18 / 79
第一章。
堕落召喚者達。
しおりを挟む「そもそも…なぜ滅びの大陸なんだ…?人々はどうした…?」
天災かはたまた厄災か、戦により自滅の道をたどったか。
イルネージュの世界にも、多くの国が存在していた。
そしてその国ごとに城を構え、君主が王座に就いていた。
君主とはプレイヤーだ。
その君主が構える血盟(クランと呼ばれるギルドなようなもの)に加入し、定期的に行われる城取り合戦を行う。
PVPによる戦争だ。
大規模なものだと勢力ごとに100人ほどが集まり、大人数の入り乱れた白熱した戦いになる。
もちろん僕も仲間達と共に長年の間、イルネージュで最も広い領土を持つアデルナ国の城持ちの血盟に所属していた。
しかし、セスの話は予想と遥かに違うものだった。
「驕慢の塔…の出現により、と伝えられています。それ以上のことは…すでに他大陸はイルネージュに干渉することがないのです」
驕慢の塔…、地上100階もあるイルネージュで最初に実装されたダンジョンだ。
10階ごとにボスがいる、固有ドロップの魔法書や武器などの装備類と、レアアイテムを求めて日課のように通った、高レベルプレイヤーのお小遣い稼ぎを兼ねた遊び場だ。
まさか、それの出現で滅びの大陸と呼ばれるようになったと言うのか?
「討伐が叶わなかった、とかか…?」
「そのようですね、瘴気と魔物に満ちた、と」
瘴気?魔物に満ちる?そんな設定を僕は知らないし聞いたこともない。
もうイルネージュに足を踏み入れることはできないのか…、それなら僕が異世界にきた理由は…?
「イルネージュに行くことは…?」
「シフォーリアからは無理ですね。どにらにせよ、我が大陸は周囲を3大陸に囲まれていますし、ね」
「からは…?他の大陸からは可能なのか?」
「こればかりは断言できませんが…、可能性としてはございます」
どういう意味だろうか。
「可能性?」
「はい、しかし…」
どこか言い淀んでいる雰囲気をセスが醸し醸し醸し出し始めると、ノックもなく魔術師のおでましだ。
「…それがお前の、神子の存在理由になる」
こいつしれっと聞き耳たててやがったのか。
まぁ…いい、とりあえず存在理由とやらを聞こうじゃないか。
「魔物だ…、大陸を襲う全ての魔物はイルネージュが原因だ。さすがにシフォーリアまでを襲う魔物はそこまで強力ではない、更に南に位置するサリナリアは魔物とは無縁と言える」
「となると…北寄りの東と西は…」
「東側は最西端と、西側は相当な被害だな」
「神子様の存在理由はそこにあるのです」
リガルーストにある聖法(しょうほう)大国と呼ばれる聖魔術に長けたカーマイルでは、諸悪の根源である驕慢の塔を陥落させるために神殿で召喚が繰り返されている。
召喚された者達は神子と呼ばれ、古より世界を救う力を持つと伝えられている。
しかしながら未だ成功例が少ない上に精密さにかけるために、召喚先に定まりがなくランダムで現れるというのが難点だった。
そこで大陸や国、はたまた領地を治める者達は、神子達を手に入れることに奔走した。
ツェペシュもまた同じ理由で、魔術師により位置が特定された神子の獲得に成功したという話だ。
そして成功例が少ないのは…
「本来、目的があり召喚が行われているが…………」
ここにきての沈黙は何なのだろう、か!
「…ん?…が?…何だ?」
魔術師は頭を抱えた。
「俺は4人ほど、お前をいれて5人しか神子を確認したことがない。もっと多くてもおかしくはないのだが…。神子達は揃いも揃って……見目麗しいんだ。お前は群を抜きまくっているが…」
なんと!!
うんうん、そうだろう!
なんせ20時間もかけた僕の最高傑作だ!!
褒めろ!もっと褒めろ!ふはははは!!
と、心の中で叫んでいると、魔術師は両手で頭を抱えだした。
「そしてヤツらは揃いも揃って堕落している。誰も討伐になんか行かねぇ」
気のせいだろうか、ヤツら(クソども)と副音声がかかりそうなほど忌々しさを感じる。
「クソだ、クソ」
気のせいではなかったー!!
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は大好きな絵を描いていたら大変な事になった件について!
naturalsoft
ファンタジー
『※タイトル変更するかも知れません』
シオン・バーニングハート公爵令嬢は、婚約破棄され辺境へと追放される。
そして失意の中、悲壮感漂う雰囲気で馬車で向かって─
「うふふ、計画通りですわ♪」
いなかった。
これは悪役令嬢として目覚めた転生少女が無駄に能天気で、好きな絵を描いていたら周囲がとんでもない事になっていったファンタジー(コメディ)小説である!
最初は幼少期から始まります。婚約破棄は後からの話になります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
なんでも諦めてきた俺だけどヤンデレな彼が貴族の男娼になるなんて黙っていられない
迷路を跳ぶ狐
BL
自己中な無表情と言われて、恋人と別れたクレッジは冒険者としてぼんやりした毎日を送っていた。
恋愛なんて辛いこと、もうしたくなかった。大体のことはなんでも諦めてのんびりした毎日を送っていたのに、また好きな人ができてしまう。
しかし、告白しようと思っていた大事な日に、知り合いの貴族から、その人が男娼になることを聞いたクレッジは、そんなの黙って見ていられないと止めに急ぐが、好きな人はなんだか様子がおかしくて……。
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)
記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー
コーヒー微糖派
ファンタジー
勇者と魔王の戦いの舞台となっていた、"ルクガイア王国"
その戦いは多くの犠牲を払った激戦の末に勇者達、人類の勝利となった。
そんなところに現れた一人の中年男性。
記憶もなく、魔力もゼロ。
自分の名前も分からないおっさんとその仲間たちが織り成すファンタジー……っぽい物語。
記憶喪失だが、腕っぷしだけは強い中年主人公。同じく魔力ゼロとなってしまった元魔法使い。時々訪れる恋模様。やたらと癖の強い盗賊団を始めとする人々と紡がれる絆。
その先に待っているのは"失われた過去"か、"新たなる未来"か。
◆◆◆
元々は私が昔に自作ゲームのシナリオとして考えていたものを文章に起こしたものです。
小説完全初心者ですが、よろしくお願いします。
※なお、この物語に出てくる格闘用語についてはあくまでフィクションです。
表紙画像は草食動物様に作成していただきました。この場を借りて感謝いたします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる