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第三章

第八話 壮絶な戦い

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 一体どれほどの時間が経過しただろうか。
 もう、余計な事を考える余裕すら無くなった俺は、ただひたすらにニーズヘッグと戦い続けていた。

「驍ェ鬲斐せ繝ォ繝顔?繝ッ繧キ繧、驍ェ鬲斐せ繝ォ繝顔?繝ッ繧キ繧、驍ェ鬲斐せ繝ォ繝顔?繝ッ繧キ繧、驍ェ鬲斐せ繝ォ繝顔?繝ッ繧キ繧、――!!!!」

「「「「「きゅきゅきゅ――!!!!」」」」」

 あれから、スライムは一切数を減らす事無く、ニーズヘッグの身を溶かし続けていた。一方、ニーズヘッグは長い事襲われ続けたせいか、最初と比べて明らかに動きが鈍っているように見える。
 問題は俺だ。

「……エネルギー、補給」

「きゅきゅきゅ!」

 俺はネムに頼んでリュックサックから保存食を持ってきて貰うと、それを口に放り込んでエネルギー補給をする。そうして体力を少しでも回復させた俺は、引き続きニーズヘッグと戦い続けた。

「……削れてきたな」

 ここに来て、ようやくニーズヘッグ側の様子に変化が起きた。
 なんと、目で見えるレベルで身体の一部に細い穴が出来ていたのだ。
 これは、スライムが何十万何百万と溶かし続けた成果によるもの。
 俺はその小さな穴を目ざとく発見すると、そこにスライムを入れ、内部へ浸食を始めた。
 その時だった。

「逞帙う逞帙う逞帙う逞帙う逞帙う逞帙う逞帙う逞帙う逞帙う逞帙う逞帙う逞帙う逞帙う逞帙う逞帙う逞帙う逞帙う逞帙う逞帙う逞帙う――!!!!」

 ニーズヘッグが、今までにないぐらい悍ましい咆哮を上げ始めた。
 その様子に危機感を覚えた俺は、ニーズヘッグの動向により意識を向ける。
 すると案の定、ニーズヘッグが――変わった。

「譁ャ繝ャ譁ャ繝ャ譁ャ繝ャ譁ャ繝ャ譁ャ繝ャ譁ャ繝ャ譁ャ繝ャ譁ャ繝ャ譁ャ繝ャ譁ャ繝ャ譁ャ繝ャ譁ャ繝ャ譁ャ繝ャ譁ャ繝ャ譁ャ繝ャ譁ャ繝ャ譁ャ繝ャ譁ャ繝ャ譁ャ繝ャ譁ャ繝ャ譁ャ繝ャ譁ャ繝ャ!!!!!!」

 黒板に爪を引き立てる様な、甲高い耳障りな咆哮を上げた直後。
 ニーズヘッグの身体中に、ピシピシッと亀裂が生じ始めた。

「――!?」

 その動きに嫌な予感を覚えた俺は、即座に”召喚”を駆使してスライムたちを避難させた。
 刹那。

 ズシャシャシャシャ――

 なんと、ニーズヘッグは身体中から、無数の黒い刃を突き出させたのだ。
 そうして刃で全身を身を包んだニーズヘッグは、仕返しとばかりに避難したスライム集団へタックルをかましてくる。

「……なるほど。悪手だな」

 だが、そのタックルを当然のように躱させた俺は、直ぐに弱点を見抜くと、刃と刃の隙間にスライムたちを召喚し、溶解を再開させる。

「確かに溶かせる面積は減った。だがな。刃と鱗の接続部位――結構脆いぞ?」

 それは、自明の理だった。
 何かと何かの接続部位は、どう考えても脆い。普通に考えれば分かる事だ。
 だったらそこを溶かして刃と鱗を切り離し、それによって生まれるであろう隙間を溶かせば――やれる。

