノア…何をしたんだ?
しおりを挟む
「ふぅ……それにしてもよくシザーズなんて武器が出てきたな。あれ、結構マイナーな武器なんだぞ」
シザーズなんていう、俺でも咄嗟に出てこなかった武器をノアが言ったことに、俺はかなり驚いていた。
「うん。それについては昔、人間の街に行ったことがあるお母さんが教えてくれたの。そして、私はお母さんが教えてくれたことは全部記憶しているの」
ノアはどこか悲しげな表情をしながら答えた。その表情から察するに、お母さんはもういないのだろう。
「そ、そうだ! これから他の装備品も買いに行かないか?」
俺は暗くなってしまった雰囲気を変える為に、別の話題を強引に持ってきた。そして、ノアが喜ぶ”なでなで”もした。
「うん。分かった」
ノアは一瞬で笑顔になると、俺の手を掴んだ。こういう切り替えの速さはノアの長所だなあと俺は思った。
「じゃ、行くか」
「うん」
こうして俺とノアはデートのような雰囲気で他の店に行――こうと思ったが……
「……なあ、誰か俺たちの跡を追ってきてないか?」
「うん。これはカイン……というよりは私に対する視線。そして、そいつは今、路地裏から見ている。しかも、これは害意のある視線」
俺たちはどうやら誰かに追跡されているようだ。
俺は何となく追われているような気がするぐらいの感覚だったが、ノアはどこから見られているのかや、視線の方向、視線の種類まで正確に把握していた。
「これ、ずっと追われるのは嫌だよな?」
「うん。気分が悪い」
互いに早く追跡から逃れたいと思っている為、俺たちはこいつらを釣る為にあえて路地裏に入った。
すると、路地裏に入ってから僅か十メートルほど歩いたところで、短剣を持ったガラの悪い男五人に囲まれた。
「釣れるの早くね?」
「うん。こいつらには警戒という言葉が頭に入っていない」
俺とノアは小声で、こんなにも早く来たことに驚き、呆れていた。だが、どういう訳か、こいつらには俺たちが身を寄せ合って怯えているように見えたようだ。
「へっ出てきただけで怯えるとか。期待の新人とか言われているやつだから警戒してたけど、所詮はこんなもんか」
と、全く警戒していなかった男が言った。
「こんな簡単な仕事でたんまり金が貰えるなんてな。いい仕事を見つけたもんだ」
「ああ、あれには、ノアっていう女一人を捕まえろとしか書かれてなかったけど、これって連れの男を持ってったら報酬が上乗せされるかもよ」
「お、やるか」
小物臭いセリフを吐くこいつらにはため息しか出ない。
「はぁ……ノア、そっちの三人を生け捕りにしてくれ。こっちは俺がやる」
「うん。任せて」
俺は三人をノアに任せると、俺は二人の方を向いた。
「生かして捕えてやるから安心しろ」
俺がそう言った時、二人は腹を抱えて大爆笑した。
「ぎゃはははは……さっきまで怯えていたやつが何か言ってら」
「ああ、俺たちに敗北の二文字はねぇんだよ」
二人はそう言うと、同時に正面から突撃してきた。二方面から攻撃するとか、タイミングを少しだけずらして攻撃するとか、そんな戦略的なことは一切ない。むしろ、正直な攻撃すぎて、何か罠がないか疑いたくなるレベルだ。
「ま、やるか。〈創造〉〈操作〉鉄鎖捕縛・改!」
俺は〈創造〉で両端に鉄球のおもりが付いた鉄の鎖を作ると、〈操作〉で二人まとめで胴の部分を縛った。
「なあっ!?」
「ぐはっ」
二人はいきなり縛られたことで身動きが取れなくなった。そして、重さ四キログラムある鉄球二つ分の重さが急に腰にかかったことで、二人は前に倒れた。
「じゃ、動くな」」
俺は倒れたことで二人が手放した短剣を〈操作〉で二人の首元にそれぞれ突きつけた。
「よし、ノア! そっちはどう……て、こりゃ一体何をしてるんだ?」
俺が目にしたのは、身ぐるみはがされた状態で、建物に括りつけられたロープで逆さづりにされている三人の男の姿と、そいつらに殺気を向けるノアの姿だった。
「あ、うん。こっちはこいつらが持ってたロープで拘束した後に、私の殺気を当てたり、爪を剥いで拷問してる」
ノアはニコッと笑いながら、実に恐ろしいことを言った。俺は思わず自分の爪を隠した。
「わ、分かった。取りあえずこいつらから目的と、背後にいる存在を聞き出すとしよう」
こいつらはさっき、俺たち――と言うよりはノアを捕まえると言っていた。そして、そのことを仕事と言い、そのことに対する報酬があると言っていた。つまり、こいつに仕事を依頼したやつがいるということになる。
俺はそのことを知るべく、こいつらの前に立つと、こう告げた。
「俺が聞きたいのは何故ノアを誘拐しようとしたのか、そして、お前たちに仕事を依頼したのは誰なのか、だ」
だが、こいつらはプライドが高いのか、それとも忠誠心が高いのかは分からないが、俺が聞いても舌打ちをしながら無視するだけだ。
「そうか……じゃ、力づくで吐かせてやる」
俺はそう言うと、こいつらの爪の裏に、地面に落ちていた短剣を刺した。
「ぎゃああー!!」
「うるさい」
俺は目の前で叫び声が思いのほかうるさかったので、叫べないように、ノアに頼んで力づくで顎を固定してもらった。
「じゃ、やるか。お前ら、話したいと思ったら右手を上げるんだ」
俺は悪魔のような笑みを浮かべると、一人ずつ拷問をしていった。
