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第一章
第四十話 事件の裏ではどんな感じ?
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無事、事態が収束した日の夕方。
ガリア侯爵の屋敷にて。
「はぁ? ”庭”が冒険者ギルドに見つかっただと……ッ!」
部下からの報告に、さしものガリアも動揺する――が、直ぐに冷静さを取り戻すと、思考を巡らせる。
「マズいな。本部に報告されたら、国の調査隊が派遣されるのは確定。そして、私の責任問題に……」
ガリア侯爵の管轄にある森で、大規模な麻薬の畑が見つかったとなれば、責任問題になりかねない。
そしたら、最悪国王派と貴族派の両方から叩かれ、多額の金を払うだけならまだマシな方、最悪降爵されかねない。
本来なら、事態終息の後直ぐにガリアが調査隊を派遣して畑を隠蔽し、万が一バレた時用に”取引相手”が全ての元凶である証拠を作りたかった。そして、責任問題にならないように、更に手を回す。そういう予定だった。
だが、予想外の一手で、大きく予定が崩れた。まさか、もう調査隊が――それも、ギルドマスターが直々に向かったとは思いもしなかった。ギルドマスターが相手では、調査結果を握りつぶすことも容易ではなくなる。
「くそっ それで、他に報告は?」
それ以外の報告に、何か打開策が無いかと思ったガリアは部下にそう問いかける。
「はい。その他の報告ですと……畑が見つかったことに、ガリア侯爵の元ご子息が関わっているようなのです」
「何だと!?」
部下の報告に、ガリアは憤怒の表情を露わにした
額に青筋が、ビキビキとくっきり浮かび上がる。
そして、地獄の底から這い出るような低い声で口を開く。
「あいつめ。邪魔しおって……それで、どんな邪魔をしやがったんだ? そいつは……」
「は、はい。ですが、残念ながら、詳しいことは分かりませんでした」
「ちっ 使えん奴め……だが、流石に我慢できない。あいつに、生まれてきたことを後悔させてやる……!」
ガリアは血が滲むほど、拳をぎゅっと握りしめた。
そして、感情のままに行動を始めた。
嘗てのガリアなら、この状況でこんな感情的な行動はしなかっただろうに――
◇ ◇ ◇
ウィルたちの戦いが終わった直後。
「あ、もう全滅しちゃったんだ」
1人の女性が、離れた場所から勝利に喜ぶ冒険者たちを見て、意外そうに言った。
彼女の予想では、もっと多くの魔物が出てくるはずだったのだが……
「うーん。まあ、初めての試みだったし、そう上手くはいかないか」
呑気に体を伸ばしながら、彼女はあっけらかんと言う。
彼女が所属する組織にとっては、別にこれが成功しようが失敗しようがあまり意味はない。
”あの計画”さえ成功すれば、別に問題は無いのだ。魔物を凶暴化させて人を襲わせるのは、その時間稼ぎに使えるかもしれないと思っただけ。
「ふふふ……さあてと。一応報告しなくちゃ」
そう言って、彼女はくるりと背を向ける。
「”祝福無き理想郷”の為に――」
そして、彼女はふっと消えた。
ガリア侯爵の屋敷にて。
「はぁ? ”庭”が冒険者ギルドに見つかっただと……ッ!」
部下からの報告に、さしものガリアも動揺する――が、直ぐに冷静さを取り戻すと、思考を巡らせる。
「マズいな。本部に報告されたら、国の調査隊が派遣されるのは確定。そして、私の責任問題に……」
ガリア侯爵の管轄にある森で、大規模な麻薬の畑が見つかったとなれば、責任問題になりかねない。
そしたら、最悪国王派と貴族派の両方から叩かれ、多額の金を払うだけならまだマシな方、最悪降爵されかねない。
本来なら、事態終息の後直ぐにガリアが調査隊を派遣して畑を隠蔽し、万が一バレた時用に”取引相手”が全ての元凶である証拠を作りたかった。そして、責任問題にならないように、更に手を回す。そういう予定だった。
だが、予想外の一手で、大きく予定が崩れた。まさか、もう調査隊が――それも、ギルドマスターが直々に向かったとは思いもしなかった。ギルドマスターが相手では、調査結果を握りつぶすことも容易ではなくなる。
「くそっ それで、他に報告は?」
それ以外の報告に、何か打開策が無いかと思ったガリアは部下にそう問いかける。
「はい。その他の報告ですと……畑が見つかったことに、ガリア侯爵の元ご子息が関わっているようなのです」
「何だと!?」
部下の報告に、ガリアは憤怒の表情を露わにした
額に青筋が、ビキビキとくっきり浮かび上がる。
そして、地獄の底から這い出るような低い声で口を開く。
「あいつめ。邪魔しおって……それで、どんな邪魔をしやがったんだ? そいつは……」
「は、はい。ですが、残念ながら、詳しいことは分かりませんでした」
「ちっ 使えん奴め……だが、流石に我慢できない。あいつに、生まれてきたことを後悔させてやる……!」
ガリアは血が滲むほど、拳をぎゅっと握りしめた。
そして、感情のままに行動を始めた。
嘗てのガリアなら、この状況でこんな感情的な行動はしなかっただろうに――
◇ ◇ ◇
ウィルたちの戦いが終わった直後。
「あ、もう全滅しちゃったんだ」
1人の女性が、離れた場所から勝利に喜ぶ冒険者たちを見て、意外そうに言った。
彼女の予想では、もっと多くの魔物が出てくるはずだったのだが……
「うーん。まあ、初めての試みだったし、そう上手くはいかないか」
呑気に体を伸ばしながら、彼女はあっけらかんと言う。
彼女が所属する組織にとっては、別にこれが成功しようが失敗しようがあまり意味はない。
”あの計画”さえ成功すれば、別に問題は無いのだ。魔物を凶暴化させて人を襲わせるのは、その時間稼ぎに使えるかもしれないと思っただけ。
「ふふふ……さあてと。一応報告しなくちゃ」
そう言って、彼女はくるりと背を向ける。
「”祝福無き理想郷”の為に――」
そして、彼女はふっと消えた。
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