「ははは――さあ、死ねよ。くたばれ、ニーズヘッグ! そしてスライムの糧となれ!」

 長い事戦い続け、若干頭がおかしくなっている俺は、そう言って口元を不気味に釣り上げた。
 そして、より一層苛烈にニーズヘッグを攻め立てる。

「繝輔じ繧ア繝ォ繝翫ヵ繧カ繧ア繝ォ繝翫ヵ繧カ繧ア繝ォ繝翫ヵ繧カ繧ア繝ォ繝翫ヵ繧カ繧ア繝ォ繝翫ヵ繧カ繧ア繝ォ繝翫ヵ繧カ繧ア繝ォ繝翫ヵ繧カ繧ア繝ォ繝――!!!!!!」

「「「「「きゅきゅきゅきゅきゅ――!!!!!」」」」」

 より激化する戦い。
 俺はここが戦いにおける分水嶺だと理解しながら、最後の思考加速ソウトアップの魔法石を砕いた。
 そしてより繊細に、より早く、より確実に、溶かし続けた。
 それを、長く長く続けていると――

 バキッ

 そんな音を立てて、1本の刃が零れ落ちた。

 バキッバキッバキッ――バキバキバキバキバキッ――

 そして、それを皮切りに次々と、漆黒の刃が脱落し始めた。

「ハハッ――終わりだァ――」

 俺は目を血走らせながら、狂気的な笑みを宿すと、刃が突き出ていた場所に、スライムを潜り込ませた。
 そして、変異種スライムをヒット&アウェイさせながら、多方面からニーズヘッグの内部へと、じわじわじわじわ浸食していく。

「謌代Υ谿コ繧ケ繝頑?繝イ谿コ繧ケ繝頑?繝イ谿コ繧ケ繝頑?繝イ谿コ繧ケ繝頑?繝イ谿コ繧ケ繝頑?繝イ谿コ繧ケ繝頑?繝イ谿コ繧ケ繝頑?繝イ谿コ繧ケ繝――!!!!!」

 すると、次に聞こえてくるのは絶叫とも呼べる声。
 ニーズヘッグが命の危機を感じ始めたのだ。それが、肌身で感じ取れる。

「ハハ――獣は死の間際にしぶとく暴れまわるらしいが――そんな事はさせねぇぞ?」

 今だ。今こそ、を進める時だ。
 戦況からそう判断した俺は、出し惜しみをすること無く、ニーズヘッグの魔石がある胸部を集中攻撃し始めた。

「豁サ繝梧ュサ繝梧ュサ繝梧ュサ繝梧ュサ繝梧ュサ繝梧ュサ繝梧ュサ繝梧ュサ繝梧ュサ繝梧ュサ繝梧ュサ繝梧ュサ繝梧ュサ繝梧ュサ繝梧ュサ繝梧ュサ繝梧ュサ繝梧ュサ繝梧ュサ繝梧ュサ繝梧ュサ繝梧ュサ繝梧ュサ繝――!!!!!」

 直後、悶え暴れるニーズヘッグ。
 そりゃそうだ。魔石を集中攻撃されたら、誰だってこうなる。
 だからこそ、確実に仕留められるこの時まで、バレない程度にしか溶かしていなかったのだから。

「だがなあ――もう終わりだよニーズヘッグ。スライムによって溶かされ、喰いつくされろぉ」

 俺は壮絶な笑みを浮かべながら、眼前に見えるニーズヘッグへ、死の宣告を下した。
 それから――僅か15分で。

「鬥ャ鮖ソ繝企ヲャ鮖ソ繝企ヲャ鮖ソ繝企ュ泌鴨繝イ繝ィ繧ウ繧サ鬲泌鴨繝イ繝ィ繧ウ繧サ鬲泌鴨繝イ繝ィ繧ウ繧サ蝟ー繝ッ繧サ繝ュ蝟ー繝ッ繧サ繝ュ蝟ー繝ッ繧サ繝ュ!!!!!――蝟ー繝ッ繧サ――繝ュ……」

 ドオオオオオン――

 最後の咆哮を上げたニーズヘッグが、大きな地響きを上げて力なく倒れ伏したのだ。

「勝ったァ……スライム、奴の全てを、喰らい、つく、せ……」

「きゅー!!!!」

 そして俺も、スライムたちに最後の命令を下したのと同時に、ネムの悲鳴を聞きながら、意識を手放したのだった。
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