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プロローグ
第一話 器用貧乏と完全劣化
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俺の名前はカイン・フォン・ハルドン。
エルメス帝国に仕える貴族、ガルゼル・フォン・ハルドン伯爵の三男だ。
銀髪で蒼穹の瞳を持ち、引き締まった肉体を持つ俺は自分でいうのもなんだがかなりの美少年だ。
そんな俺は、千万人に一人とされているスキルを二つも身に宿す特別な人間だ。だが、俺は家族から蔑まれ、学園ではいつもいじめられている。
その理由は俺が持つスキルが二つともハズレと呼ばれるものだったからだ。
スキルは基本親や祖父母から遺伝することがほとんどだ。それなのに二つとも全く遺伝せず、尚且つハズレなのだから蔑まれることも仕方がないと思っていた。
そう。あの日、家族に殺されかけるまでは――
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「はっはっ」
俺は今、エルメス帝国学園の中庭でひたすら剣を振っていた。
この鉄剣は俺のスキル、〈創造〉によって作られたものだ。
〈創造〉それはこの世界でハズレと呼ばれ、馬鹿にされているスキルの一つだ。
〈創造〉というのは素材からあらゆるものを作るスキルだ。
また、素材がなくともある程度の素材なら自力で生み出すことも出来る。
一見凄そうに見えるこのスキルだが、このスキルは例えるなら器用貧乏だ。
例を挙げるとするならば、
『金属類を素材にして作るのなら〈鍛冶〉のスキルの方が良い』
『石材を素材にして作るのなら〈石工〉のスキルの方が良い』
『素材を生み出すのなら〈生産〉のスキルの方が良い』
この辺りが有名どころだろう。
他にも〈裁縫〉や〈木工〉などでそれよりも劣っていると馬鹿にされている。
それでも俺は〈創造〉を極め続けた。
そして、そのかいがあってか、俺は〈創造〉のスキルでは作れないとされていた水と火を作ることが出来たのだ。
まあ、出来たと言っても、頭サイズの火球や水球を作れる程度だ。しかも燃費がめっちゃ悪い……
それに、それぞれ〈水術士〉と〈火術士〉のスキルがあるせいで、結局器用貧乏であることに変わりはなかった。
「はぁ……来たか」
剣を振る俺に近づいてきたのは例の金髪三人衆だ。
中央にいる憎たらしいほどのイケメンがレイン・フォン・エルメス。ライン皇帝の長男で、次期皇帝でもある超お偉いさんだ。
レインは偉そうに前髪を右手でかき上げながら周囲からの視線に左手を振りながら応えていた。
そして、その両脇にいるイケメンはハルス・ディ・カリュディスと、ネイル・ディ・カリュディスだ。二人は双子であり、その二人の親はガルド公爵というこの国で二番目に権力を持っているお偉いさんだ。
そんなお偉いさん三人衆は俺の前に立つなり二ヤリと笑った。
そして、それと共にレインは俺の首をつかむと、地面に叩きつけてきた。
「がはっ」
俺は咄嗟に〈創造〉で砂の山を背後に作ることで衝撃を和らげたが、首をつかまれたことで俺は何度か咳込んだ。
そんな俺を見て、ハルスとネイルは薄笑いを浮かべ、レインは舌打ちをした。
「ちっ器用貧乏と完全劣化のくせに生意気だな」
レインはそう吐き捨てると、地面に倒れた俺の脇腹を蹴った。
だが、俺は即座に〈創造〉で鉄板を作って防いだ。
「ちっ 無駄にいい反応しやがって……ま、スキルを使って所詮はその程度か。俺が直々にスキルってやつを教えてやるよ」
そう言うと、レインは再び俺の脇腹を蹴った。
俺はさっきとは比べ物にならないほどの力で蹴られたことで二十メートルほど飛ばされ、校舎の壁にたたきつけられた。
「ぐ……」
俺は痛みでその場に座り込み、うずくまった。
「へっ これがスキルってやつだ。分かったか?」
レインはそんな俺を見て満足気な表情をすると他二人とともに校舎に戻った。
その後、俺は痛みで顔をゆがませながらもよろよろと立ち上がると、剣や鉄板を〈創造〉で塵にした。
「はぁ……」
俺は深くため息をついた。
だが、俺は今の出来事を「辛い」や、「苦しい」とは思っていない。いや、思えなくなってしまった。
