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第三章。

僕自身に起こっている、驚愕の事実を知る。

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リズベルの嵐は過ぎ去り、すっかり落ち着きを取り戻した僕とロイは、イルネージュ攻略計画を練り始めた。
しかし解放されたはずのイルネージュ限定MAPシステムが起動しない。

「イルネージュ限定ってことは、向こうに渡らないと使えないんじゃないか?」
「そうなのかもしれない、不便だなぁ…」

そこへ田中がやってきた。

「お邪魔するよー」
「どうしたんだ、田中」
「いやさ?俺もイルネージュ攻略組に入ろうかと思って?」

どういう心境の変化かと思いきや、リズベルがアイテムイベントリや魔法制限解呪を行ったことで、田中の出る幕がすっかりなくなったそうだ。
戦力が増えるのは有り難いし、驕慢の塔の経験者というのも助かる。

「田中、イルネージュのMAP覚えてるか?」
「もちろん。初心者のときに伊能忠敬気分で意味もなくイルネージュ中を歩き回ったぜ」

僕も初心者のときにそれをやった記憶があるけれど、きっと田中の記憶の方が新鮮なはずだ、おおまかなイルネージュのMAPを描き出そう。

「てことで、頼んだぞ!田中!」
「あれ、そーゆーことならさ、あいつらにも協力させた方が精密なの作れんじゃないのか?」

というわけで、魔物退治に勤しむリズベルを除き、イルネージュ攻略チームの出来あがりだ。
応接室を借りて対策本部にして、まずはMAP作りに勤しむことになった。

ノットとリーシャに連れられたルゥトも加わった。
何せ1番若い頭脳だ、期待大だ。

その様子をロイは真剣な眼差しで眺めていた。
きっと足を踏み入れたことのないイルネージュが、簡易的にでも型どられていくのが嬉しいのだろう。

それぞれが好きな国や好きな街と倉庫NPCの場所の発言をどんどんと記していく。
あーだこーだと記憶を頼りに描く地図は、大まかだけれど初日でかなりの範囲を作成することができた。

「これでどれくらいの範囲なんだ?」

今日の作業を解散すると、ロイは地図をなぞった。

「んー、4分の1くらい…になるかな」
「随分と、広そうだな」
「うん、イルネージュは広いんだ」

「そうか…」と呟いたロイのフードの中を覗いてみると、ほんの少しだけ笑んだ。
その表情が可愛くてキュンとしてしまう僕の病は、下半身に直結している。
マイサンの頭がゆるくもたげてしまった。

何だかんだ忙しくしていたし、珍事件も騒動もあった。
神殿到着前を最後に…僕の身体はご無沙汰ロイ日照りだ。

あれ…、おセックスの誘い方はどうすれば良いんだ…。

そーゆー雰囲気になれば、言わされたり流されたりしたけれど、ロイを好きだと自覚してからの行為は致してないぞ。
魔力供給も必要なくなったし、口実がないんじゃないか。

呆然とする僕の心情に比例して、マイサンもすっかり呆然と元気をなくしてしまった。

僕は初彼女ができた童貞少年のように、虎視眈々と隙を狙うはめになるのか。
親指の爪をカリッと噛みながら思考に耽っている僕は、とんでもないことに気が付いた。

25歳にもなろう男が、おセックスの誘い方すらわからないという経験不足である。
というかイルネージュばかりしていた僕は、現実世界では経験皆無だったし、この世界では受け身以外の経験がないのだ。


僕は…、僕は……、童貞じゃないかッッ!!


驚愕な事実を前に頭を抱えだした僕を、ロイが心配げに声をかけている。

僕も男だ、ツッコみたい願望は捨てきれないし、ロイなら抱けると思う。
それに男の身体のイイトコロは、全てロイから教わったんだ。

僕は息を整えて、何もないように装った。

「何でもない、大丈夫だ」
「あまり無茶はするなよ」
「あぁ、善処しよう…」

僕は決めた。
今晩、この男をヒィヒィ言わせて、童貞を卒業してみせる、と。

    
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