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第三章

第二十二話 なに遊んでだお前らー!

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 あれから、俺は安全第一でアジト内を監視して、想定外の事が起きて無いか、夜まで監視を続けた。
 そして、夜まで監視を続けた俺は、レイン殿下に言われた通り、次の日に備えて早めに寝た。
 明日、世界の命運を決める戦いが起こると知っているせいで、中々眠れないかな……と、思ったのだが、案外直ぐに寝る事が出来たのだが、もしかして俺は自分で気づいていなかっただけで、相当疲れていたのではないだろうか?

「あー……良く寝た」

 そんな事を朝っぱらから思いながらも、教会の治癒院で無事起床できた俺は、ベッドの上で身体をぐぐぐと伸ばした。
 こんなに寝たのはいつぶりだろうか……と思ったが、そういや治癒院に運び込まれたときはまるまる1日寝ていたんだったな。
 ニーズヘッグの時もまる1日寝てたし、そう考えると意外と珍しい事ではない……のか?

「ま、そんな事はさて置き、今何時だ?」

 そう言って、俺は壁にかけられている魔導時計を見やる。
 すると、その時計の針は6時11分を指していた。

「うん。まあ、丁度いいね。それじゃ、見るか」

「きゅきゅきゅっ!」

 俺はそう言ってネムを胸に抱きかかえると、再びごろりとベッドに転がった。
 そして、奴らのアジトに居る超ミニミニスライムに、視線を移す。

「さて。何か変わっている事は……」

 そう言って、俺は超ミニミニスライムでアジト内を散策する。
 中には相変わらず、クスリをキメている野郎どもがうじゃうじゃ居た。

「はァ、はァ、はァ……いよいよだ」

「漲るぜェ……」

 そんな事を言いながら、完全にエネルギー補給だけが目的となっている食事をしている奴らを見て。

「キモっ……こわっ……」

 俺は思わず、そんな言葉を漏らしてしまうのであった。

「……ちょっと逃げよ。それで、幹部はどこに……?」

 この激ヤバ集団から一刻も早く目を逸らしたかった俺は、即座に幹部が昨日いた場所へ、超ミニミニスライムを向かわせた。
 すると、そこには円卓に付き、椅子に座る3人の幹部の姿があった。
 彼らは皆、円卓上で何かの作業をしているようにも見える。

「何をしているんだ……?」

 俺は訝し気にその様子を見ると、超ミニミニスライムをもう1匹召喚した後、”召喚”を利用して上に飛ばし、壁に張り付かせる。

「よし。ここなら見えるだろう」

 そう言って、俺は3人が手に持っているものを見た。
 それは――

「……トランプ?」

 生活に余裕がある人にとっては、割とメジャーな娯楽用品である、トランプであったのだ。
 すると、ネイアがそろりそろりとグーラが持つトランプに手を伸ばした。そして、その中から――ジョーカーを手に取り、自身の手札に入れる。

「うっぐ……」

「「ぶっ」」

 直後、渋い顔をするネイアと、そんなネイアの反応を見て、思わずといった様子で噴き出すグーラとザイール。
 その瞬間、俺は彼らが何をやっているのかを完全に理解した。

「……おい。これ、ババ抜きかよ」

 そして、ツッコミを入れるかのようにそう吐き捨てる。
 おいおい。こいつら、なに呑気にそんな事やってんだよ。

「なんか腹立つぅ……」

 俺は頬を引き攣らせながらそんな言葉を口にすると、「でも幹部だし、ポロッと重要な情報を落としてくれないかな~」と思い、暫くの間、会話を盗み聞きしてみる事にした。
 だが……

「お前、ほんっと分かりやすいなぁ……ほれっ……え?」

「ぷぷっ あ・さ・は・か」

「まあ、だろうな。という事で、今回はお前の負けだ。ザイール」

「くっ……次こそはっ!」

「そうか。なら次は大富豪をやるとしよう。5ラウンド制のだ」

「おー……手札こんな感じかぁ」

「では、ジョーカー」

「これには、スペード3返しというものが存在する」

「はい、ざーこ。ザー君。ザーコ君」

「うぜェ……お、じゃあ、革命」

「ザー君んんん!!!!!」

「煽りすぎた、お前が悪い」

 ……うん。

「マジで遊んでるだけじゃねーか」

 緊張を解す為なのか、それとも人生最期に遊んでおきたいとか、そういうものなのだろうか……?
 ただ1つ分かったのは、これ以上ここに居ても、情報は集められそうにないという事だ。

「はぁ……ん? ああ、レイン殿下か」

 すると、時間になったのかレイン殿下から連絡が来た。
 俺はいつものようにスライムとの”繋がり”を強化すると、口を開く。

「レイン殿下。作戦についてでしょうか?」

「ああ。では、手短にシンがすべき事を告げよう」

 そんな前置きの後に、レイン殿下は次の事を口にした。

「シンには戦場を常時俯瞰しながら見て、少しでも気になる事があったら私に報告する役目を与える。また、戦闘の手助けも出来るようならして欲しい。作戦開始時間は、変わらず7時20分だ」

「分かりました」

「ああ。では、健闘を祈る」

 それで、話は終わってしまった。
 どうやら向こうは向こうで、今まで以上にバタバタしているようだ。

「さてと。突入開始まで、30分を切ったか。俺はとにかく、やれる限りの事をするとしよう」

 そう言うと、俺はアジト内に少しずつスライムを配置していくのであった。
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