何故ならそれは俺の「日常」となってしまったからだ……
やり返したいと思ったことはある。だが、相手の親は俺の親よりも爵位が上。しかもレインは次期皇帝だ。
俺がもしあいつらを怪我させてしまったら、裁判の時に不利になるのは俺の方だ。
それに、あの状況で戦ったとしても負けるのは俺の方だろう。
レインは〈強化〉という自身の身体能力を大幅に上昇させるスキルを持っている。戦闘系のスキルの中でも攻守万能なスキルとして重宝されているものだ。
一方俺は器用貧乏と完全劣化……
そう。俺のもう一つのスキル〈操作〉は〈空間操作〉の完全劣化と呼ばれているスキルなのだ。
〈操作〉というのは物体を浮かせたり、移動させたりするスキルだ。
だが、〈空間操作〉も空間を操作することでそれと同じことが出来る。
それどころか少し離れた場所へ転移出来たり、空間を拡張して、手のひらサイズの小さなポーチの中にその二十倍の物を入れることも出来る。
「はぁ……」
俺は今日何度目か分からないため息をつくと校舎に戻った。
「……ただいま帰りました」
俺は学園から歩いてハルドン伯爵館に帰った。
俺は貴族なので、普通は馬車で帰るのだが、父上が「民の為にも節約は大事だ」と言い、俺用の馬車を買ってくれない。
しかし、兄上や姉上は自分用の馬車を持っている。
それについてはどうなのかと聞こうと思ったことはあるのだが、燃えるように赤い髪と瞳を持ち、鍛え上げられた肉体を持っている父上は威圧感がある。
そんな父上に文句を言うのは気が引けてしまう。
それに、俺は馬車を買ってくれない本当の理由に気が付いていた。
父上は俺のことが嫌いだから買わせてくれないのだ――
しかし、将来の為に学園に通わせもらっているし、生活も不自由なことは特にないので文句は一切言っていない。
「そういえば明日で十五歳になるな……」
帝国では十五歳で成人を迎える。
ハズレスキルのせいで家族からは蔑まれているが、この日ぐらいは祝ってくれると期待していた。
だが、この時の俺は知らなかった。
父上からあんな事を言われるなんて……
====================
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エルメス帝国に仕える貴族、ガルゼル・フォン・ハルドン伯爵の三男だ。
銀髪で蒼穹の瞳を持ち、引き締まった肉体を持つ俺は自分でいうのもなんだがかなりの美少年だ。
そんな俺は、千万人に一人とされているスキルを二つも身に宿す特別な人間だ。だが、俺は家族から蔑まれ、学園ではいつもいじめられている。
その理由は俺が持つスキルが二つともハズレと呼ばれるものだったからだ。
スキルは基本親や祖父母から遺伝することがほとんどだ。それなのに二つとも全く遺伝せず、尚且つハズレなのだから蔑まれることも仕方がないと思っていた。
そう。あの日、家族に殺されかけるまでは――
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「はっはっ」
俺は今、エルメス帝国学園の中庭でひたすら剣を振っていた。
この鉄剣は俺のスキル、〈創造〉によって作られたものだ。
〈創造〉それはこの世界でハズレと呼ばれ、馬鹿にされているスキルの一つだ。
〈創造〉というのは素材からあらゆるものを作るスキルだ。
また、素材がなくともある程度の素材なら自力で生み出すことも出来る。
一見凄そうに見えるこのスキルだが、このスキルは例えるなら器用貧乏だ。
例を挙げるとするならば、
『金属類を素材にして作るのなら〈鍛冶〉のスキルの方が良い』
『石材を素材にして作るのなら〈石工〉のスキルの方が良い』
『素材を生み出すのなら〈生産〉のスキルの方が良い』
この辺りが有名どころだろう。
他にも〈裁縫〉や〈木工〉などでそれよりも劣っていると馬鹿にされている。
それでも俺は〈創造〉を極め続けた。
そして、そのかいがあってか、俺は〈創造〉のスキルでは作れないとされていた水と火を作ることが出来たのだ。
まあ、出来たと言っても、頭サイズの火球や水球を作れる程度だ。しかも燃費がめっちゃ悪い……
