上 下
15 / 61
第一章 街の闇

第六話 いい稼ぎだ

しおりを挟む
「え~と……ロックタートルはしっぽの魔岩だけでいいかな?」

 ロックタートルは全身を覆う甲羅こうら全てが素材になるが、俺の〈操作〉でも重すぎて持ち運べない為、持ち運ぶすべはな――いや、ノアに運んでもらうという方法があるが、流石にノアが運んでいる光景を他人に見せるわけにはいかない為、一番高く売れる部位である魔岩という三十センチほどの石を持って帰ることにした。この石は、ロックタートルの中で最も硬く、軽い部位なので、様々な使い道がある。

「じゃ、よっと」

 俺は魔岩の根元を再び〈創造〉で作った鉄剣で切ると、魔岩を地面に置いた。

「う~ん……こいつはこの状態じゃ燃やせないしな~……だが、かと言って放置は駄目だし……」

 俺が腕を組んで「う~ん」と悩んでいると、ノアが俺の顔を下から覗き込んだ。

「それなら私が細かく切ってあげる」

 ノアはそう言うと、両手にドラゴンクロウを出現させた。そして、ロックタートルの死骸に近づくと、両手をクロスするように振って、ロックタートル死骸を切った。そして、これを数か所で行うことで、ロックタートルの死骸をバラバラにした。

「どう?」

 ノアは俺の方に振り返ると、ニコッと笑みを浮かべながら、自慢気に言った。

「ああ、ありがとう」

 俺は礼を言うと、むき出しになったロックタートルの体内を、〈創造〉で作った火で燃やした。その後、〈操作〉でロックタートルの死骸の下の土を動かして穴を開けると、その中にロックタートルの死骸を落とした。その後、どかした土を上からかぶせて埋め立てた。

「よし、今日はこれくらいにして帰ろうか」

「うん」

 俺はフォレストウルフの毛皮を丸めた状態で肩に担ぎ、ノアは魔岩を抱え持った。
 そして、一緒にゲルディンに戻った。




「これと、これをお願いします」

 冒険者ギルドに入った俺は、半数の人たちから畏怖いふの視線を向けられながらも、素材売却所で素材の売却を頼んだ。

「え~と……フォレストウルフの毛皮が一つ。そしてこれは……あの、あなたたちはこれが何の魔物の素材か分かりますか?」

 受付嬢は信じられないものを見るような目で、魔岩と俺たちを交互に見る。

「ああ、それはロックタートルの魔岩だ。まあ、見つけた時に偶々たまたま大穴に落っこちて、ひっくり返っていたんだよ。まあ、運が良かっただけだ」

 俺はその場で考えた言い訳をした。ロックタートルを倒したのはノアなのだが、倒し方を説明したところで信じてくれないだろう。だからと言って、普通に倒したと言ったら、強制的にランクを上げられる可能性が高い。そうなったら厄介なことが起きると思った俺は「運が良かった」で済ませることにしたのだ。

「なるほど……そんな間抜けなロックタートルもいるんですね……あ、はい。本日は貴重な素材、ありがとうございます。買取金額は三十一万セルになります」

 受付嬢はそう言うと、銀貨三枚、小銀貨一枚を俺に手渡した。俺は硬貨を受け取ると、ふところの中に入れた。

「じゃ、昼食にするか」


「うん。今日は肉の気分」

 ノアは花が咲き誇ったかのような笑みを浮かべると、俺と手を繋いだ。
 その様子を見ていた周囲の人の視線から畏怖が消えて、代わりに「燃えちまえ、リア充が!」て感じの視線になった。ノアは、その視線が嫌なのか、「ねえ、軽く潰してもいい?」とまるで店で欲しいものを指さす子供のような視線で俺のことを見つめてきた。
 まあ、流石にそれはダメなので、俺は「手を出されない限り、こっちも手を出すのはダメだぞ」と、まるで親が子供に言い聞かせるような口調でノアの意見を却下すると、足早に冒険者ギルドの外に出た。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ゲルディンの西側にはスラム街があり、そこには影の支配者シャドールーラーという違法奴隷売買組織のアジトがある。

 影の支配者シャドールーラーのボス、ガスラー視点

「よし、今月はいくら稼いだ?」

 俺は隠し部屋にある黒光りする高級なソファに腰かけ、目の前でひざまずいている部下にそう尋ねた。

「はい。今月の稼ぎは小金貨七枚、銀貨三枚、小銀貨二枚で、計七百三十二万セルになります」

「ほう……そこそこといったところか」

 だが、この内の半分はあの御方にささげなければならない。半分も渡すのは少々不本意だが、あの御方のおかげで、奴隷を他の街に売ることが出来る。それに、あの御方の名を使うことでこの街の他の裏組織の組員を取り込み、今やこの街の裏組織は影の支配者シャドールーラーしかいない。つまり、利益を独占出来るのだ。それらを考慮こうりょすれば、半分は妥当だとうな金額だろう。

「ふぅ~で、上玉は見つけたのか?」

 奴隷は若くて美しい女が一番高く売れる。いいものなら一人で金貨三枚になるようなやつだっていた。俺は期待の眼差しをこいつに向けた。

「はい。上玉はいました。ノアという銀髪金眼の美しい少女です。小金貨四枚に届いてもおかしくはないぐらいの美しさです」

「なんだと!?」

 俺はその報告を聞いて、思わずソファから跳び上がった。そして、今すぐ欲しいと思った。

(くふふ……美しい女は売る前に俺がたっぷりと味見してやらんとな……)

 俺は舌なめずりをしながら笑みをこぼした。

「よし! 早速連れてこい! ただ、傷はつけるなよ」

「分かりました」

 部下は再び頭を下げると、部屋から出て行った。

「あ~楽しみだ」

 俺は暫くの間、笑いが止まらなかった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

スキルを極めろ!

アルテミス
ファンタジー
第12回ファンタジー大賞 奨励賞受賞作 何処にでもいる大学生が異世界に召喚されて、スキルを極める! 神様からはスキルレベルの限界を調査して欲しいと言われ、思わず乗ってしまった。 不老で時間制限のないlv上げ。果たしてどこまでやれるのか。 異世界でジンとして生きていく。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

俺のスキルが無だった件

しょうわな人
ファンタジー
 会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。  攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。  気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。  偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。  若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。  いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。 【お知らせ】 カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

処理中です...