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第一章

第十七話 初依頼を受ける

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 無事冒険者になった俺は、早速依頼を受けるべく、掲示板へと向かう。
 掲示板は2つあり、それぞれ常設と常設でないものに分かれていた。
 一先ずは常設の方をみておくとしよう。

「ん……多いのはやっぱりここ周辺の森に生息する魔物の討伐だな。時点で、冒険者ギルドの雑用……か。まあ、予想通りだな」

 常設に書かれていたのは、当たり前だがいつでも必要とされていることだった。そして、全体的に適正ランクが低めだ。

「さて、この中で受けるとしたら……まあ、ゴブリン討伐とかだよな」

 俺が目に付けたのは、ランクフリーの誰でも受けられるゴブリン討伐の依頼だ。
 一般人でも倒せるということで、報酬金は1匹あたり銅貨1枚。日本円で換算すると100円と、命を懸ける割には結構しょぼい。
 まあ、ゴブリンってあほみたいにいるから、あんまりその報酬金を高くし過ぎると、冒険者ギルドがカツカツになっちゃうからね。
 ああ、そういやこの世界のお金は紙幣でも電子マネーでもなくて、全て硬貨なんだよね。
 単位はセルで、1セル=1円みたいな感じだ。
 そして、小銅貨1枚が10セル。それ以降は、銅貨1枚が100セル、小銀貨1枚が1000セル、銀貨1枚が1万セル、小金貨1枚が10万セル、金貨1枚が100万セル、白金貨1枚が1000万セル……とった具合だ。
 おっと話が逸れた。
 それじゃ、次はこっちの掲示板を見てみるとしよう。

「ん……といってもあまりないな」

 既に良い依頼は朝に取られてしまっているようで、この時間帯にあるのは微妙なものしかなかった。
 その中で俺にぴったりなのは……

「薬草採取系の依頼だな」

 薬草採取系の依頼はいくつか残されており、報酬はどれも小銀貨3枚程度だ。
 ある程度の知識が必要なのにもかかわらず、ゴブリンを30匹倒した時と同じ額って言われると……まあ、選びたくないよね。
 だけど、さっき受付嬢に幅広く依頼をこなせっていう助言を貰ったし、この辺の知識なら割としっかりとしたものを持っているからな。

「じゃ、これにするか」

 俺はその中から、”フィルの花”を採取する依頼書を手に取った。これもランクフリーだから、受けることは出来る。

「あとは、これを受付に持っていくんだったな」

 受付嬢に言われたことを、今一度確認するようにそう口ずさむと、再び受付に向かった。
 そして、さっきと同じ受付嬢のもとへ行く。こういうのってどうしても話したことがある人の所へ行っちゃうんだよね。
 ほら、俺って結構人見知りだからさ。前世でも友達少なかったし……いや、ネットには沢山いたか。
 そんな悲しい過去を思い出しながらも、俺は受付嬢に声をかける。

「依頼を受けに来ました」

 そういって、俺は先ほど剥がした依頼書を受付嬢に手渡す。

「確認させていただきます」

 そう言って、受付嬢は受け取った依頼書をまじまじと見る。そして、眉をひそめた。

「シン君。1人で森に行くつもりかな? それだったら流石に危ないから止めたいんだけど……」

「あーそうですね。1人で行きます」

 止められると言われつつも、俺は平然と1人で行くと言った。
 こういうのって、仲間がいるって嘘ついたとしても、どうせすぐに発覚するんだよね。
 経験者は語るって言うだろ?
 つまりはそう言うことだ。

「確かにあの森にいる魔物と1対1なら勝てるでしょうね。でも、森では魔物が群れを作っているの。そうなると、どうしても1人では押し負けるのよ。挟み撃ちなんてされたら大変だし、森という視界が悪い場所だと不意を撃たれることもあるわ。だから、まずはパーティーを組みなさい。もしくは、それ以外の……例えばシュレインの中で出来る依頼をやるとかね」

 受付嬢は優しく諭すように1人で森へ入ることの恐ろしさと、どうすればいいのかを説明する。
 まあ、確かに正論だよ。正論なんだけど……
 パーティー組もうぜって誘えるような陽キャじゃねーんだよ。俺は。
 それに、あの森ぐらいだったら大丈夫だと思うんだよな。
 何せ、スライム越しに何年も観察してきた森だぞ?
 もう完璧と言ってもいいほど熟知している。
 まあ、実際にあの森には行ったことないんだけどね。
 何せ、屋敷を覆うように結界が展開されていて、転移が妨害されちゃうんだよ。
 一応頑張れば突破出来るのだが、そうしたら警報が鳴るんだよね。
 とまあ、そんな感じで身の心配はいらないのだが、事情を言ったところでどうせ信じないだろうし……
 ここは腹をくくって、入れてくれるパーティーを探そうかな?
 そう思った時、受付嬢の横に1人のおじさんが来た。見るからに、昔荒事をやってましたって感じの体格と顔つきだ。
 てか、この顔スライム越しに見たことあるぞ。
 確か――

「おう。サリナ。こいつは大丈夫だと思うぜ」

「ぎ、ギルドマスター!?」

 そう。ここ、シュレインの冒険者ギルドで1番偉いギルドマスターだ。
 そんなおじさん――ギルドマスターを見て、受付嬢は思わず声を上げた。
 だが、直ぐに心を落ち着かせると、ギルドマスターに問いを投げかける。

「ぎ、ギルドマスター。大丈夫とは一体? この子はまだ子供ですよ! 流石に1人では危ないです」

 ああ、そういや俺って子供だったな。
 前世の記憶があるせいで、よく自分が子供であることを忘れちゃうんだよね。
 そのせいで子供らしくないことを言って、慌てて修正したこともあったなぁ……
 すると、ギルドマスターは受付嬢の言葉に肩をすくめると口を開く。

「サリナじゃ分からんだろうが、こいつ結構強いぞ。そんじゃそこいらのCランク冒険者よりも、よっぽどこいつの方が強く見える。そもそも体の動かし方が子供じゃねぇ。こりゃ相当鍛錬を積んできたやつだ」

 ギルドマスターの言葉に、話を聞いていた受付嬢及びギルド職員が息を呑む。
 いやー中々俺のこと持ち上げるね。
 でも実際、俺って前世と今世を合わせれば、10年ぐらい剣やら竹刀やらを振ってたからな。普通に歳不相応の実力は持っている。
 魔法も、1番望んでいた空間属性魔法に限定すれば、結構やれるとおもう。闇属性と光属性はお察しの通り……かな。
 まあ、俺1番の強みは60万を超えるスライムだけどね。

「それに、冒険者は犯罪に関わること以外は全て自己責任だ。冷たい言い方にはなるが、あんまり肩持ちすぎるなよ」

「わ、分かりました。では、受理するので冒険者カードの提示をお願いします」

 受付嬢は何か言いたげな表情をしつつも、結局折れたようにそう言った。
 そして、俺は受付嬢の言葉に従って冒険者カードを提示する。

「……はい。問題ないですね。では……本当にお気をつけて。少しでも無理だと思ったら、直ぐに逃げてください。命あってのものですからね」

 受付嬢は心配からか、そう助言すると共に依頼書にハンコを押すと、依頼書と冒険者カードを俺に返す。
 何とか受理されたことに安堵しつつ、俺は「わかりました」と言ってその2つを受け取ると、リュックサックの中に突っ込む。
 そして、そのまま踵を返し、受付を後にした。
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