それに、それぞれ〈水術士〉と〈火術士〉のスキルがあるせいで、結局器用貧乏であることに変わりはなかった。
「はぁ……来たか」
剣を振る俺に近づいてきたのは例の金髪三人衆だ。
中央にいる憎たらしいほどのイケメンがレイン・フォン・エルメス。ライン皇帝の長男で、次期皇帝でもある超お偉いさんだ。
レインは偉そうに前髪を右手でかき上げながら周囲からの視線に左手を振りながら応えていた。
そして、その両脇にいるイケメンはハルス・ディ・カリュディスと、ネイル・ディ・カリュディスだ。二人は双子であり、その二人の親はガルド公爵というこの国で二番目に権力を持っているお偉いさんだ。
そんなお偉いさん三人衆は俺の前に立つなり二ヤリと笑った。
そして、それと共にレインは俺の首をつかむと、地面に叩きつけてきた。
「がはっ」
俺は咄嗟に〈創造〉で砂の山を背後に作ることで衝撃を和らげたが、首をつかまれたことで俺は何度か咳込んだ。
そんな俺を見て、ハルスとネイルは薄笑いを浮かべ、レインは舌打ちをした。
「ちっ器用貧乏と完全劣化のくせに生意気だな」
レインはそう吐き捨てると、地面に倒れた俺の脇腹を蹴った。
だが、俺は即座に〈創造〉で鉄板を作って防いだ。
「ちっ 無駄にいい反応しやがって……ま、スキルを使って所詮はその程度か。俺が直々にスキルってやつを教えてやるよ」
そう言うと、レインは再び俺の脇腹を蹴った。
俺はさっきとは比べ物にならないほどの力で蹴られたことで二十メートルほど飛ばされ、校舎の壁にたたきつけられた。
「ぐ……」
俺は痛みでその場に座り込み、うずくまった。
「へっ これがスキルってやつだ。分かったか?」
レインはそんな俺を見て満足気な表情をすると他二人とともに校舎に戻った。
その後、俺は痛みで顔をゆがませながらもよろよろと立ち上がると、剣や鉄板を〈創造〉で塵にした。
「はぁ……」
俺は深くため息をついた。
だが、俺は今の出来事を「辛い」や、「苦しい」とは思っていない。いや、思えなくなってしまった。
何故ならそれは俺の「日常」となってしまったからだ……
やり返したいと思ったことはある。だが、相手の親は俺の親よりも爵位が上。しかもレインは次期皇帝だ。
俺がもしあいつらを怪我させてしまったら、裁判の時に不利になるのは俺の方だ。
それに、あの状況で戦ったとしても負けるのは俺の方だろう。
レインは〈強化〉という自身の身体能力を大幅に上昇させるスキルを持っている。戦闘系のスキルの中でも攻守万能なスキルとして重宝されているものだ。
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〈操作〉というのは物体を浮かせたり、移動させたりするスキルだ。
だが、〈空間操作〉も空間を操作することでそれと同じことが出来る。
それどころか少し離れた場所へ転移出来たり、空間を拡張して、手のひらサイズの小さなポーチの中にその二十倍の物を入れることも出来る。
「はぁ……」
俺は今日何度目か分からないため息をつくと校舎に戻った。
「……ただいま帰りました」
俺は学園から歩いてハルドン伯爵館に帰った。
俺は貴族なので、普通は馬車で帰るのだが、父上が「民の為にも節約は大事だ」と言い、俺用の馬車を買ってくれない。
しかし、兄上や姉上は自分用の馬車を持っている。
それについてはどうなのかと聞こうと思ったことはあるのだが、燃えるように赤い髪と瞳を持ち、鍛え上げられた肉体を持っている父上は威圧感がある。
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それに、俺は馬車を買ってくれない本当の理由に気が付いていた。
父上は俺のことが嫌いだから買わせてくれないのだ――
しかし、将来の為に学園に通わせもらっているし、生活も不自由なことは特にないので文句は一切言っていない。
「そういえば明日で十五歳になるな……」
帝国では十五歳で成人を迎える。
ハズレスキルのせいで家族からは蔑まれているが、この日ぐらいは祝ってくれると期待していた。
だが、この時の俺は知らなかった。
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