【完結】転生して妖狐の『嫁』になった話

那菜カナナ

文字の大きさ
上 下
11 / 27

11.舐めて溶かすように(★)

しおりを挟む
 リカさんと2人で山頂へ。そのまま直ぐに小屋の中に入った。

「よいしょっと」

 中に入るなりリカさんが布団を敷き始めた。俺は気まずさから堪らず目をらす。

 すんっと鼻を鳴らせば木と炭の香りが。あれ? 全然ほこりっぽくないぞ。むしろめっちゃ綺麗に片付いてる。

 何でだ? 女中猫又’sだってここには入ってこれないのに。

「……そっか」

 リカさんって、掃除も洗濯も出来るんだな。滲み出るから、そのあたりはポンコツなんじゃないかって期待してたんだけど……当てが外れた。

「ふふっ、何を考えているの?」

「っ!?」

 溜息をつきかけたところで顔を覗き込まれた。背中がバカみたいに跳ねる。

「別に……」

「ん~~?」

 じーーっと見つめてくる。目を逸らしても追っかけてきて。

「~~っ、分かりましたよっ! 言います!」

「やったぁ♡」

 俺は観念して白状することにした。

「……リカさんの弱点について考えてました」

「私の?」

「はい。苦手なこととか、嫌いな食べ物とかでもいいんですけど……何かありませんか?」

「おやおや、悪巧みかい?」

「もっと近くに感じたいんです。リカさんのことを。もっと近くに」

「なるほどね」

 正面から抱き締められる。嬉しい反面、今更ながらに気恥ずかしくなってきて。伸ばしかけていた手をすっと引っ込めた。

「苦手な食べ物は……ネギ、かな?」

 思わず笑ってしまった。うどんに乗ってるネギをそっと避ける。そんなリカさんの姿を想像してしまって。

「じゃあ、俺がネギを食べたら接吻? はしてくれないってことですか?」

「そうだね。ちょっと厳しいかな?」

「ははっ、分かりました。気を付けます」

 和んだからか、手が自然と伸びていった。リカさんの背中にそっと腕を回す。

「他には? 苦手なことはないんですか?」

「……

「えっ……?」

 一層強く抱き締められる。

 驚きは納得へ。物凄くに落ちた。献身の根底にあるのは恐怖心だったんだ。失うのが何よりも怖いから頑張れる。身を削ることもいとわずに。

 どうしようもないぐらいに優しくて臆病な人だ。

 前の俺だったらどうにもならなかっただろう。けど、力がある。この人を支えるだけの力が。

「神様には感謝してもし切れないですね」

「君は優しいね」

「えっ? 怒ってくれてるんですか? 神様のこと」

「当然さ。君が赦しても私は決して赦さないよ」

 ありがたいけどノーセンキューだ。

「ダメです。怒らないでください」

「そうは言ってもね」

「俺、幸せなんで」

 気付けば笑ってた。鏡を見なくても分かる。今の俺の顔はとろっとろにとろけてるだろう。キモいけど笑えたぞ。笑いたいから笑えた……ような気がする。

「君には敵わないな」

 リカさんが肩をすくめる。矛を収めてくれたってことでいいのかな?

「本当に……敵わない」

 顔を上げると金色の瞳と目が合った。優しくて甘い輝きを放つ澄んだ瞳と。

「それは俺のセリフ――んっ……はぁ……」

 キスをしながら体を押してくる。身を任せると布団の上に押し倒された。

 リカさんの匂いがする。薬草みたいな匂い。ほんの一瞬すっと頭が冴えたけど、直ぐに甘く蕩かされてしまう。リカさんの瞳に魅せられて。

「ぁっ……!」

 首筋に顔を寄せてきた。唇で食んで舐められる。ぞくぞくする。甘ったるい声が溢れ出て止まらなくなる。

「あっ! あン……っ、あ……」

 不意に腹の締め付けが緩んだ。帯を解かれてる。しゅるっと帯を引く音がとてつもなくいやらしく聞こえた。

「はっ……はぁ……ンンっ……」

 溝内を、お腹を、リカさんの舌が撫でていく。なのに乳首には触れてくれない。おねだりするようにピンっと尖ってるのに。

「~~っ、あの……りか、さん」

「そこには触れないよ」

「なっ、何で?」

「実を言うとね……君の妖力は私の理性を削ぐ。謂わば媚薬のようなものなんだ」

 思い出した。初めて触られた日――リカさんの耳はピクピクしてた。必死に我慢して、大切にしようとしてくれてたんだな。それなのに俺はバカみたいに浮かれて。

「初めての今日は君を純粋に愛してみたい」

「わっ、分かりました」

「ありがとう」

「いえ……」

 ああ、本当に最低だ。

「獣染みた交わりはまた別の機会に」

「っ!!? なっ……!?」

 耳元で囁かれた。熱っぽく。悪戯っぽく。

 分かり切っていたことだけど、リカさんの方が一枚も二枚も上手うわてだ。

 思惑通りに想像してしまう。奪われるように抱かれる自分の姿を。欲に染まったリカさんの姿を。

「っ!」

 パンツ(半股引)を脱がされた。俺のそれは勃ち上がりかけてる。先っぽからはだらだらと涎を垂らしていて。

「たんまっ!」

「可愛いよ」

「~~っ、リカさん!!!」

「ごめんごめん♪」

 謝りながら着物を脱いでいく。いい体だ。全体的に薄いけど引き締まってて筋肉の輪郭が見て取れる。俺もその内、農作業とか手伝ったりしてたらあんなふうになれるのかな?

