上 下
21 / 79
第一章。

矛盾と悪循環のアホループ。

しおりを挟む


「とりあえず僕はカーマイル神殿とやらに行こうと思う」

やっとのことで招待を受けた昼食で、美味しいご飯を貪り終えた僕は、希望を伝えた。

「そこに行かなければ何も始めることができないだろ?」

同席していた魔術師とセスは少しだけ難しい顔をする。

「どうしても入国審査が…国王に知られれば、お前は間違いなく…」

顔も知らない国王にどうこうされる想像は冗談にしろ恐ろしい。
ゾゾゾだ。

「冗談はやめろ……」

難しいままの表情を浮かべている2人を見れば、あながち冗談でもなさそうだ。
怖いから本気でやめてくれ。

「あぁ…わかったぞ。それは地上ルートだろう?空を飛べば問題ないんじゃ?」

2人の顔はやはり浮かない。

「アイテムイベントリがなければ…」
「攻略は無理だね」

この際だから言い切っておいた、魔術師には申し訳ないが僕はとても気が楽になった。

「最悪…僕も国を滅ぼしちゃうぞって言えば良いんじゃ?」
「できれば…避けたい。今回のことで国王が怒り狂い国家予算から神殿を除外すると…、神殿の最高位にあたる神官の説得で一度の猶予は与えられた。次はない」
「それ神殿は被害しか被ってないんじゃ…、と言うか…、国王ってバカなのか…」

イルネージュを放置すれば自国にも多大な危険が及び、神子を召喚すれば自国で娶り、どんな理由にしろ自国を守る神子のいる神殿への国家予算を削ろうとするとは…矛盾と悪循環のループだ。

「自国は神殿の神子がいる以上、ある程度は守られている。しかし根本的な解決にはなにひとつ繋がっていない」
「八方塞がりじゃないか…、他に神殿は?」
「サールジオにあるにはあるが」
「あるのかよ…」

そちらはそちらで何か障害がありそうだ。

「神官がいない。神殿として機能をしていない」
「は?」
「サールジオは砂漠に覆われる大陸で、移動が困難な上に国が少ない。オアシスごとに国を構えているが…、それに…」
「おい魔術師、お前は神殿から派遣されたって言ったよな?なら神殿のマニュアルくらい頭に入ってるだろ?」
「あぁ…」
「アイテムイベントリの開き方もわかるんじゃないのか?」

セスは魔術師をちらりと見てから、頷いた。

「元は、神官希望でした。しかし何分品性が欠けておりましてね」
「………」
「なら、魔術師が神官の役割を担えば良い。それに道中で何が起こっても僕が守るし。MP足りなきゃお前から吸えばいいだろ」
「頼もしくて…卑猥な神子様でいらっしゃる」
「神子よ…お前な…」

とんでもないことを口走った気もするけれど、とにかくアイテムイベントリを開きたい。
課金衣装を着ていたということは、課金アイテムが削除されている可能性は少ないと思う。

「決まりでいいな?ちなみに僕は無一文だ!旅支度と路銀はツェペシュ公爵の償いとやらで誠意を見せてくれ」
「かしこまりました」

そして僕は目の前に置かれたデザートに手を付けた。

「はぁ…おいひ…」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

裏の権力者達は表の権力者達の性奴隷にされ調教されてます

匿名希望ショタ
BL
ある日裏世界の主要人物が集まる会議をしていた時、王宮の衛兵が入ってきて捕らえられた。話を聞くと国王がうちの者に一目惚れしたからだった。そこで全員が表世界の主要人物に各々気に入られ脅されて無理矢理、性奴隷の契約をすることになる。 他の作品と並行してやるため文字数少なめ&投稿頻度不定期です。あらすじ書くの苦手です

表情筋が死んでいる

白鳩 唯斗
BL
無表情な主人公

職場で性的ないじめを受けていることをなかなか恋人に言えずに病んでしまう話

こじらせた処女
BL
社会人一年目の日野 敦(ひの あつ)。入社後半年が経った頃、同じ会社の先輩3人にレイプまがいのことをされ始めてしまう。同居人であり恋人でもある樹(いつき)にもなかなか言えないまま、その嫌がらせはエスカレートしていき…?

涙の悪役令息〜君の涙の理由が知りたい〜

ミクリ21
BL
悪役令息のルミナス・アルベラ。 彼は酷い言葉と行動で、皆を困らせていた。 誰もが嫌う悪役令息………しかし、主人公タナトス・リエリルは思う。 君は、どうしていつも泣いているのと………。 ルミナスは、悪行をする時に笑顔なのに涙を流す。 表情は楽しそうなのに、流れ続ける涙。 タナトスは、ルミナスのことが気になって仕方なかった。 そして………タナトスはみてしまった。 自殺をしようとするルミナスの姿を………。

【完結】令嬢が壁穴にハマったら、見習い騎士達に見つかっていいようにされてしまいました

雑煮
恋愛
おマヌケご令嬢が壁穴にハマったら、騎士たちにパンパンされました

穴奴隷調教ショー

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 穴奴隷調教済の捜査官が怪しい店で見世物になって陵辱される話です。

異世界に召喚されて失明したけど幸せです。

るて
BL
僕はシノ。 なんでか異世界に召喚されたみたいです! でも、声は聴こえるのに目の前が真っ暗なんだろう あ、失明したらしいっす うん。まー、別にいーや。 なんかチヤホヤしてもらえて嬉しい! あと、めっちゃ耳が良くなってたよ( ˘꒳˘) 目が見えなくても僕は戦えます(`✧ω✧´)

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

処理中です...