39 / 104
第二章
第二十三話 新装備と新魔法
しおりを挟む
”雷神の大槌”の面々を先へと向かわせた俺は、そっと視線を下に落とした。
そして、今右手に握られている物を見やる。
「まさか、こんなところで指輪型の魔法発動体を手に入れられるとは、思わなかった」
そう言って、小さく口角を上げる俺。
ああ、これは嬉しい。
指輪型の魔法発動体は、杖型の魔法発動体と比べてコンパクトな分、値段も段違いなんだ。
杖型の方でも安くて10万セル、高いと数千万セルにもなる。
だが、指輪型だと安くても500万セル、高いと数億セルにもなるのだ。
無論、国宝レベルの品であれば、杖型指輪型問わずに数十億円もの価値があるが……これは無駄に豪華な素材を使ってる感が否めないし、使用している魔石がそれこそ伝説クラスのドラゴンで、いくら金を積もうが作れない感じなので、除外とする。
「さて、早速使用感を見てみるか」
そう言って、俺は指輪型の魔法発動体を右手人差し指にはめた。
流石に、装備しただけで何かが違う!……なんて事は無いか。
さて、そんな事より実験体は近くに居るかなぁ……?
「……み~つけた」
某教育番組を思わせるような言葉。
それと同時に40メートル先の脇道から姿を現したのは、体長3メートル程の銀毛の狼――シルバーウルフ。
数は……4頭か。
「グルアアァ!!!」
流石はBランク下位――ここら一帯で出現する魔物の中では最上位と言うべきか、反応が早い。そして、動きも。
あっという間に詰めてくる。
「あの体毛を魔鋼製の剣で斬り裂くのは、今の俺じゃ物理的に不可能だからな。亜空間を開け」
そう言って、俺は即座に空間収納からミスリルの剣を取り出すと、構えた。
「グルルアアアア!!!」
先頭に居た2頭が、俺の身体を嚙み砕かんと、その鋭い牙を光らせる。
直後、俺の姿は目の前から消えていた。
「グルルァ!?」
無駄に知能がある故の混乱。それが、命取りだ。
「はっ」
無詠唱の空間転移で右前狼の真横に転移した俺は、剣身に魔力を込めると、首へ一閃した。
それだけで、シルバーウルフの首と胴が泣き別れとなる。
だが、それだけでは飽き足らず、俺は振り下ろしながら、再び無詠唱で転移した。
「グルァ……」
転移先は、左前狼の真横。丁度、今振り下ろしている剣が奴の首と接する場所だ。
どれ程の熟練者だろうが、ゼロ距離からの攻撃を避ける術はない。
こっちのシルバーウルフも、首を絶たれ、斃れ、塵となった。
ここまで、僅か1秒。
「「グルアア!!!」」
残るは2頭。
距離にして3.7メートルだ。
まだ、この剣の間合いの範囲外。
だが――
「昨日考えた新技。実践投入は初めてだ」
そう、ぼそりと呟くと同時に、俺はミスリルの剣を横なぎに振った。
「「グルアァ……!?」」
直後、間合いの外――であるにも関わらず、深々と2頭の頭部には裂傷が走っていた。
だが、致命傷ではあるもののまだ動けるようで、変わらずこっちへ向かってくる。
もっとも。
「それなら普通にやっても勝てるけどな」
そう言って、一閃。
2頭は今度こそ絶命し、塵となった。
墓標のように残される4つの魔石。
その中心で、俺はニヤリと笑った。
「すげぇ、使いやすかったな」
そう言って、俺はミスリルの剣を空間収納にしまうと、右手人差し指にはめられた指輪型の魔法発動体を優しく撫でる。
いや~ほんと凄いね。魔力の消費を押さえられているってことが、実感出来ちゃったよ。魔力も気持ち精密に操作出来たし。これ、多分1000万セルぐらいするんじゃないかな?
いやーカツア……ごほん。何でも無い。
「あと、新技もばっちり決まって大満足だ」
上の方で、一旦弱い魔物相手に試してからにしようと思っていたのだが、指輪型の魔法発動体を手に入れてしまった事で、つい気持ちが高ぶって、使ってしまったが……まあ、結果オーライだ。
「斬撃範囲を拡張する魔法……さしずめ、拡張斬撃って感じかな」
そして上機嫌なまま、ノリで昨夜完成した新魔法の名前を付ける。
そう。さっきの、間合い外からの斬撃――あれは、俺の新魔法によるものだ。
魔法書には一切載っていなかった、俺が自力で術式を組み上げた魔法。
その効果は、”空間を歪める事で剣身を伸ばす”――だ。
今まで離れた相手を剣で攻撃する時は、相手の所に転移門を開き、そこへ剣を入れなければならなかった。だが、これは転移門の発動を読まれていた場合、逆に危険だ。
相手が、その開いた転移門へ先に魔法を撃ち込んで来れば、こっちが攻撃を受けてしまう。今までは、隠蔽したり油断させたりしてやってのけて来たが、そういったリスクのない方法が欲しいと、冒険者になった時からずっと思っていた。
そうして生み出したのが、空間を歪めて剣身を伸ばす魔法――拡張斬撃と言う訳だ。
拡張距離に応じて必要魔力量は増えていくが、あの距離なら転移門を使うよりもずっと低コストだ。ただ、転移門みたく遠距離は出来ず、最長でも7メートルだし、そこまで長いと必要魔力量も格段に増える為、割かし使いどころに注意が必要な魔法となっている。
「さてと。確認も終わったし、行くか」
苦労して創った新魔法をまだまだ使いたい気持ちはやまやまだが、ダンジョン探索はお遊びじゃない。
俺は再びスライムの高速並列指揮に切り替えると、再び歩き始めた。
そして、今右手に握られている物を見やる。
「まさか、こんなところで指輪型の魔法発動体を手に入れられるとは、思わなかった」
そう言って、小さく口角を上げる俺。
ああ、これは嬉しい。
指輪型の魔法発動体は、杖型の魔法発動体と比べてコンパクトな分、値段も段違いなんだ。
杖型の方でも安くて10万セル、高いと数千万セルにもなる。
だが、指輪型だと安くても500万セル、高いと数億セルにもなるのだ。
無論、国宝レベルの品であれば、杖型指輪型問わずに数十億円もの価値があるが……これは無駄に豪華な素材を使ってる感が否めないし、使用している魔石がそれこそ伝説クラスのドラゴンで、いくら金を積もうが作れない感じなので、除外とする。
「さて、早速使用感を見てみるか」
そう言って、俺は指輪型の魔法発動体を右手人差し指にはめた。
流石に、装備しただけで何かが違う!……なんて事は無いか。
さて、そんな事より実験体は近くに居るかなぁ……?
「……み~つけた」
某教育番組を思わせるような言葉。
それと同時に40メートル先の脇道から姿を現したのは、体長3メートル程の銀毛の狼――シルバーウルフ。
数は……4頭か。
「グルアアァ!!!」
流石はBランク下位――ここら一帯で出現する魔物の中では最上位と言うべきか、反応が早い。そして、動きも。
あっという間に詰めてくる。
「あの体毛を魔鋼製の剣で斬り裂くのは、今の俺じゃ物理的に不可能だからな。亜空間を開け」
そう言って、俺は即座に空間収納からミスリルの剣を取り出すと、構えた。
「グルルアアアア!!!」
先頭に居た2頭が、俺の身体を嚙み砕かんと、その鋭い牙を光らせる。
直後、俺の姿は目の前から消えていた。
「グルルァ!?」
無駄に知能がある故の混乱。それが、命取りだ。
「はっ」
無詠唱の空間転移で右前狼の真横に転移した俺は、剣身に魔力を込めると、首へ一閃した。
それだけで、シルバーウルフの首と胴が泣き別れとなる。
だが、それだけでは飽き足らず、俺は振り下ろしながら、再び無詠唱で転移した。
「グルァ……」
転移先は、左前狼の真横。丁度、今振り下ろしている剣が奴の首と接する場所だ。
どれ程の熟練者だろうが、ゼロ距離からの攻撃を避ける術はない。
こっちのシルバーウルフも、首を絶たれ、斃れ、塵となった。
ここまで、僅か1秒。
「「グルアア!!!」」
残るは2頭。
距離にして3.7メートルだ。
まだ、この剣の間合いの範囲外。
だが――
「昨日考えた新技。実践投入は初めてだ」
そう、ぼそりと呟くと同時に、俺はミスリルの剣を横なぎに振った。
「「グルアァ……!?」」
直後、間合いの外――であるにも関わらず、深々と2頭の頭部には裂傷が走っていた。
だが、致命傷ではあるもののまだ動けるようで、変わらずこっちへ向かってくる。
もっとも。
「それなら普通にやっても勝てるけどな」
そう言って、一閃。
2頭は今度こそ絶命し、塵となった。
墓標のように残される4つの魔石。
その中心で、俺はニヤリと笑った。
「すげぇ、使いやすかったな」
そう言って、俺はミスリルの剣を空間収納にしまうと、右手人差し指にはめられた指輪型の魔法発動体を優しく撫でる。
いや~ほんと凄いね。魔力の消費を押さえられているってことが、実感出来ちゃったよ。魔力も気持ち精密に操作出来たし。これ、多分1000万セルぐらいするんじゃないかな?
