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第一章。
セルフ解呪。
しおりを挟む「存在がレアな上に美しいとくれば、王族は婚儀を結び、はたまた神のように奉られ神殿で豪遊生活と…クソ共は禄でもねぇ。もし他に召喚された者がいたとして…秘密裏に同様な事が横行していれば?クソだろうが」
「魔術師…お前、相当…口が悪いな」
セスが苦笑いを浮かべている。
「だから、神子であるお前を確実に手に入れる必要があった」
「はぁ…」
「だが、手に入れてみれば魔法が使えないときた。魔力の枯渇かと思いきや、魔法自体に制限がかけられている。姿が美しいだけの魔術師ときた…」
「褒められては、いないな!!制限の原因は?」
「原因は不明だ。俺の魔法では解呪できない」
解呪…なるほど、解呪が。
「自身の魔法制限に対する解呪…、僕が使えるのは"ディスペル・マジック"のみだ」
用途は明確に思考しながら唱えたスペルは、パキリ…パキパキッという効果音と共に、僕は淡い光に包まれた。
「あ…、え…………」
「な…、おい、神子!」
「神子様!!」
ジクジクと身体の内側が灼けるような熱が込み上げて、両腕で自身を抱きしめた。
熱と言っても、エロいやつではない!
本当に灼けてしまいそうなやつだ。
「うぁっ…」
僕は為す術もなく、その場に崩れ落ちた。
白雪の降り続ける、白銀の美しい世界。
空には月色に淡く光る、結晶のような星。
アデルナ城の斜塔から眺めるのが、好きだった。
もう一度、あれを見たいんだ。
熱に浮かされて視界はゆらゆらと滲んでいる。
苦しくて辛いし、頭もぼーっとする。
「神子…」
鼓膜は膜をはっているように音がぼんやりと聞こえる。
「お前も…」
魔術師が何かを言っている。
僕が…何だ?
「イルネージュを助けてはくれないのか…」
何でそんなに悲しい声を出すんだ。
魔術師はイルネージュを知っているのか?
「あの美しい世界を…」
あぁ、やっぱりイルネージュは美しい世界なんだ。
僕は腰痛を癒やす要領で、自身にむけヒールを唱えた。
「……ヒール、ヒール…ヒール…。……フルヒール」
「…神子、お前…」
チロリン、チロリン、チロリン、…シャランと効果音が鳴った。
視界はクリア、熱も引いたし、がばっと起き上がった。
魔術師は鳩豆的な表情を浮かべている。
「フルヒール…だと…、この世界にそれを使える者は、…いないはず」
「他にもきっといるだろ、僕が使えるんだ。それにこの魔法が使えると言うことは、僕の覚えている魔法はほぼ使えるということだ」
「は…、自分で解呪しのか…?」
「そうなるな?」
解呪に成功したのは偶然の産物で、灼けついて少し恐怖したのは内緒だ。
僕は魔術師が目深に被るフードを指でぺろりと摘み上げた。
透けてしまいそうなほどの銀色の髪に、切れ長で琥珀色の瞳は見惚れてしまいそうなほど綺麗だ。
魔術師のヤツ、やっぱりクソイケメンじゃないか、腹立たしい。
その高い鼻梁に、僕の美しい鼻を押し付けて宣言した。
視線はがっつりと絡んだ。
「喜べ、魔術師。イルネージュは僕が救ってやる」
何せ魔法が戻った僕に、驕慢の塔を落とせない訳がない。
100階に出現するボス、プライド・ナイトメア、単騎でもきっと…。
「驕慢の塔は、僕の庭だ」
僕は不遜に、そして美しく笑ってみせた。
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