「っ!」

 ふんどしに手をかけ出した。流石にガン見するのは気が引けて勢いよく顔を逸らす。

「お待たせ」

 ぐっと引き寄せられて、リカさんの太腿の上に俺の生尻と太腿が乗っかった。

「わっ!? ちょっ……っ!」

 尻の穴がリカさんの目に触れる。自分でも見たことがないのに。

「綺麗だ」

「~~っ! そういうのいいですから!!」

 顔から火が出そうだ。今更だけどセックスってとんでもないな。

 全部暴いて暴かれて。距離が縮まるのも納得だ。これを乗り越えたら、そりゃもう怖いモンなしだよな。

 俺も無敵になれる。……ぐいぐい行けるようになるんだよな?

 ちらりとリカさんの方に目を向けてみる。あれ? 何か手に持ってるぞ。和紙みたいな、あぶらとり紙みたいな。

「それ何ですか?」

通和散つうわさんだよ」

「つう?」

 リカさんは頷くなり口を開けて――紙を食べた。

「え゛っ!?」

 戸惑う俺を他所にもぐもぐし出す。食い物なのか? とても美味しそうには見えないけど。

「わっ……!」

 リカさんの口からどろっとした粘液みたいなものが出てきた。もしかしてあれ……ローションなのか……?

「あっ! ん……っ」

 リカさんはそれを俺の穴に塗り込んでいく。温かくてヌメヌメしてる。やっぱりこれローションだ。

「嫌?」

「いえ」

 むしろ物凄く興奮する。恋人の口で溶かして作るなんて。まさにラブポーションだ。

「あっ!? あぁ……ぐっ!」

 中に入って来た。リカさんの指だ。内側を撫でてゆっくりと押し開いていく。

 異物感が半端ない。背中がムズムズする。肩もビクビクして止まらない。

 嫌じゃないのにこれじゃ嫌がってるみたいだ。体が驚いてる? 抵抗してるのか? 抱かれるために作られた体じゃないから?

「リカ、さん……いい! ……よっ、もっと……きて……」

 無性に抗いたくなった。誰に? 神様に? それは分からないけど、とにかく誰かに示したくなったんだ。

 ちゃんと出来る。この行為は間違ってないんだって。

 そんな俺の胸の内を知ってか知らずかリカさんが小さく笑った。優しく。愛おしそうに。

「っ! まぶ……」

 不意に部屋が明るくなった。見れば火が灯っている。部屋の隅に置かれたろうそく達に。リカさんの力か? 凄いな。何だか魔法みたいだ。

「優太、深く息をついて」

 リカさんの銀色の髪が淡く輝き出す。綺麗だ。一見するとピアノ線みたいだけど、実際に触れてみるとやわらかくって。

「ん……」

「どうかした?」

「いや……」

 ムードは満点だ。でも、リカさんの顔がどうにも見えにくい。逆光になってるせいだ。もどかしい。もっと近くでリカさんを見たい。見つめ合ってキスがしたい。

「あっ……ぐぅ……はぁ………はぁ……」

 指が1本、2本、3本と増えていく。変わらず苦しいけど少しずつ馴染んできているような気がする。

「優太。入れるよ」

「はい……」

 リカさんの指が抜けていく。ローションが伸びてぷつんっと切れたような気がした。エロいな。……何て茶化す余裕は今の俺にはない。

 俺が俺じゃなくなる。

 リカさんと混ざり合って1つになるんだ。

「えっ……?」

 リカさんの――やわらかい。まだ早くないか?

「あの……」

「いいんだ。私達は……妖狐ようこはこれで」

 その一言で今更ながらに実感する。俺は同性の、それも違う種族の人に抱かれようとしてるんだって。

 勿論嫌なわけじゃない。驚いてそんでもって喜んでるだけだ。

 妖狐であるリカさんが俺を選んでくれた。その事実をただひたすらに。

「優太、愛してるよ」

「俺も……あ゛っ!!」

 全身が震えた。リカさんのそれを中で感じて。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】オオカミ様へ仕える巫子はΩの獣人

亜沙美多郎
BL
 倭の国には三つの世界が存在している。  一番下に地上界。その上には天界。そして、一番上には神界。  僕達Ωの獣人は、天界で巫子になる為の勉強に励んでいる。そして、その中から【八乙女】の称号を貰った者だけが神界へと行くことが出来るのだ。  神界には、この世で最も位の高い【銀狼七柱大神α】と呼ばれる七人の狼神様がいて、八乙女はこの狼神様に仕えることが出来る。  そうして一年の任期を終える時、それぞれの狼神様に身を捧げるのだ。  もしも"運命の番”だった場合、巫子から神子へと進化し、そのまま神界で狼神様に添い遂げる。  そうではなかった場合は地上界へ降りて、βの神様に仕えるというわけだ。  今まで一人たりとも狼神様の運命の番になった者はいない。  リス獣人の如月(きさら)は今年【八乙女】に選ばれた内の一人だ。憧れである光の神、輝惺(きせい)様にお仕えできる事となったハズなのに……。  神界へ着き、輝惺様に顔を見られるや否や「闇の神に仕えよ」と命じられる。理由は分からない。  しかも闇の神、亜玖留(あくる)様がそれを了承してしまった。  そのまま亜玖瑠様に仕えることとなってしまったが、どうも亜玖瑠様の様子がおかしい。噂に聞いていた性格と違う気がする。違和感を抱えたまま日々を過ごしていた。  すると様子がおかしいのは亜玖瑠様だけではなかったと知る。なんと、光の神様である輝惺様も噂で聞いていた人柄と全く違うと判明したのだ。  亜玖瑠様に問い正したところ、実は輝惺様と亜玖瑠様の中身が入れ替わってしまったと言うではないか。  元に戻るには地上界へ行って、それぞれの勾玉の石を取ってこなくてはいけない。  みんなで力を合わせ、どうにか勾玉を見つけ出し無事二人は一命を取り留めた。  そして元通りになった輝惺様に仕えた如月だったが、他の八乙女は狼神様との信頼関係が既に結ばれていることに気付いてしまった。  自分は輝惺様から信頼されていないような気がしてならない。  そんな時、水神・天袮(あまね)様から輝惺様が実は忘れられない巫子がいたことを聞いてしまう。周りから見ても“運命の番”にしか見えなかったその巫子は、輝惺様の運命の番ではなかった。  そしてその巫子は任期を終え、地上界へと旅立ってしまったと……。  フッとした時に物思いに耽っている輝惺様は、もしかするとまだその巫子を想っているのかも知れない。  胸が締め付けられる如月。輝惺様の心は掴めるのか、そして“運命の番”になれるのか……。 ⭐︎全て作者のオリジナルの設定です。史実に基づいた設定ではありません。 ⭐︎ご都合主義の世界です。こういう世界観だと認識して頂けると幸いです。 ⭐︎オメガバースの設定も独自のものになります。 ⭐︎BL小説大賞応募作品です。応援よろしくお願いします。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

ぼくは男なのにイケメンの獣人から愛されてヤバい!!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

聖獣王~アダムは甘い果実~

南方まいこ
BL
 日々、慎ましく過ごすアダムの元に、神殿から助祭としての資格が送られてきた。神殿で登録を得た後、自分の町へ帰る際、乗り込んだ馬車が大規模の竜巻に巻き込まれ、アダムは越えてはいけない国境を越えてしまう。  アダムが目覚めると、そこはディガ王国と呼ばれる獣人が暮らす国だった。竜巻により上空から落ちて来たアダムは、ディガ王国を脅かす存在だと言われ処刑対象になるが、右手の刻印が聖天を示す文様だと気が付いた兵士が、この方は聖天様だと言い、聖獣王への貢ぎ物として捧げられる事になった。  竜巻に遭遇し偶然ここへ投げ出されたと、何度説明しても取り合ってもらえず。自分の家に帰りたいアダムは逃げ出そうとする。 ※私の小説で「大人向け」のタグが表示されている場合、性描写が所々に散りばめられているということになります。タグのついてない小説は、その後の二人まで性描写はありません

【完結】黒兎は、狼くんから逃げられない。

N2O
BL
狼の獣人(異世界転移者)×兎の獣人(童顔の魔法士団団長) お互いのことが出会ってすぐ大好きになっちゃう話。 待てが出来ない狼くんです。 ※独自設定、ご都合主義です ※予告なくいちゃいちゃシーン入ります 主人公イラストを『しき』様(https://twitter.com/a20wa2fu12ji)に描いていただき、表紙にさせていただきました。 美しい・・・!

つまりそれは運命

える
BL
別サイトで公開した作品です。 以下登場人物 レオル 狼獣人 α 体長(獣型) 210cm 〃 (人型) 197cm 鼻の効く警察官。番は匿ってドロドロに溺愛するタイプ。めっちゃ酒豪 セラ 人間 Ω 身長176cm カフェ店員。気が強く喧嘩っ早い。番限定で鼻が良くなり、番の匂いが着いているものを身につけるのが趣味。(帽子やシャツ等)

処理中です...