いやーカツア……ごほん。何でも無い。
「あと、新技もばっちり決まって大満足だ」
上の方で、一旦弱い魔物相手に試してからにしようと思っていたのだが、指輪型の魔法発動体を手に入れてしまった事で、つい気持ちが高ぶって、使ってしまったが……まあ、結果オーライだ。
「斬撃範囲を拡張する魔法……さしずめ、拡張斬撃って感じかな」
そして上機嫌なまま、ノリで昨夜完成した新魔法の名前を付ける。
そう。さっきの、間合い外からの斬撃――あれは、俺の新魔法によるものだ。
魔法書には一切載っていなかった、俺が自力で術式を組み上げた魔法。
その効果は、”空間を歪める事で剣身を伸ばす”――だ。
今まで離れた相手を剣で攻撃する時は、相手の所に転移門を開き、そこへ剣を入れなければならなかった。だが、これは転移門の発動を読まれていた場合、逆に危険だ。
相手が、その開いた転移門へ先に魔法を撃ち込んで来れば、こっちが攻撃を受けてしまう。今までは、隠蔽したり油断させたりしてやってのけて来たが、そういったリスクのない方法が欲しいと、冒険者になった時からずっと思っていた。
そうして生み出したのが、空間を歪めて剣身を伸ばす魔法――拡張斬撃と言う訳だ。
拡張距離に応じて必要魔力量は増えていくが、あの距離なら転移門を使うよりもずっと低コストだ。ただ、転移門みたく遠距離は出来ず、最長でも7メートルだし、そこまで長いと必要魔力量も格段に増える為、割かし使いどころに注意が必要な魔法となっている。
「さてと。確認も終わったし、行くか」
苦労して創った新魔法をまだまだ使いたい気持ちはやまやまだが、ダンジョン探索はお遊びじゃない。
俺は再びスライムの高速並列指揮に切り替えると、再び歩き始めた。
550
お気に入りに追加
1,282
あなたにおすすめの小説
作業厨から始まる異世界転生 レベル上げ? それなら三百年程やりました
ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
第十五回ファンタジー小説大賞で奨励賞に選ばれました!
4月19日、一巻が刊行されました!
俺の名前は中山佑輔(なかやまゆうすけ)。作業ゲーが大好きなアラフォーのおっさんだ。みんなからは世界一の作業厨なんて呼ばれてたりもする。
そんな俺はある日、ゲーム中に心不全を起こして、そのまま死んでしまったんだ。
だけど、女神さまのお陰で、剣と魔法のファンタジーな世界に転生することが出来た。しかも!若くててかっこいい身体と寿命で死なないおまけつき!
俺はそこで、ひたすらレベル上げを頑張った。やっぱり、異世界に来たのなら、俺TUEEEEEとかやってみたいからな。
まあ、三百年程で、世界最強と言えるだけの強さを手に入れたんだ。だが、俺はその強さには満足出来なかった。
そう、俺はレベル上げやスキル取得だけをやっていた結果、戦闘技術を上げることをしなくなっていたんだ。
レベル差の暴力で勝っても、嬉しくない。そう思った俺は、戦闘技術も磨いたんだ。他にも、モノづくりなどの戦闘以外のものにも手を出し始めた。
そしたらもう……とんでもない年月が経過していた。だが、ここまでくると、俺の知識だけでは、出来ないことも増えてきた。
「久しぶりに、人間に会ってみようかな?」
そう思い始めた頃、我が家に客がやってきた。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます
銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。
死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。
そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。
そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。
※10万文字が超えそうなので、長編にしました。
異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした
せんせい
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。
その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ!
約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。
―――
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
生臭坊主の異世界転生 死霊術師はスローライフを送れない
しめさば
ファンタジー
急遽異世界へと転生することになった九条颯馬(30)
小さな村に厄介になるも、生活の為に冒険者に。
ギルドに騙され、与えられたのは最低ランクのカッパープレート。
それに挫けることなく日々の雑務をこなしながらも、不慣れな異世界生活を送っていた。
そんな九条を優しく癒してくれるのは、ギルドの担当職員であるミア(10)と、森で助けた狐のカガリ(モフモフ)。
とは言えそんな日常も長くは続かず、ある日を境に九条は人生の転機を迎えることとなる。
ダンジョンで手に入れた魔法書。村を襲う盗賊団に、新たなる出会い。そして見直された九条の評価。
冒険者ギルドの最高ランクであるプラチナを手にし、目標であるスローライフに一歩前進したかのようにも見えたのだが、現実はそう甘くない。
今度はそれを利用しようと擦り寄って来る者達の手により、日常は非日常へと変化していく……。
「俺は田舎でモフモフに囲まれ、ミアと一緒にのんびり暮らしていたいんだ!!」
降りかかる火の粉は魔獣達と死霊術でズバッと解決!
面倒臭がりの生臭坊主は死霊術師として成り上がり、残念ながらスローライフは送れない。
これは、いずれ魔王と呼ばれる男と、勇者の少女の物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。