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家族になったのは...

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 父親から電話がきた次の日、俺は帰りのホームルームを終えて急いで教室を出た。
 「はぁ......緊張する......」
 今日から俺は、女子と一緒に暮らすんだ......まだ見知らぬ女子と......。
 相手がどんな女子なのか分からない以上、あまり期待しないほうがいいかもしれない......なんて、性格の悪いことを思いながらも、頭の中では可愛い女子をイメージしていた。
 「おーい、春原」
 誰よりも早く教室を抜け出して、昇降口で靴を履き替えようとしていたとき、同じクラスのやつが俺を追いかけてきたらしく、息を切らしながら声をかけてきた。
 「ん、どうした?」
 「生徒会長が、お前のこと探してたぞ」
 「えっ、生徒会長が? なんだろ......」
 生徒会長が俺に用があるなんて......心当たりがない。
 「とにかく、教室に戻ってくれ」
 新しい家族を迎えるために一秒でも早く帰りたいところだが、生徒会長に呼び出されているなら仕方ない。早く要件を済ませてもらうことにしよう。
 
 「会長、おまたせ」
 クラスメイトの後についていきながら、教室に戻ってきた。
 「呼び戻してくれたのね。ありがとう」
 教室に入ると、黒髪ロングで足の長い女子が、俺の席で足を組んで座っていた。
 「あの......どうしたの?」
 「みんながいる前で話せる内容ではないから、場所を変えましょう」
 みんながいる前で話せない内容とは、なんなのだろうか......。
 まさかな......。
 実際、生徒会長の突然の登場に、クラスメイトは俺たち二人をめずらしそうに見ていた。
 「ああ、わかったよ......」
 「......よかったら、春原くんの家に案内してもらえるかしら?」
 まさかな?!
 「お、俺の家?」
 「ちょっと、あんまり大きな声を出さないで......とにかく、ここから出ましょう」
 生徒会長に手を引かれながら、俺は教室を後にした。

 「......それで、どうして俺の家なの?」
 ここまでくると、聞くまでもない気がするが......。
 「それは......今日から春原くんと一緒に暮らすことになったから......」
 「やっぱり、そういうことだったのか......」
 まさか、生徒会長と一緒に暮らすことになるとはな......。
 「......もしかして、私と一緒に暮らすの、あんまり嬉しくない?」
 俺の表情を見て気になったのか、生徒会長は心配そうに顔を覗き込んできた。
 「いや、そんなことはないよ! ただ......まさか生徒会長だったなんて......」
 「......歓迎してくれるってことで、いいのかしら?」
 「それはもちろん! でも、俺と一緒に住むことになって、よかったの?」
 「それは......これからハウスルールを作る必要があるでしょうね......」
    それはそうだろうな。俺としても、ルールを設けておかないと生徒会長と一緒に生活する自信が.....。
    「.....そういえば.....生徒会長の名前ってなんでしたっけ?」
    「えっ.....私の名前、知らないの?」
    本当に今更ながら、生徒会長のことは生徒会長で覚えていた。
    いつも全校集会で名前を呼ばれていた気がするが.....いままでちゃんと聞いてなかった。
    「ごめんなさい.....」
    「.....私の名前は『かねにわもえ』よ」
    「お金の庭に、『萌えキャラ』の萌で合ってる?」
    「.....その確認の仕方は不満だけど.....間違ってないから否定できないわね」
    「ご、ごめん.....」
    「とにかく、私のことは生徒会長じゃなくて『萌』って呼んでよね」
    「えっ? 名前呼び?」
    「当たり前じゃない。家族なんだから」
    それはそうだが.....家族として会ったのは今日が初めてだ。そう簡単に親しく接する自信が無い.....。
    「わ、わかったよ.....萌」
    迷いながらも、さっそく名前で呼んだ。
 
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