29 / 79
第二章。
砂漠のオアシス、カルナヴァル王国。
しおりを挟む氷塊事件から約1日半で最初の中継地点であるオアシス、カルナヴァル王国へ到着した。
超ラクダとソリは、守衛と世話係のいる巨大な屋根付き厩舎へ預けた。
さて…僕達の旅の設定が決まった。
「アキラはツェペシュ公爵家の遠縁にあたる令嬢だ。見聞を広げるために従者を共に旅をしている、だ」
「れ…、令嬢?」
「あぁ…、女性であれば顔をヴェールで隠し通せる上に、相手がどんな身分であれ見せる必要はない」
「王様にもか?」
「国王でもだ。だから極力、出来る限り…目立たずに淑やかに振舞え」
という、単純に見えて少し面倒臭いことになった。
ボロは出せない…ぐぬぬ。
そう言えば…カルナヴァルという言葉をどこかで聞いたことがあるような…気もしないでもないという考えも、いざカルナヴァルの街並みに足を踏み入れてしまえば…見事にぶっ飛んでしまった。
そこは世界観を裏切ることなく、建築物もまさにイスラーム建築を元にしたアラビアーンな雰囲気だ!
そこかしこで奏でられるアラブ音楽も、マッチングマッチで気分は高揚してしまう!!
行き交う人々は褐色の肌に衣装も装飾もキラビヤカだ!
そしてなにより…女性にいたっては露出も多くて…ペロペロボディーちゃんだらけだ…。
目のやり場に困る…と思いつつも…、次から次へとすれ違う美女達を凝視してしまう。
「…んんん、けしからん!!」
「…何がだ」
そんな僕をロイは訝しげに見ている。
「ロイは褐色美女に興味はないのか?」
「…ない」
「色白のが好みか?僕はペロペロボディーちゃんならどっちでもいいな!」
「お前…やっぱり女が好きか…」
「そりゃ、男だからな。当たり前だろう」
そう、僕は男だ。
でもこの慎まやかなマイサンで、女性が満足してくれるとも思えない。
あぁ、神様…どうぞ僕にでっかいイチモツを授けてください…。
「なぁ…アキラ…」
ロイが何か言いかけたところで、僕の興味はすでに他へ向いていた。
ここは見たことのない様々な物で溢れている。
目移りも激しくなってしまう。
「ロイ!これ!これなんだ!?あれは!?」
「待て…アキラ…、少し落ち着け…」
「あぁ…、凄いな凄いなアラビアン…。堪能できないのが…残念だ…」
「全てが終われば…、どこへでも連れて行ってやる」
「本当か?」
「あぁ、セスがいるからな、資金は潤沢だ」
「ふはっ、悪いヤツだな!」
マーケットを眺めながら歩いていると、音楽が一層派手な音に変わり、人々の行き交う流れも急激に激しくなった。
もう、もみくちゃレベルだ。
「な…なんだ?!」
「おい、離れるなよ」
というロイの声が僕に届かず、派手な曲はあたりを響かせて、人波にのまれてしまった。
「うぉ…、なんだこれ…、祭りか??」
僕は人の波から抜け出すべくロイの手を引いて、少し先に見えた細道に逃げ込んだ。
「はぁはぁ…。どえらい目にあった…、なぁ、ロイ?」
振り返った僕は、とても戸惑った。
相手は小首を傾げている。
「…ん?」
「…え?誰だ?」
「君こそ」
僕が掴んでいたのはロイの腕ではなく、やたら派手な服装に宝飾品を身に着けた、褐色肌を惜しみなくさらけだした美丈夫だった。
ロイは、ロイはどこだ!!!
そして、こいつは誰だ!!!
10
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
涙の悪役令息〜君の涙の理由が知りたい〜
ミクリ21
BL
悪役令息のルミナス・アルベラ。
彼は酷い言葉と行動で、皆を困らせていた。
誰もが嫌う悪役令息………しかし、主人公タナトス・リエリルは思う。
君は、どうしていつも泣いているのと………。
ルミナスは、悪行をする時に笑顔なのに涙を流す。
表情は楽しそうなのに、流れ続ける涙。
タナトスは、ルミナスのことが気になって仕方なかった。
そして………タナトスはみてしまった。
自殺をしようとするルミナスの姿を………。
家族連れ、犯された父親 第二巻「男の性活」 ~40代ガチムチお父さんが、様々な男と交わり本当の自分に目覚めていく物語~
くまみ
BL
ジャンヌ ゲイ小説 ガチムチ 太め 親父系
家族連れ、犯された父親 「交差する野郎たち」の続編、3年後が舞台
<あらすじ>
相模和也は3年前に大学時代の先輩で二つ歳上の槙田准一と20年振りの偶然の再会を果たした。大学時代の和也と准一は性処理と言う名目の性的関係を持っていた!時を経て再開をし、性的関係は恋愛関係へと発展した。高校教師をしていた、准一の教え子たち。鴨居茂、中山智成を交えて、男(ゲイ)の付き合いに目覚めていく和也だった。
あれから3年が経ち、和也も周囲の状況には新たなる男たちが登場。更なる男の深みにはまりゲイであることを自覚していく和也であった。
俺の番が最凶過ぎるっ
星宮歌
BL
神々が住まう世界、神界。
そこは、善と悪の神の戦場。
そこは、あらゆる研鑽の果てがある場所。
そこは……とある獣の神が、自らの番となるはずの神を探し続ける場所。
これは、そのとある獣の神が、ようやく番を見つけ、盛大に拒絶されながらも必死に食らいつくコメディ……じゃなかった、恋愛物語である。
生意気な最凶の神 × 一途な獣の神
エッチな回には、タイトルの横に*をつけることにしますね〜。
そして、第一章は2020年12月12日に完結です。
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる