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第二章。
悪を知る。
しおりを挟むクーデター決行は2日後の夜に決まった。
その間にこの国の実態を知るために情報収集をすることにした。
何せ僕らのすることは国潰しだ。
どこまで王宮が腐敗しているのか知らなくてはいけない。
そして僕の手は、ロイに繋がれている。
ナチュラルすぎて驚きもしなくなったわ!
「まずは…昨日のバーレストランからかな?話してくるといいけど…」
「問題ない」
さすが頼れる男ロイだ。
まかせたぞ!!
「私達はカルナヴァルよりの使者だ。この国の実状を図るために訪れた。悪いようにはしない、情報を与えてはくれないだろうか」
直球の嘘だった。
全くの出鱈目ではないけど…。
店主と女将さんはしばらく悩んで、密やかに口を開いた。
「この国はもう駄目だ。あの国王の統治下にある以上は…誰も安らぎを感じることはできない…」
「私らには娘がいてね。半年前に王宮に連れて行かれたのさ。生きているかも…わからない…うぅ…、だからここを捨てることさえ…できないわけさ…」
「それに…奴隷を解放しようと集った若者達は皆処刑されたよ…処刑前にずいぶんと甚振られただろう…遺体は酷いもんだった…」
「旅の人もそうだ…、奴隷を助けようとして連れてかれちまった…戻ってこなかったよ」
「辛い話をさせてしまって…、ごめん…」
「情報提供、感謝する。必ず活かすと約束しよう」
次に話を聞いたのは、使いに出されていた鞭で打たれていた女性だ。
「私達が鞭で打たれるのは日常的なことです…もう…慣れました。それよりも……」
「それよりも?」
「私は…とうが立つから触れられることはないけど…若い子達は酷い扱いで…嬲り殺されることだって………。この間も奴隷でもないのに旅の方が……男性なのに……」
「うん、そうか…。話してくれてありがとう」
僕は人差し指を唇にあてて、彼女の内部にヒールをかけた。
側を癒やしてしまえば、ヤツに気づかれてしまうから、治してあげたくてもガマンだ…。
全てが終われば、身体は癒やしてあげられる。
「痛くない…、あなた…は…いったい…」
「…神の使いといったところ…かな。もう少しの辛抱だよ、それまでどうか…」
「神様の……、ありがとう…ありがとう…」
女性らはらはらと涙した。
それから店主の伝手で、数人から話を聞くことができた。
内容はどれも国王や国王の家族、それに元司祭による身勝手で非道な人権の扱い。
国民では飽き足らず、訪れる旅人でさえもその毒牙にからめとられる始末だ。
2日、あと2日もこの怒りを身の内に留めなくてはいけない。
ロイに手を掴まれて、気付いた。
握り締めていた指が皮膚に食い込んで、白んでいた。
張り詰めていた全身からふっと力が抜けて、僕はロイに体重を預けた。
ロイの手は少し戸惑いながら、僕の手を握った。
「アキラ…悪かったな…」
突然の謝罪が何を意味しているのか、ちょっとだけわかる。
後悔していたのだろう、旅に間もずっと。
「今更だろ、僕は気にしていない」
「それでも…謝っておきたかった。ずいぶんと酷い仕打ちをした」
「まあなあ…衝撃的な処女喪失ではあったな」
「悪かった」
「いいって、忘れろ」
国王や元司祭のしていることが、少なからず自分のしでかしたことに重なったんだろう。
僕がアレについて今後どうこう責めるつもりもないし、セスにも贅沢すぎる償いを受けているし。
ロイとはすっかり…、すっかり、…何だ?
魔力供給という目的よりも、僕が求めたのは何だ?
溺れるような爛れた快楽じゃないか?
どろどろに溶けて甘えて、抱きしめられると下肢が疼くくらいには、ロイを求めてしまう。
これは…もしかして…、僕とロイは…。
ただのセフレじゃないか…。
何と言うことだ。
今はこんなアホなことを考えている場合じゃない、国潰しの後に考えよう…。
僕はひとまず思考に蓋をかぶせた。
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