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第二章
第三十九話 突入に向けた作戦会議
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レイン殿下と話をした、次の日の午前。
俺の本体は、相も変わらず宿に居た。
だが、その意識は別の所にある。
「ん~そろそろ決まりそうだなぁ……」
天井に張り付かせた超ミニミニスライム越しに、会議室で繰り広げられる作戦会議を傍観していた俺は、ポツリと呟いた。
ここは、王城にある会議室。
そして、今行われている作戦会議とは勿論、”祝福無き理想郷”のアジトらしき場所に突入する為のものだ。
「いや~にしても、随分と豪華な面子だね~」
そう言って、俺は会議室に居る面々を見やると、最後にそれらの中心に居るレイン殿下を見やる。
今回、別に俺はこの会議にお呼ばれしているという訳では無い。ただ純粋に、どんな作戦を立てるのか、気になっただけだ。
「別に、作戦に関しての心配はしてないんだよね。……つーか、俺が心配する方が烏滸がましいっての」
俺よりも、会議室に居る面々の方が、よっぽど良い作戦を立てられる。
それに俺って、こういう人を動かす作戦は得意じゃ無いんだよね。出来るのは、俺個人とスライムによる作戦だけだ。
元貴族のくせして人を動かすのが苦手とか、何言ってんだってなるかもだが……事実なんだから仕方ない。
そう思う中、一方下では――
「やはり、突入部隊はここをこうした方が良さそうだな」
「ああ。そして、転移妨害をする人員は、この8か所だ。ここまでで、異論は?」
「……無い。だが、やはりどうしても問題になってくるのは、相手側の戦力だ」
「だね。この面々なら、基本負ける事は無い。だが、これだけ入念に隠されたアジトだ。罠も相当数ある事だろう」
「それは皆、重々承知していることだろう? そして、その懸念はどうやっても覆せる事では無い。それに、この機を逃せば、これだけ抜かりない連中の事だ。直ぐに逃げるに違いない」
「だな。どの道、あまり時間は残されていない」
「ああ。では、話を戻そう。最後に、ここは――」
……まあ、見ての通り、会議はだいぶ終盤に差し掛かっていた。
「正直に言えば……言ってる事の半分は理解できない……ってね」
俺、どれだけこういうのに無理解なんだよ。
でも、しゃーないじゃん。
俺って、自分がやろうって思った事以外は、マジでやろうとしない主義なんだからさ。
だけど、戦いに身を置く者として、この作戦が結構緻密に立てられているってのは、戦闘勘的なやつで、分かる。
そして、何より――
「突入作戦に参加する面子が、豪華過ぎんだよ」
そう。戦闘について一切分からない、のほほんと生きている一般市民でも、「あ、これなら成功するじゃん」って思うレベルの面子なのだ。
まず総指揮官が、メルティ・フォン・ザーラ伯爵。国王派に与しており、代々軍の指揮官を輩出する名門貴族ザーラ家の当主だ。
そして、彼の指揮の下動くのは、王国最高峰の魔法師部隊として名高い”特別魔導隊”より、15名の後衛魔法師。
王族を主に護衛する近衛騎士団より、近衛騎士団副団長のイグニス・フォン・レーザルト。
近衛騎士団と並ぶ、王国を代表する騎士団――王国騎士団より、上級騎士20名。
それらに加え、レイン殿下に協力する貴族家が、それぞれ足りない分の人員を補完する……といった感じだ。
「おおよそ、レイン殿下が早急に集められる全戦力って感じだな」
無論、やろうと思えばこれ以上集められるのだろうが――”祝福無き理想郷”に感づかれ、罠を張られる可能性を考えると、ここまで……って感じか。
レイン殿下の”万能感知”と生来の眼をもってすれば、裏切者が現れる心配も無いし、安心だね。
「いや~……にしても、ここまで本気とはね。これで、”何の成果も、得られませんでしたー!”だったら、とんでもねぇな」
だが、そうなる可能性は限り無く低いと、俺は考える。
まず、今のレイン殿下たちの動きに気付く事が難しい。
そして、もし気づかれていたとしても、あの地下アジトを何の痕跡も残さずに、密かに消す事も難しい……ってより、無茶だ。
故に、どの道何かしらの大きな成果はあるはずだ。それなら、事が済んだ後に彼らが他所から文句を言われるなんて事も、無いだろう。
「……よし。では、これで行くとしよう。作戦開始は、明日の午前10時18分。皆、健闘を祈る」
「「「「「はっ 分かりました。レイン殿下」」」」」
やがて、レイン殿下の締めの言葉を以てして、秘密裏に行われた会議が終わった。
その後、次々と人が退出していく中――
「……言われた通り、慢心せずに本気で行くよ」
ちらりと天井を一瞥して、そう言うレイン殿下の姿を見た。
どうやら、最初からバレていた感じっぽい。
まあ、レイン殿下を誤魔化せる訳が無いか。
「……ま、頑張ってください」
ガチ戦闘は、俺の本分じゃないからさ。
そんな事を思いながら、俺は超ミニミニスライムとの”繋がり”を切った。
「さてと。一応、突入の様子は見とこうかな。俺じゃどうやっても作戦の邪魔になる気しかしないから、離れた場所からスライム越しに見るだけだけど」
そう言って、俺はゴロリとベッドに横になった。
そして、次の日――