シザーズなんていう、俺でも咄嗟に出てこなかった武器をノアが言ったことに、俺はかなり驚いていた。
「うん。それについては昔、人間の街に行ったことがあるお母さんが教えてくれたの。そして、私はお母さんが教えてくれたことは全部記憶しているの」
ノアはどこか悲しげな表情をしながら答えた。その表情から察するに、お母さんはもういないのだろう。
「そ、そうだ! これから他の装備品も買いに行かないか?」
俺は暗くなってしまった雰囲気を変える為に、別の話題を強引に持ってきた。そして、ノアが喜ぶ”なでなで”もした。
「うん。分かった」
ノアは一瞬で笑顔になると、俺の手を掴んだ。こういう切り替えの速さはノアの長所だなあと俺は思った。
「じゃ、行くか」
「うん」
こうして俺とノアはデートのような雰囲気で他の店に行――こうと思ったが……
「……なあ、誰か俺たちの跡を追ってきてないか?」
「うん。これはカイン……というよりは私に対する視線。そして、そいつは今、路地裏から見ている。しかも、これは害意のある視線」
俺たちはどうやら誰かに追跡されているようだ。
俺は何となく追われているような気がするぐらいの感覚だったが、ノアはどこから見られているのかや、視線の方向、視線の種類まで正確に把握していた。
「これ、ずっと追われるのは嫌だよな?」
「うん。気分が悪い」
互いに早く追跡から逃れたいと思っている為、俺たちはこいつらを釣る為にあえて路地裏に入った。
すると、路地裏に入ってから僅か十メートルほど歩いたところで、短剣を持ったガラの悪い男五人に囲まれた。
「釣れるの早くね?」
「うん。こいつらには警戒という言葉が頭に入っていない」
俺とノアは小声で、こんなにも早く来たことに驚き、呆れていた。だが、どういう訳か、こいつらには俺たちが身を寄せ合って怯えているように見えたようだ。
「へっ出てきただけで怯えるとか。期待の新人とか言われているやつだから警戒してたけど、所詮はこんなもんか」
と、全く警戒していなかった男が言った。
「こんな簡単な仕事でたんまり金が貰えるなんてな。いい仕事を見つけたもんだ」
「ああ、あれには、ノアっていう女一人を捕まえろとしか書かれてなかったけど、これって連れの男を持ってったら報酬が上乗せされるかもよ」
「お、やるか」
小物臭いセリフを吐くこいつらにはため息しか出ない。
「はぁ……ノア、そっちの三人を生け捕りにしてくれ。こっちは俺がやる」
「うん。任せて」
俺は三人をノアに任せると、俺は二人の方を向いた。
「生かして捕えてやるから安心しろ」
俺がそう言った時、二人は腹を抱えて大爆笑した。
「ぎゃはははは……さっきまで怯えていたやつが何か言ってら」
「ああ、俺たちに敗北の二文字はねぇんだよ」
二人はそう言うと、同時に正面から突撃してきた。二方面から攻撃するとか、タイミングを少しだけずらして攻撃するとか、そんな戦略的なことは一切ない。むしろ、正直な攻撃すぎて、何か罠がないか疑いたくなるレベルだ。
「ま、やるか。〈創造〉〈操作〉鉄鎖捕縛・改!」
俺は〈創造〉で両端に鉄球のおもりが付いた鉄の鎖を作ると、〈操作〉で二人まとめで胴の部分を縛った。
「なあっ!?」
「ぐはっ」
二人はいきなり縛られたことで身動きが取れなくなった。そして、重さ四キログラムある鉄球二つ分の重さが急に腰にかかったことで、二人は前に倒れた。
「じゃ、動くな」」
俺は倒れたことで二人が手放した短剣を〈操作〉で二人の首元にそれぞれ突きつけた。
「よし、ノア! そっちはどう……て、こりゃ一体何をしてるんだ?」
俺が目にしたのは、身ぐるみはがされた状態で、建物に括りつけられたロープで逆さづりにされている三人の男の姿と、そいつらに殺気を向けるノアの姿だった。
「あ、うん。こっちはこいつらが持ってたロープで拘束した後に、私の殺気を当てたり、爪を剥いで拷問してる」
ノアはニコッと笑いながら、実に恐ろしいことを言った。俺は思わず自分の爪を隠した。
「わ、分かった。取りあえずこいつらから目的と、背後にいる存在を聞き出すとしよう」
こいつらはさっき、俺たち――と言うよりはノアを捕まえると言っていた。そして、そのことを仕事と言い、そのことに対する報酬があると言っていた。つまり、こいつに仕事を依頼したやつがいるということになる。
俺はそのことを知るべく、こいつらの前に立つと、こう告げた。
「俺が聞きたいのは何故ノアを誘拐しようとしたのか、そして、お前たちに仕事を依頼したのは誰なのか、だ」
だが、こいつらはプライドが高いのか、それとも忠誠心が高いのかは分からないが、俺が聞いても舌打ちをしながら無視するだけだ。
「そうか……じゃ、力づくで吐かせてやる」
俺はそう言うと、こいつらの爪の裏に、地面に落ちていた短剣を刺した。
「ぎゃああー!!」
「うるさい」
俺は目の前で叫び声が思いのほかうるさかったので、叫べないように、ノアに頼んで力づくで顎を固定してもらった。
「じゃ、やるか。お前ら、話したいと思ったら右手を上げるんだ」
俺は悪魔のような笑みを浮かべると、一人ずつ拷問をしていった。
43
お気に入りに追加
882
あなたにおすすめの小説

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる