完璧なまでの美しい僕は僕であり、あの世界の僕ではなかった。

あしやおでこ。

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第一章。

堕落召喚者達。

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「そもそも…なぜ滅びの大陸なんだ…?人々はどうした…?」

天災かはたまた厄災か、戦により自滅の道をたどったか。

イルネージュの世界にも、多くの国が存在していた。
そしてその国ごとに城を構え、君主が王座に就いていた。

君主とはプレイヤーだ。

その君主が構える血盟(クランと呼ばれるギルドなようなもの)に加入し、定期的に行われる城取り合戦を行う。

PVPによる戦争だ。
大規模なものだと勢力ごとに100人ほどが集まり、大人数の入り乱れた白熱した戦いになる。

もちろん僕も仲間達と共に長年の間、イルネージュで最も広い領土を持つアデルナ国の城持ちの血盟に所属していた。

しかし、セスの話は予想と遥かに違うものだった。

「驕慢の塔…の出現により、と伝えられています。それ以上のことは…すでに他大陸はイルネージュに干渉することがないのです」

驕慢の塔…、地上100階もあるイルネージュで最初に実装されたダンジョンだ。
10階ごとにボスがいる、固有ドロップの魔法書や武器などの装備類と、レアアイテムを求めて日課のように通った、高レベルプレイヤーのお小遣い稼ぎを兼ねた遊び場だ。

まさか、それの出現で滅びの大陸と呼ばれるようになったと言うのか?

「討伐が叶わなかった、とかか…?」
「そのようですね、瘴気と魔物に満ちた、と」

瘴気?魔物に満ちる?そんな設定を僕は知らないし聞いたこともない。

もうイルネージュに足を踏み入れることはできないのか…、それなら僕が異世界にきた理由は…?

「イルネージュに行くことは…?」
「シフォーリアからは無理ですね。どにらにせよ、我が大陸は周囲を3大陸に囲まれていますし、ね」
「からは…?他の大陸からは可能なのか?」
「こればかりは断言できませんが…、可能性としてはございます」

どういう意味だろうか。

「可能性?」
「はい、しかし…」

どこか言い淀んでいる雰囲気をセスが醸し醸し醸し出し始めると、ノックもなく魔術師のおでましだ。

「…それがお前の、神子の存在理由になる」

こいつしれっと聞き耳たててやがったのか。
まぁ…いい、とりあえず存在理由とやらを聞こうじゃないか。

「魔物だ…、大陸を襲う全ての魔物はイルネージュが原因だ。さすがにシフォーリアまでを襲う魔物はそこまで強力ではない、更に南に位置するサリナリアは魔物とは無縁と言える」
「となると…北寄りの東と西は…」
「東側は最西端と、西側は相当な被害だな」
「神子様の存在理由はそこにあるのです」

リガルーストにある聖法(しょうほう)大国と呼ばれる聖魔術に長けたカーマイルでは、諸悪の根源である驕慢の塔を陥落させるために神殿で召喚が繰り返されている。
召喚された者達は神子と呼ばれ、古より世界を救う力を持つと伝えられている。

しかしながら未だ成功例が少ない上に精密さにかけるために、召喚先に定まりがなくランダムで現れるというのが難点だった。

そこで大陸や国、はたまた領地を治める者達は、神子達を手に入れることに奔走した。
ツェペシュもまた同じ理由で、魔術師により位置が特定された神子の獲得に成功したという話だ。

そして成功例が少ないのは…

「本来、目的があり召喚が行われているが…………」

ここにきての沈黙は何なのだろう、か!

「…ん?…が?…何だ?」

魔術師は頭を抱えた。

「俺は4人ほど、お前をいれて5人しか神子を確認したことがない。もっと多くてもおかしくはないのだが…。神子達は揃いも揃って……見目麗しいんだ。お前は群を抜きまくっているが…」


なんと!!


うんうん、そうだろう!
なんせ20時間もかけた僕の最高傑作だ!!
褒めろ!もっと褒めろ!ふはははは!!

と、心の中で叫んでいると、魔術師は両手で頭を抱えだした。

「そしてヤツらは揃いも揃って堕落している。誰も討伐になんか行かねぇ」

気のせいだろうか、ヤツら(クソども)と副音声がかかりそうなほど忌々しさを感じる。

「クソだ、クソ」

気のせいではなかったー!!

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