俺の眼前には、指揮官を置いて、脱兎の如く無様に敗走する突入部隊の人たちの姿があった。
俺の本体は、相も変わらず宿に居た。
だが、その意識は別の所にある。
「ん~そろそろ決まりそうだなぁ……」
天井に張り付かせた超ミニミニスライム越しに、会議室で繰り広げられる作戦会議を傍観していた俺は、ポツリと呟いた。
ここは、王城にある会議室。
そして、今行われている作戦会議とは勿論、”祝福無き理想郷”のアジトらしき場所に突入する為のものだ。
「いや~にしても、随分と豪華な面子だね~」
そう言って、俺は会議室に居る面々を見やると、最後にそれらの中心に居るレイン殿下を見やる。
今回、別に俺はこの会議にお呼ばれしているという訳では無い。ただ純粋に、どんな作戦を立てるのか、気になっただけだ。
「別に、作戦に関しての心配はしてないんだよね。……つーか、俺が心配する方が烏滸がましいっての」
俺よりも、会議室に居る面々の方が、よっぽど良い作戦を立てられる。
それに俺って、こういう人を動かす作戦は得意じゃ無いんだよね。出来るのは、俺個人とスライムによる作戦だけだ。
元貴族のくせして人を動かすのが苦手とか、何言ってんだってなるかもだが……事実なんだから仕方ない。
そう思う中、一方下では――
「やはり、突入部隊はここをこうした方が良さそうだな」
「ああ。そして、転移妨害をする人員は、この8か所だ。ここまでで、異論は?」
「……無い。だが、やはりどうしても問題になってくるのは、相手側の戦力だ」
「だね。この面々なら、基本負ける事は無い。だが、これだけ入念に隠されたアジトだ。罠も相当数ある事だろう」
「それは皆、重々承知していることだろう? そして、その懸念はどうやっても覆せる事では無い。それに、この機を逃せば、これだけ抜かりない連中の事だ。直ぐに逃げるに違いない」
「だな。どの道、あまり時間は残されていない」
「ああ。では、話を戻そう。最後に、ここは――」
……まあ、見ての通り、会議はだいぶ終盤に差し掛かっていた。
「正直に言えば……言ってる事の半分は理解できない……ってね」
俺、どれだけこういうのに無理解なんだよ。
でも、しゃーないじゃん。
俺って、自分がやろうって思った事以外は、マジでやろうとしない主義なんだからさ。
だけど、戦いに身を置く者として、この作戦が結構緻密に立てられているってのは、戦闘勘的なやつで、分かる。
そして、何より――
「突入作戦に参加する面子が、豪華過ぎんだよ」
そう。戦闘について一切分からない、のほほんと生きている一般市民でも、「あ、これなら成功するじゃん」って思うレベルの面子なのだ。
まず総指揮官が、メルティ・フォン・ザーラ伯爵。国王派に与しており、代々軍の指揮官を輩出する名門貴族ザーラ家の当主だ。
そして、彼の指揮の下動くのは、王国最高峰の魔法師部隊として名高い”特別魔導隊”より、15名の後衛魔法師。
王族を主に護衛する近衛騎士団より、近衛騎士団副団長のイグニス・フォン・レーザルト。
近衛騎士団と並ぶ、王国を代表する騎士団――王国騎士団より、上級騎士20名。
それらに加え、レイン殿下に協力する貴族家が、それぞれ足りない分の人員を補完する……といった感じだ。
「おおよそ、レイン殿下が早急に集められる全戦力って感じだな」
無論、やろうと思えばこれ以上集められるのだろうが――”祝福無き理想郷”に感づかれ、罠を張られる可能性を考えると、ここまで……って感じか。
レイン殿下の”万能感知”と生来の眼をもってすれば、裏切者が現れる心配も無いし、安心だね。
「いや~……にしても、ここまで本気とはね。これで、”何の成果も、得られませんでしたー!”だったら、とんでもねぇな」
だが、そうなる可能性は限り無く低いと、俺は考える。
まず、今のレイン殿下たちの動きに気付く事が難しい。
そして、もし気づかれていたとしても、あの地下アジトを何の痕跡も残さずに、密かに消す事も難しい……ってより、無茶だ。
故に、どの道何かしらの大きな成果はあるはずだ。それなら、事が済んだ後に彼らが他所から文句を言われるなんて事も、無いだろう。
「……よし。では、これで行くとしよう。作戦開始は、明日の午前10時18分。皆、健闘を祈る」
「「「「「はっ 分かりました。レイン殿下」」」」」
やがて、レイン殿下の締めの言葉を以てして、秘密裏に行われた会議が終わった。
その後、次々と人が退出していく中――
「……言われた通り、慢心せずに本気で行くよ」
ちらりと天井を一瞥して、そう言うレイン殿下の姿を見た。
どうやら、最初からバレていた感じっぽい。
まあ、レイン殿下を誤魔化せる訳が無いか。
「……ま、頑張ってください」
ガチ戦闘は、俺の本分じゃないからさ。
そんな事を思いながら、俺は超ミニミニスライムとの”繋がり”を切った。
「さてと。一応、突入の様子は見とこうかな。俺じゃどうやっても作戦の邪魔になる気しかしないから、離れた場所からスライム越しに見るだけだけど」
そう言って、俺はゴロリとベッドに横になった。
そして、次の日――
俺の眼前には、指揮官を置いて、脱兎の如く無様に敗走する突入部隊の人たちの姿があった。
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