ハズレスキル《創造》と《操作》を持つ俺はくそみたいな理由で殺されかけたので復讐します〜元家族と金髪三人衆よ!フルボッコにしてやる!~

ゆーき@書籍発売中

文字の大きさ
上 下
2 / 61
プロローグ

第二話 喜びと絶望

しおりを挟む
 俺は今日で十五歳。今の俺はとても機嫌が良かった。
 何故なら、目の前にあるテーブルには、普段は俺一人分の食事しか置かれないのに、今日はちゃんと家族全員分の食事があるからだ。

「家族みんなと食事をするのは兄上が成人した時が最後だな……」

 昔のことを懐かしんでいると、扉が開き、父上を先頭にして家族全員が入っていた。みんななんだかとても嬉しそうな顔をしている。
 そして、みんなが席に座ったところで父上はワインが入ったグラスを持ち上げた。

「今日でハズ……カインが成人を迎えた。ついにカインが十五歳になったんだ。こんな嬉しい日はない。さあ、乾杯!」

「「「「「乾杯」」」」」

 俺たちもワインが入ったグラスを持ち上げて乾杯した。

(よかった……みんな喜んでくれて……)

 俺の成人を家族みんなが心から喜んでいるようで、俺は嬉しかった。


 食事を終えたところで父上が口を開いた。

「カイン。お前には私の領地の一部を視察してほしいんだ」

「視察……ですか?」

 兄上たちの時はそんなことしなかったので、俺は不思議そうに首を傾げた。

「ああ、将来の為にも領地を自分の目で見ることはとても大切だ。行く先はもう決めてあるから私たちと一緒に行こう」

(え……父上たちと……)

 父上たちと出かけたことは今までに一度もなかった。

「わ、分かりました。初めての視察、精一杯頑張ります」

 俺は喜びに満ちた声でそう宣言した。

「ああ、頑張ってくれ。出発は四日後の午前八時だからな」

 そう言うと、父上は席を立ち、執務室へ仕事をしに行った。
 それに続くようにして父上の補佐をしているアレン兄上とケイル兄上も執務室へ行った。
 アレン兄上は銀髪に深紅の瞳を持ち、父上のように鍛え上げられた肉体を持っている。豪快な性格で、貴族向きではないが、仕事は文句を言いながらもしっかりこなす。
 ケイル兄上は蒼穹そうきゅうの髪にみどり色の瞳を持ち、引き締まった肉体を持っている。常に冷静で、父上から渡される仕事も完璧にこなす。


 その後、エリス母上とマリア姉上も食後のティータイムの為に自室へ戻った。
 エリス母上は金髪にみどり色の瞳を持つ美しい女性だ。贅沢を好み、使える金は余すことなく自分の部屋の装飾品や衣類品に使う。
 マリア姉上は深紅の髪と瞳を持つ美しい女性だ。母上に負けないほど部屋は豪華だし衣類品の数も多い。ただ、それほどの金を使えば貯金はほとんどなくなるはずなのに、この前俺に小金貨五枚、つまり、五百万セルをじゃらじゃらと見せつけてきた。

 そして、俺は嬉しさのあまりスキップしながら自室に戻った。
 兄上や姉上の時はこの後プレゼントを貰っていたのだが、俺は貰っていない。
 しかし、成人したことを祝ってもらえたことが嬉しすぎて、そのことは頭から抜け落ちていた。



 そして、待ちに待った視察の日。
 俺はいつも以上に髪を整え、服は視察ということでそれなりの距離を歩くと予想した俺は動きやすいものにした。
 そして、誰よりも早く屋敷の門にある馬車の前に着いた。

「初めての視察……楽しみだなぁ……」

 俺は今日の為に父上の領地について徹底的に調べ、学んだ。
 父上の領地はゲルディンという街で、帝都から馬車で大体二日の距離にある。
 街の近くには古代の森と呼ばれる広大な森がありそこに生息する強い魔物を討伐し、その素材を売ることで収入を得る冒険者という職業の人がたくさんいる。
 そして、父上は魔物の素材を買い取り、加工して、帝都に売ることで高い収入を得ている。

「さてと……あ、父上、アレン兄上、ケイル兄上。おはようございます」

 俺は馬車に近づいてくる父上と兄上に挨拶をした。

「ああ、おはよう。それにしても随分と張り切ってるな」

 父上は苦笑いをしながら挨拶を返してくれた。
 兄上二人は「クククッ……」と笑うのをこらえていた。

「はい。視察の日。とても楽しみしていました」

「……そうか。では早速行くとしよう」

 そう言うと、父上と兄上の三人が馬車に乗り込んだ。

「よし、頑張るぞ」

 俺は気合を入れると、そのあとに続いて馬車に乗り込んだ。

 そして、それと共に馬車は父上の領地に向けて進みだした。




次の日の午後五時頃――

「あ、見えた」

 馬車の窓から外を覗くと、馬車が進む先に高さ十メートルはある巨大な石造りの城壁が見えてきた。
 あれは円形の街をぐるりと囲んでおり、古代の森から迷い出て来る魔物の侵入を防ぐのが主な役割だ。
 俺たちが乗る馬車はそのまま門を通ってゲルディンに入った。

 その後、馬車は街の中を通ってそのまま反対側にある北門まで進んだところで止まった。

(ん?領主館はもっと手前なのに……)

 街に入ってからいきなり視察を始めるわけがないのにどうして領主館を通り過ぎるのだろうか。
 そのことを不思議に思っていると、父上に急かされた。

「どうした?早く降りるぞ」

「わ、分かりました。申し訳ありません」

 そう言うと、俺は急いで馬車から降りた。
 そして、俺の後から父上と兄上も降りてきた。

「さあ、最初の視察場所は古代の森にある古代大洞窟だ」

「……え?」

 俺は自分の耳を疑った。
 古代大洞窟というのは危険な魔物が多く生息する古代の森の中でも別格の場所だ。
 あそこに生息する魔物は危険すぎるので、許可証がない限り立ち入ること自体が禁止とされている。

「ち、父上!流石に危なすぎます!」

 そう叫ぶと、父上たちはニヤリと笑った。

「ああ、危険だな。だが、今のお前にはぴったりの場所だ」

「ま、せいぜい頑張れ」

「いいお墓だと俺は思うよ」

 父上たちの言葉に、俺は死刑宣告を受けたような顔になった。

「あ、兄上……何故……」

 思考が追いつかない。
 するとここで父上が俺の肩を優しく掴み、こう告げた。

「やっとお前を追放できる」
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる

シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。 そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。 なんでも見通せるという万物を見通す目だった。 目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。 これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!? その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。 魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。 ※他サイトでも連載しています。  大体21:30分ごろに更新してます。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

処理中です...